ある作家が誰か他人のオリジナル作品から「(ノウハウやアイデアを)拝借しちゃう」のを、「パクリ」って言いますよね・・・ さて、それではここで問題です。作家の拝借するのが他人のオリジナル作品ではなく自分の作品である場合には、いったいどんな風に呼ぶでしょうか
・・・そうです。こういうのを俗に「使い回し」と呼びます。パクリ問題に関しては、すでに我が国でも裁判沙汰になったケースがありますし、いろいろ厄介な話を含んだ“難物”なわけですが(そんなこと言う割には、昨年末に持論を開陳してしまった私・・・)、片や「使い回し」に関しては、読者の皆さんも含めてほとんど誰も気にしちゃいないですよねぇ・・・
ちなみに私の言う「使い回し」は、コンポーザー独特の「メロディーのクセ」とは別物なので注意が必要ですよ。具体例としては、吉田拓郎とか桑田佳祐あたりのアレ(=特徴的なメロディライン)は、「使い回し」とは似て非なるものです。
歌謡界の有名コンポーザーの中にも、そんな「使い回し」がお得意なセンセが何人かおられます。佐藤隆センセや小森田実(コモリタミノル)センセあたりは、その最右翼と言えましょう(あ、言っちゃったよ・・・)。
・・・さてさて、やっとこさ本題です。今回は、「シングルよもやま話シリーズ」ってことで、そんな「使い回し」作品で遊び倒してみませんか・・・という趣旨なわけですよ。俎上に乗って戴く作品は、コレです()。
「ドミノ倒しの夏」(鳥越マリ)
作詞:秋元康、作曲:鈴木キサブロー、編曲:小林信吾
[1985.7.21発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数-万枚]
[歌手メジャー度★★; 作品メジャー度★; オススメ度★★]
おーっと、この歌謡曲ブログには一度も登場していない有名アーティストがまだ山ほどいるっていうのに、鳥越マリってば、シングルリリースたった3枚、しかも全く売れてないにも関わらず、なんと早くも2回目の登場となりました・・・(←「えっ、登場させたのはお前だろ・・・?」という鋭すぎるツッコミはナシでお願いしますよぉ、お客さん)。私は別に鳥越チャンのファンというわけじゃないので、偶然が重なったってことでどうかひとつm(u_u)m。
閑話休題。さて、この作品のどこがどう「使い回し」なんでしょーか・・・ 実は、戦犯は1人ではなく2人いるのです(←かなり大袈裟)。
まず1人目は、やはりと言うべきか、作詞家の秋元康大明神でした。秋元大明神は、「ドミノ倒しの夏」リリースから約2年後に、「おはスタ」に出演していた沢木知子のデビュー曲「ドミノ倒しの純情」(作曲&編曲:見岳章)の作詞を手掛けています。私に言わせりゃ、「“ドミノ倒し”っていうフレーズが、どんだけ気に入ってるんだよっ」てな感じですが・・・。まぁそれでも、こちらの方はオマケみたいなもんです。
今回のA級戦犯は、2人目の鈴木キサブローセンセなのです。キサブローセンセの方は、「ドミノ倒しの夏」リリースから舌の根も乾かぬ翌年、よりによって堀ちえみのヒット曲「夢千秒」(作詞:売野雅勇、編曲:後藤次利)で、見事な「使い回し」を披露してくれてます。もっとも、鈴木キサブローセンセと言えば、特に’80年代に、性別、ジャンル、メジャー度に全くこだわらず膨大な数の曲を作った御仁なので、一つや二つくらい似たような作品があったって別に不思議はないんですけどねぇ・・・。でも、さすがに今回のこの“似方”は、「いとこ」や「きょうだい」を通り越して、まんま「双子」だとしか言いようがないわけで・・・
それでは、さっそく皆さんにも聞き比べて戴きましょか。参考のために、メロディの「使い回し」に該当する部分の歌詞を下に並べておきますね。なんと、どちらもサビ部分だったりします・・・
「ドミノ倒しの夏」(鳥越マリ)
♪ あせるあせるあせる 愛を届けさせて
波が寄せるように ドミノ倒しの夏
「夢千秒」(堀ちえみ)
♪ 私の素肌は 綺麗でしょうかあなた
雪割草より綺麗でしょうか ああ
「ドミノ倒しの夏」(鳥越マリ)【1985.7.21発売】
「夢千秒」(堀ちえみ)【1986.1.21発売】
いかがでしたか 私もこれまで膨大な量の歌謡曲を聴いてきましたが、このケースはメロディがほぼ一緒(譜割りがちょっとだけ違うんですね)、コード進行に至ってはまったく同一(にも関わらず、カバーではなく異なるシングル作品としてリリースされていて、しかもリリース間隔がたった半年)という、かなり珍しいパターンなのではないかと思います。まぁ、私の知る限りでは、この手の“シングルの双子ちゃん”(←何たる言葉の矛盾でしょうか・・・)がもう何例か実在するのですが、そのネタは、また別の機会にでも・・・。
要するにこの「ドミノ倒しの夏」という作品は、「使い回し」の末に生まれた代物ではなく、だーれも知らんことをイイことに「使い回されまくった」可哀想な作品ってことなんですね。そんな訳で、鳥越チャンは思いっきり被害者なのでした。濡れ衣着せちゃってゴメンネ。
それでは、今回はこの辺でお開きってことで。またお逢いしましょう~