2017年02月12日

もう十何年も前になります。公演で秋田に行った時、石川さゆりさんに、きりたんぽ鍋に連れて行っていただいたんです。それがもう、本当においしくて。それからは秋田に行きましたら、必ずそのお店に伺うようにしているんです。

とはいいましても秋田に行く機会はなかなか多くはありませんから、お店の方からお知らせを頂くんです。「セリがおいしくなりましたよ」と。それを合図に、きりたんぽ鍋を取り寄せます。

きりたんぽそのものがおいしいのは、やっぱり新米の時期です。本当においしいんですよ、作りたては。

お鍋にしたときのもう一つの決め手は、セリ。特に、旬の時期は味が違っておいしいんです。私は熊本の出身ですけど、小さい頃にセリを食べることはあんまりなかったような気がします。お正月のお雑煮に入っていたくらいです。

それなのに、今ではセリが好きになりました。最近、他にもちょっと癖のある野菜をおいしいと思うようになったんですね。ピーマン、ニンジン、セロリなどは、小さい時はあんまり食べたくなかったんです。でも今は、すごくおいしいと感じるようになりました。

もちろん健康のことを考えているからですけど、それを意識していなくても、自然に身体が欲しがっているというのでしょうか。ここ数年で、そのように強く感じるようになりました。

食べ物というのは、歌と一緒なんでしょうね。若い頃はガチャガチャとした音楽が好きでも、年を重ねてくると不思議なもので心に沁(し)みる歌が聞きたくなります。それと同じで、身体に沁みる栄養が欲しくなるんだと思います。昔は3食カップラーメンを食べたこともありましたけど、今はそんなことはありません。身体が欲しがるものが変わってきたのでしょう。

そういえば昔は風邪をひくことがありましたが、今はあんまりひきません。食べ物のおかげじゃないかと思うんです。

私たちにとりまして、身体、特に喉は大事です。喉の調子が悪くてステージに立っている時が、一番ストレスを感じるんです。「こんな声で申し訳ない」と思いながら歌うのが。そこでよく、カボスを搾って蜂蜜と一緒にお湯で溶いて飲んだり、ショウガをすって蜂蜜と一緒に飲んだりしています。

去年は、大阪と東京の劇場でそれぞれ1カ月間、合わせて2カ月間続けてお芝居をやらせていただきました。

大阪では、ウイークリーマンションを借りて住んでいました。若い役者の女の子が手伝いに来てくれまして、お弁当を作って持たせてくれたり、ご飯を作ってくれたりしたんです。舞台が終わると、劇場からそのまま部屋に帰って食べました。今日は特におかずはいらないという時は、温かいご飯と明太子(めんたいこ)だけとか(笑)。

私は、ご飯が大好きなんですよ。ですから家でお休みの時には、たくさん炊いて、冷凍しておくんです。常に、どんなに忙しい時でも、ご飯は食べられるようにしています。ご飯と野菜は、なくてはならないものだと感じています。

今日もこの後でステージがありますけど、スタッフの方にお願いしまして、築地のおにぎり屋さんからおにぎりを買ってきてもらいました。そこのおにぎりは、とても大きい上、具の種類が豊富でユニークなんです。焼きチーズ、豚みそ、たぬき(天かす)、煮玉子などもあるんですよ。それを2個食べて、おみそ汁を飲んで、ステージに向かいます。(聞き手・菊地武顕)