【シングルよもやま話 31】 モテる男のゼイタクな悩み(?)を爽やかに綴った青春歌謡ポップス! | 歌謡曲(J-POP)のススメ

歌謡曲(J-POP)のススメ

音楽といっても数々あれど、歌謡曲ほど誰もが楽しめるジャンルは恐らく他にありません。このブログでは主に、歌謡曲最盛期と言われる70~80年代の作品紹介を通じて、その楽しさ・素晴らしさを少しでも伝えられればと思っています。リアルタイムで知らない若い世代の方もぜひ!

 「スター誕生」といえば、‘70年代初頭から’80年代初頭にかけて、アイドルから演歌まで幅広いジャンルで活躍する歌手を数多く芸能界に送り込んだ“お化け”オーディション番組として有名ですよね。番組の基本スタンスは、“男女を問わずスターを目指す若者のあと押しをする” ・・・だったと思うのですが、どういうわけかあの番組から誕生した“スター”はほとんどが女性ばかり。男のオーディション合格者でメジャーになったのは、新沼謙治城みちる渋谷哲平くらいしか思いつきませんからねぇ あ、あとはいいとも青年隊の久保田篤がいたか・・・(←完全にお約束のオチ)。

 今回ご紹介するのは、
スタ誕出身なのにイマイチ影の薄い男性陣の中から、このお方が歌ったとっても爽やかな青春歌謡ポップスをご紹介したいと思います。これで~す()。



「天使のいたずら」(渡辺秀吉)
作詞:阿久悠、作曲:森田公一、編曲:森田公一

[1975.4.?発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数-万枚]
[歌手メジャー度★; 作品メジャー度★; オススメ度★★★]


 その名も渡辺秀吉クン・・・ 情報不足のため本名なのか芸名なのか分からないのですが、タレントをやっていく上で名前のインパクトとしてはお釣りが来るほどでしょう 戦国武将”豊臣秀吉”のイメージもどちらかと言えば良い方なのではないかなぁ。 ああそれなのに、1、2曲目とややムード歌謡っぽいシングルが続いて、3曲目の「天使のいたずら」でやっと明るいアイドルポップスになったと思ったらこれがそのままラストシングルに。せっかくアイドル路線の作風が私好みの感じだったので、もう少し頑張って欲しかったなぁ・・・ってね


 彼をテレビで何度か見た印象は、このレコードジャケットからも伝わってくる通り、「優しそうなお兄ちゃんやな~でしたが、しぶとく芸能界で生き残るためには、やはり芸名以外のキャラクターの面で何か強烈な特徴が必要だったということでしょうか・・・。ルックスも歌声も甘くてなかなか良い素材だと思ったんですが


 ・・・さて、“死んだ子の歳を数える”のはこの辺でやめて(いや、秀吉クンはまだどこかで元気にやってると思いますよ)、歌の話に移りましょう。この曲は、何と言っても歌詞が面白いんですよね~。まず1番からご覧戴きましょうか


  ♪ 天使も時には 信じられないいたずらを
    似合わない僕たちを 恋人にしてしまう
    ふとしたはずみで なぜか口づけしたけれど
    気の強い彼女には もう疲れてしまう
    僕の好きな人は やせている女のコなのに
    今の彼女 グラマーなコ
    天使のいたずら 天使のいたずら ha… 憂鬱なのさ

 ‘70年代の職業作家の手による歌詞は、ちゃんとストーリー仕立てになってるのが楽しくてイイんですよね。・・・だけどさぁ秀吉クン、いくら今の彼女が自分の好みと違うタイプだからって「グラマーなコ、ha・・・憂鬱」って、ちょっと贅沢すぎるんでないかい・・・ それと、この歌詞みたいな羨ましい経験が一度もない私なんぞはつい、「口づけなんてふとしたはずみでしちゃうもんかねぇなんちゅう憎まれ口を叩きたくなったりして。いやもちろん、流行歌の歌詞なんてもんは、あまり現実的な内容ばかりじゃつまんなくって、聴き手に多少揺さぶりを掛けるのがテクニックなんだってのは重々承知してるつもりですケド・・・ぶつぶつ・・・(←要は昔からモテなかったってことらしい)。


 それじゃ、2番の歌詞いってみましょう。

  ♪ 逃げても逃げても とても逃げ切れないけれど
    運命に逆らって 彼女から逃げている
    それでもいつかは きっと負けそうな気がして
    目の前が暗くなる もう諦めなのさ
    僕の好きな人は しとやかな女のコ
    なのに今の彼女 大胆なコ
    天使のいたずら 天使のいたずら ha… 憂鬱なのさ

 秀吉クンってば、1番で憂鬱なフリして実はまんざらでもないのかと思ったら、2番じゃホントに苦しそう・・・。この勢いだと結婚に持ち込まれるのはモチロン、一生彼女のペースで生きてゆくことになりそうですな。ただ、よくよく歌詞を見てみると、♪ “運命に逆らって” 彼女から逃げている~ とあるんですよね。つまり秀吉クンは、このグラマーで大胆な彼女(←こう書いてみると改めて羨ましい彼女じゃないか・・・と一緒になることを「運命」だと思っているワケだ。なーんだ、同情しちゃって損したなぁ。それにしても、「大胆なコ」っていうフレーズを持ち出されると、こちらもどんな風に大胆なのかいろいろ想像してしまいますね~(ん私だけ)。さすが阿久悠センセこちらに気を持たせるような言葉の選び方が秀逸です


 次に曲の方ですが、こちらは森田公一センセの手によるもの。森田センセといえば、「あの鐘を鳴らすのはあなた」(和田アキ子)「時代おくれ」(河島英五)のように非アイドルに提供した大ヒット作がいくつもありますが、センセの十八番(おはこ)と言えばやはりアイドル向けの青春モノ
ですね「ひなげしの花」(アグネス・チャン)「好きよキャプテン」(ザ・リリーズ)「青春の坂道」(岡田奈々)「春 ラ!ラ!ラ!」(石野真子)・・・というように、クセのないナチュラルなコード進行とメロディラインを駆使して多種多様なパターンの名作を作ってしまうすごいセンセです。そしてこの「天使のいたずら」も、ちょうどそういったライン上にある、明るくて爽やかな“王道系”青春歌謡ポップスなんですよね


 ちなみにアレンジも森田センセですが、こちらはより凝った仕掛けでメロディを盛り上げてます。 ♪ 僕の好きな人は やせている女のコ~ あたりのアレンジはちょっと“ワザあり”で私の好きな箇所なので、もし良かったら意識して耳を傾けて戴ければと思いま~す




 それでは、今回はこの辺でおしまい
。またお逢いしましょう~