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no man is an island


司馬遼太郎氏は、名著「竜馬がゆく」の中で、「歴史は人間の知恵と無智の集積であり、それを煮つめて醗酵させれば、すばらしい美酒が得られる」と述べています。

私は、「竜馬がゆく」、「坂の上の雲」、「世に棲む日日」など、司馬氏の歴史小説が好きですが、城山三郎氏の「男子の本懐」も、政治家(リーダー)としての「覚悟」を奮い立たせる絶好の書であり、これまで何度も読み返してきました。

「すでに決死だから、途中、何事が起こって中道で斃れるようなことがあっても、もとより男子の本懐である」
「明日伸びんがために、今日は縮む」

これは浜口雄幸首相の言葉ですが、「男子の本懐」は、昭和不況のさなか、金解禁の断行(金本位制への復帰)に、浜口首相とともに命をかけた井上準之助蔵相の生きざまを描いた小説です。

当時、金解禁の断行は、徹底した緊縮政策であり、国民の反発を買う、軍部の不満が募る、まさに命がけでなければできない政策でした。

城山氏は、そのことを次のように述べています。
「政治家の売り物となるのは、常に好景気である。あと先を考えず、景気だけをばらまくのがいい。民衆の多くは、国を憂えるよりも、目先の不景気をもたらしたひとを憎む。古来、『デフレ政策を行って、命を全うした政治家は居ない』といわれるほどである。容易ならぬ覚悟が必要であった。」

井上準之助が、金解禁に始まる経済の立て直しという「遠図」(遠大な意図、百年の大計)に向け、「鉄心肝」(心も肝も鉄の如く)立ち向かった姿は、今でも極めて新鮮であり、浜口首相とともに、21世紀の政治家の生き方について大きな教訓を与えてくれます。