勝沼醸造は1937 年創業、勝沼で取れるブドウに思い入れの強いワイナリーです。特に「甲州」ワインが8 割を占めるほど、「甲州」に特化したワイン造りをしています。
「美味しいワインは美味しいブドウから生まれる」という信念のもと、ブドウ栽培にチカラを入れています。それを体現した「アルガブランカ イセハラ」が放つ「ブドウのチカラ」が世界に注目されたことは、甲州の歴史が新たなステージに入ったことを告げる重要な出来事でした。
地域の個性を引き出すために、シュール・リー製法を主体に仕込むのは現在8 地区、収穫期をずらしているため合計13区画に分けて仕込んでいます。今年初めて「穂坂」という地区のブドウを仕込んだそうですがとても出来がよく、日照状況が豊かで日本一雨が少ない明野村(あけのむら)の近く、非常に安定したいい土壌なんだそうです。
第2回放送でご紹介した勝沼醸造の白ワイン「勝沼甲州シュール・リー2012」も勝沼の「藤井」「等々力」の2地区のブドウからつくられており、「産地を味わう」という醍醐味が味わえるワインとなっています。
どのような経緯でその味わいに至ったのか。詳しくは番組オンエアーダイジェストをお聞きください。
番組オンエアーダイジェスト「第2回放送」
同じシュールリー製法で作られたファーストブランドとして「アルガブランカ・クラレーザ シュールリー」というワインがありますが、こちらは「勝沼」「穂坂」「等々力」「甲府」「藤井」「金山」の6 地区のブドウから作られており、「勝沼甲州シュールリー」よりもふくよかで拡がりのある味わいになっています。
「アルガブランカ・クラレーザ シュールリー」は一番右のワイン。「勝沼甲州シュールリー」と飲み比べてみても面白そうですね。
勝沼醸造のブランド名「アデガ・ビニコラ・アルガ(有賀のワイン蔵の意)」は神戸のデザイナー綿貫宏介氏が考案。「アデガ」がポルトガル語でワイナリー。
「アデガ・ビニコラ・アルガ」は3つの商品ブランドで構成されています。
主に問屋などに卸す「勝沼醸造ブランド」。これに「勝沼甲州シュールリー」も含まれます。
また酒販やレストランに卸す「アルガブランカ」「アルガーノ」の2ブランドを展開。ワイン造りの思いまでちゃんと伝えてくれるような信頼できる酒販やレストランに卸しているそうです。エチケットのデザインもオシャレです。
「アルガブランカ(アルガの白の意)」は、甲州を使ったワインのみで構成されています。甘口から辛口まで味の表情に幅があり、食前からデザートまでサポートしています。
「アルガ―ノ」にはマスカットベーリーA など甲州以外のブドウを使ったワインも含まれており、中でもポルトガル語で「風林火山」を意味する4 種のワインがオススメだそうです。
国際ワインコンテスト「ヴィナリーインターナショナル2003」で勝沼醸造ブランドの「勝沼甲州樽発酵」が受賞したころから辛口の甲州の評価が上がったと思うとおっしゃっていました。食べるためのぶどうは繊細だから樽負けしてしまう(樽の個性に包まれてしまう)から、樽は使わない方がいいというのが定説だったが、それを覆して熟成タイプの甲州ワインを提案したのが「勝沼甲州樽発酵」。7 年間のエイジングが可能だろうと。和牛のローストビーフといった肉料理にも合うしっかりとした味わいになっています。
勝沼醸造では勝沼で「風」という名前のレストランも経営しています。20 年ほど前から始めたそうで、当時は洋食(フレンチ)にワインを合わせるというコンセプトで展開していたそうですが、現在は和風フレンチということで和をテーマに甲州ワインなどに合う料理を提供しています。看板メニューは赤身の和牛ローストビーフ、甲州ワインとともに味わってみたいですね。
有賀さんの目は世界を見据えています。「甲州」を後世に伝えていくために、食用ではなくワインを作るための甲州ブドウを作って世界に打って出ることでチャンスは更に広がる!我々の世代でピリオドを打ちたくはない。
ただ世界に驚きと感動を与えるためには、ワイン単品としてのパワーがまだまだ足りないと思っているそうです。ワインだけで飲んだときにどれだけ驚きや感動を与えられるかが勝負!「アルガブランカ イセハラ」は日本を代表するワインだと自負しており、日本政府の「おもてなし事業」でも「アルガブランカ イセハラ」が選ばれています。日本を代表する甲州ワインにならないといけないと決意を語ってくれました。ヴィナリーインターナショナルでステンレスを使った熟成タイプとして認められた、つまり世界が認めたのは「ぶどうのチカラ」。ただ世界に「甲州」を持っていくのは時期尚早。まだ「ぶどうのチカラ」が備わっていない。だったら農家さんと一緒にもう少し美味しいワインをつくるための工夫をしていけば、世界に通じるワインが作れるかもしれない。「俺のブドウで作ったワイン」と胸張って言える農家さんが出てくると面白くなる、と期待を膨らませていました。
勝沼醸造で大事にしているのは「農家交流」。農家とのコミュニケーションが図れるのが財産。だとおっしゃっていました。美味しいワインを作るためのブドウづくりには農家さんの理解が不可欠です。
線が引かれているのは、最近耕作をあきらめた農家さんだそうです。勝沼醸造がある農家さんが止めるのを阻止するのがワイナリーの使命だと考えていらっしゃいます。勝沼醸造は旧来甲州ブドウを最も多く産出した「祝村」に位置しています。だからこそ「甲州」にこだわりたいとおっしゃっていました。
レストランでワインを頼むときは「赤ワイン」「白ワイン」ではなく「ブドウ」で選んで欲しい、ぜひ「甲州ください!」って言ってみてください。とおっしゃっていました。
畑を見せていただきました。
こちらの20アールの畑には、茎が太いのもあれば細いのもある。太いのは水太り、甘やかされている証拠。100 年の古木がいいというよりは大地の栄養をいかに吸い取れるブドウを育てるかが大事。だからよりいいブドウの木を育てるために植え替えが主流になっているそうです。20 本のブドウの木で5 トンのブドウが取れるそうですよ。
こちらは農家さんに譲ってもらった畑。当時の糖度は16度。糖度を上げなければいけないため収量を調整したところ、糖度が19度になった。もっと収量を調整すれば20度になるのではと調整したところ、実をつけなくなったそうです。ブドウ栽培は難しいですね。それで植え替えて、伝統的な棚栽培に加えて根をいじめる草生栽培にしたところ糖度22 度を実現しました。まだこのやり方が正解かどうかは分かりませんが、この畑からは世界のルールに則った高品質なワインが出来るそうです。
日本は補糖してワインを作るのが一般的、オーストラリアでは補酸が当たり前、だから世界から軽視されがち。やはり世界のルールに則ったワインづくりが大事だとおっしゃっていました。
こちらは実験畑。最初は垣根栽培で先ほどの20アールの畑と同じ広さにシャルドネ300 本、カベルネソーヴィニヨン300 本植えて、600 本の木から収量は2.4 トン。先ほどの20 本5 トンと比べてかなり収量は少ないですね。これが食用とぶどう用の違いなんです。ただ糖度に問題があったそうです。それで棚栽培で甲州を植え替えた。アーチ状の金網は雨よけ、棚栽培で雨よけ(スマート方式)は新しい試みなので期待しているそうです。
こういった経緯を説明するために、垣根栽培の畑も残しています。
過去にはフレンチオーク樽で3 樽ずつ、900 本ワインが出来た。ただ日当たりによって出来るブドウの糖度がまばら。そこで優秀な栽培スタッフの試みによって3 樽ずつだった収量が半分になったものの、糖度が21.5 度均等になった。20 度を超えたのは初めてだったそうです。しかしそのスタッフは22 度を目論んでいたため、がっかり。そこで新たな試みをして22 度を達成!しかし収量が足りず1 樽に満たないため、ワインが仕込めなくなったそうです。笑 そこでわざわざフランスから小樽を仕入れて仕込んだのが2001 年。世界一高い農業コストの日本で垣根栽培を自社栽培でやるのはホントに大変です。
このように色々試行錯誤していますが、問題は尽きないそうです。そしてまた色々試してみる、高みを目指すための飽くなき探求。車でいうところのF1 開発のようなものです。
農家さんとの交流を大事にして農家さんの個性を引き出す。そして農家さんとのコミュニケーションを密にしていく。地域で歴史を刻んだ農家さんの思いとタッグを組んで、ホントにワインに向くブドウを作って農家さんが「俺の畑のブドウで作ったワインだぞ」と胸を張って言えるようになって欲しいですよね!と展望を語ってくれました。
これからも勝沼に根付いた文化として、勝沼で取れたブドウにこだわっていく!と力強く宣言してくれました!そして真に価値のある1 万円のワインを作りたい!と語る有賀さんの言葉が印象的でした。そんなワインの登場に期待しながら、勝沼醸造のワインを味わってみていかがでしょうか。
勝沼醸造では気軽に試飲をすることも出来ます。
事前申し込みが必要ですが、ワイナリー見学も可能です。
趣のあるワイナリーの中は居心地も良く、テラスもあってワインを飲むのが楽しくなる、そんな場所です。
ぜひ一度ワイナリーに足を運んでみてはいかがでしょうか。
【ワイナリー情報】
勝沼醸造株式会社
〒409-1313 山梨県 甲州市 勝沼町下岩崎 371
TEL/0553-44-0069 FAX/0553-44-0172文:tack