ボランティアが終わって、祐介と小夜子が二人きりでいつも行くカフェに加奈とボランティアの常連の男の二人を加えて軽くご飯を食べながら話が始まっていた。
「祐介君も今日は辛かったよね。さよと引きはがされただけでなく、変な中年のおじさんに引きはがされて、しかも毎回のように声をかけてくるあの男の子の自慢話聞かされて。わたしなんかあの男の子に突き飛ばされたんだよー。」
「そういえばわたし、あの男の子にえらく睨まれていたんだよね。祐介と話すたびにすっごい不満そうな顔してた。」
「その時、俺、何度も何度も祐介君に近寄ろうとしてただけでなく人と話してるのに早く情報をくれってすっごいねだってたから、俺何度も止めに入ったな。そのたびにまた邪魔されたとかいうし、今日なんか俺が言っただけで泣きわめきそうな感じだったし。」
ここから、祐介の、就職支援センターの関連の人たちについての長い話が始まる。
「そうでしょうね。だってあの人たちは、就職支援センターを介して自分が知り合った人たちってほぼ大半が問題を抱えてる人達なんやけんね。」
「祐介、その問題っていったいなんなの??」
「ちょっと話せば長くなるな。加奈ちゃんたちも大丈夫??」
「うん。というよりわたしもその話聞きたい!!」
「俺にも聞かせてくれ。」
「うん。分かった。」
三人は衝撃の事実を祐介の口から知った。
「まず、就職支援センターっていうのは、その、俺がそうなんやけど一度社会を経験したりなどで再起不能に近いダメージを受けたり、問題を抱えていわばひきこもりやニート、その予備軍になっている人たちにいろいろな機会を与えて、勉強をさせながら、最終的に就職できる力、就職まで結び付けれる力をつけてあげようといった狙いがあるところなんだ。最終的には自分で履歴書を出して、自分で就職面接を受けられるような精神状態にもっていくための支援でもある。中には、就職体験っていって、お金は入らないけど働くことがどういうことなのかというのを実際職場に行って経験したりするものや、実際就活とかでやったことあるかもしれんけどいくつかのグループに分かれて、討論するグループでの討論会、すなわちグループディスカッションが行われてたりするんだ。」
「へー、そういったとこだったんだ。」
「俺は、そこでそのグループディスカッションを通して結構いろんな子たちと知り合って話したんやけど、やっぱりどこか問題ある感じがするんよね。見た目は普通の人間と変わらないでしょ??俺、心療内科にもたまに通院してるんだけど、その心療内科に来てる患者もそうで、見た目はすごく普通の人。でも心にすごい闇を持ってしまっているといった事実がある。それと同じなんだよ。彼らも。問題とは何なのかは詳しくは知らないけど、大方、家族に問題があったり、過去に俺のように理不尽な迫害にあってしまったりとか。その結果、人間社会に絶望を感じてしまって心を閉ざしてしまったり、闇を抱えてしまったり。でもそのままじゃ、いけないわけであって何らかの形で、社会でもふらつかずに歩けるように頑張りたい気持ちがある。そんな人たちが集まっているのがその就職支援センターなんだ。」
「そんな人たちが、そんな辛いものを持っている人たちが集まっていたのか。でも、あいつのやっていたことはそういう事情があるとしてもなぁ。」
「うん、それはそうでしょうけど、話はまだ続きがあって、今日のあいつ見てて余計話そうと思ったんやけど、まず俺が今やってるボランティアを知るきっかけになったのはその就職支援センターなんだ。就職支援センターは、ちょっとでもそういった人たちに人間社会を経験させたいという願いがあって、今やってるボランティアを強く推奨してたんだ。その結果、その就職支援センターで知り合った人たちも多数来てるんだけど、見ていて感じるものもあると思う。あいつ見ててそうだと思ったのが、純粋な子供の心を持ったまま大人になってしまった奴もいるというとこだな。」
珍しく祐介が長く話ているだけで一時間が過ぎていたのだった。
(後編)に続く。