【シングルよもやま話 20】 肉食系姐さんによる“裏”リンダサウンドはどうよ・・・! | 歌謡曲(J-POP)のススメ

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音楽といっても数々あれど、歌謡曲ほど誰もが楽しめるジャンルは恐らく他にありません。このブログでは主に、歌謡曲最盛期と言われる70~80年代の作品紹介を通じて、その楽しさ・素晴らしさを少しでも伝えられればと思っています。リアルタイムで知らない若い世代の方もぜひ!

 んもぅ端っから絶対売れない感じの雰囲気をまとってるクセに、きちんと聴いてみたら「こりゃええわっ」と思わずニヤリとしてしまう歌謡曲というのがあるわけですよ

 今回ご紹介する作品はですねぇ、私にとっちゃそんな表現がピッタリの曲なんですけどねぇ・・・。ちょっと好き嫌いが別れてしまいそう・・・かな
。コレなんですが()。


「夜光虫」(宗田まこと)
作詞:山口洋子、作曲:都倉俊一、編曲:都倉俊一

[1976.7.5発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数-万枚]
[歌手メジャー度★; 作品メジャー度★; オススメ度★★★]




 ・・・ほら、曲のタイトルとジャケット写真でドンビキしてこのブログから去ろうとしてるアナタ、騙されたと思ってとにかくYouTubeを聴いて下さいねっ



 なぬぅ
やっぱ騙されたってぇ・・・そりゃコンセプトこそアレですけど外見に翻弄されて、この作品の本質的な良さが分からないようではアナタの耳もまだまだですなぁ・・・(ちょっと煽ってみた)。

 まず、最盛期を思わせる都倉俊一センセのスピード感抜群のメロディが最高
なのはお聴きになればすぐ分かりますよね。サビ(♪ 飛び込みたいの思い切り~)直前の盛り上げ役を務めるアレンジ部分なんか都倉節炸裂 もいいところで、思わずニヤリとされた方も多いはず。そしてこの素晴らしいメロディにトンデモなタイトルとディープな詞をつけた山口洋子センセがまた素敵 一体何を考えているのやら・・・(←ほめてます)。かくしてここに、裏“山本リンダ”とでも言うべき名作が誕生したわけです。そしてこの名作を、宗田まことがソウルフルでメリハリの利いたヴォーカルで歌ってくれちゃって・・・うるうる。今回のこの3人の組み合わせがスゲーのは、「このうち誰一人として替えがきかない」ってとこでしょうねぇ・・・(←誰にも賛同してもらえなくても、そういうことにしとく)。

  (ウ!ヒ!ハ!テ!ホホホホ ハハハハ)
♪ 殺されたのよあなたに 狙われたのね今夜は
  燃えるくちびるを (ハッハッハッハッハッハッハッ)
  なぜか弱いの 月夜にアチッアチッ アチッアチッアチッ
  無駄な抵抗やめたわ 眠らされたのズドンと
  胸をやられたの (ハッハッハッハッハッハッハッ)
  すぐに負けちゃう あなたにだけは
  他の女みたいに ぐずぐず言わないのよ (ウダダダウダダダウダウダウダダダ)
  パッと決めたらあとは 目を閉じるだけなのよ
  飛び込みたいの思い切り 溺れてみたい恋だから


 歌詞の最初の方ではいかにも“草食系”なフリをしている主人公の女性ですが、
曲のタイトルはよりによって「夜光虫」だし、人喰い人種の雄叫びを思わせる不穏な雰囲気から始まる型破りのイントロからして、そんなフツーの話で終わってしまうハズがないわけで・。で、やっぱり、歌詞の後半に入ると、実はオンナ側のペースで「コト」が進んでいたことが判明。曲のラスト直前では、宗田まこと本人による雄叫び ♪ウッウッ で「実は喰われちゃったのはオトコの方だった()」という、男としちゃなんだか嬉しくもオゾマしい顛末を暗示して、そのままさっと幕引き。・・・実に周到な仕掛けがスマートに施された名作だと思いませんか

 宗田まことはもともと宗田政美という芸名で、1973年頃に映画「御用牙かみそり半蔵地獄責め」、「女囚さそりけもの部屋」、「前科おんな殺し節」・・・なんかに出ていた女優さんです
。当時まだ小学校2年生だった私はリアルタイムで記憶にないのですが(←知ってたらちょっとマズイか)、映画のタイトルからして、「夜光虫」のイメージを裏切らないタイプの方だったことは間違いなさそうですネ

 彼女のデビューシングルは、安井かずみ都倉俊一コンビによる「幸せ振り」(1974年)で、2作目が橋本淳中村泰士コンビによる「都会」、3作目にしてラストシングルがこの「夜光虫」というわけで、とにかく作家陣に恵まれています
。その調子で、彼女にもっと名作を生み出して欲しかったと思っているのは、決して私一人ではないはず。ま、さすがに、「昨今の歌謡界にも、宗田まことのような個性のカタマリみたいな歌手が一人くらい居てもいいだろっってのは、単なるオヤジのタワゴトだという自覚はありますが・・・

 最後に、「夜光虫」のレコードジャケットがいくら何でもあんまりな感じ
なので、「幸せ振り」の方も載せておきましょうね。こちらは彼女の「イイ女」ぶりが伝わってくる仕上がりになっていて、少しホッとしますね・・・


 それでは、今回のところはこの辺で またお逢いしましょう~