黒真珠もまだまだ 美 サイレントです
さて 百合シリーズのトップを切って開花
・・・・・だが 私は ほんとうに心あたたまるようなできごとを ほかにもまだ
たくさん知っている たとえばこんなことだ 私が外出から帰ってくると
ハイイロガンたちがヴェランダの前にある石段に立っており 首をのばして
私に あいさつにくる ガンのこの首を伸ばすしぐさは イヌが尾を振るのと
同じ意味をもっているのである
私はいつまでもたたずんで 水の上を低く飛んでゆくガンたちが河の曲がり角で
見えなくなるのを目で追っていた
そのとき にわかに私は ある感動にとらえられた
それはまさに 親しき者に哲学の端緒を見出したあの感動であった
私は驚きを禁じえなかった 一羽の野生の鳥とこんなにも信じあうことができるとは
・・・・・私はこの事実をなにか妙なる祝福のように感じている エデンの園から追われた人間の悲しみがこれでいくぶんでもやわらげられたようにさえ思うのだ
今 ワタリガラスたちは姿を消してしまった むかし私が大学で講義していたことのあるケーニヒスベルクからつれてきたハイイロガンたちも 今はどこかへいってしまった 私の放し飼いの鳥たちのうち 今残っているのはコクマルガラスたちだけである
これは私がアルテンベルクで飼った最初の鳥たちであった この永遠に変わらぬ友だちは 今でも切妻屋根のまわりを飛びまわっている そして 私には もうそのささいなことばのはしばしまでも理解できる甲高い叫び声が セントラルヒーティングの煙突から 私の書斎の中にこだましてくる そして 毎年毎年 彼らは煙突に巣をかけては煙突を使えなくし サクランボをついばんでは近所の人々の怒りをかうのである
もうわかってもらえただろうか こんな憤懣や損害の代償は けっしてただ科学的な成果ばかりなのではなく はるかにそれ以上のものであるということを
生後 まもないハイイロガンの雌のヒナは こちらをジッと見つめていた
私のふと漏らした言葉に挨拶のひと鳴きを返した瞬間から 彼女は人間の私を母親と認め よちよち歩きでどこへでもついてくるようになった・・・・・・「刷り込み」などの理論で著名なノーベル賞受賞の動物行動学者ローレンツが けものや鳥 魚たちの生態をユーモアとシンバシーあふれる筆致で描いた 永遠の名作
「ソロモンの指輪」コンラート・ローレンツ著
「もし愛がなかったら 人間と動物の行動になにか共通なものがあると感じるだけにとどまり それを明確につかみとることはできないのだ」・・・というローレンツを読みながら やっぱり for ever love
こそが人間と動物のコミュニケーション手段であり
ともに暮らす目的なのだという確信にいたったのでした![]()