○月○日
今日はランチの予約が二組入っている。
最近は、リピーター予約も徐々に増えつつある。
食事だけじゃない"空間"の意味を再確認させられる。
食事が美味しい店は他にもたくさんあるというのに、此処を訪れてくださる事に感謝。
季節感も少し入れつつ、食べる側の負担の少ない食事。
季節の変わり目に入ると、新しいメニュー構成を考える。
この作業は、楽しさと緊張が交差する。
家庭でも、手軽に真似してもらえる様な、それでいてやはり此処の特徴が出る様にと考える。
毎日食べても飽きない食事。家庭料理に近く、肩に力の入らない食事。高級食材はいらない。
最近始めたカフェタイムも、中々好評だ。
始めた頃に思い描いていた客層ばかりでは無く、色んな方が自由にこの空間を使ってくださっている。一人中庭でのんびりお茶を飲みに来られる方。子供連れで、和室でのんびりされるグループ。毎週必ず一度の遅めのランチに来られる方。
この一年を少しづつ振り返ってみていた。
そんな時、入口に人の気配を感じて
「はぁーい」
声を出しながら入口へと向かうと、そこに背の高い男性が立っていた。
背に低い私は少しその男性を見上げる格好になる。
「やはりハルさんでしたか」
「えっ!ケンちゃん?」
「はい。ご無沙汰してしまいました。先月こちらに戻って来たんです。近くにいい店が出来たんだと、友達に聞いていたんですが、雑務に追われて、今日になってしまいました。友人の話を聞けば聞くほど、ハルさんが話してくれていたのとイメージがぴったりで、もうほんと毎日気になって仕方無かったです。まだ片付かないんですが、もう我慢できずに来てしまいました。やはりハルさんのお店だったんですね。よかったです。でも、すいません。すぐに来るべきでした。」
「おかえりなさい。健ちゃん。」
「ただいま。ハルさん」
そう言って、ケンちゃんはそっと私を抱き寄せて、優しく抱きしめてくれた。
私は緊張して、身を固くした。
「変わらないですね。」
「待たせてしまったんでしょうか」
「ううん、待てなかった。」
私の名前は、「はるか」
みんなから「ハルさん」と呼ばれている。