続・粉飾決算
こないだからのクライアントなんですが、もう大変なことになっております。
見る科目見る科目、なんらかの会計操作をしています。
はっきり言って、監査が終わりません。
時間も人手も足りません。
前回までの時点で純資産の13%にあたる金額の修正仕訳をいれてもらったのですが、さらに今日までの時点で新たに純資産の30%にあたる金額の会計操作が発覚しています。
「これって監査報告書だせるのか?十分な心証が得られないとして意見差し控えなんじゃないか?」などと、複雑な思いで日々の監査を行っております。(まあ、見つけた会計操作を全て修正してくれれば監査報告書は出せるんですけど)
今回の一連の会計操作は、経営者によるものです。
現場での日常業務とはまったくかけ離れたところで、それこそ経営陣の一声と会計伝票1枚の世界で行われているものです。
となると、私が以前につらつらと述べた日常業務に対する内部統制では、まったく効果が無い類の不正です。
これは会社の内部統制というものに対して、現場よりむしろ経営者の戦略・思惑、会社の外部環境といったものに重点を置いて考えないといけないことを示唆しているのでしょうか。
考え出すとキリが無いですね。
ほんと、さっさとこの仕事終わらせたいです。
(重ねて言いますが、このクライアントは非公開会社なので、株価にはなんら影響ございません。さらに、今まで見つけた会計操作は全て修正させてますので、結果としては粉飾決算にはなりません。)
粉飾決算
今、私が担当しているクライアントで粉飾仕訳が発見されて大騒ぎです。
(発見したのは私ですが)
当然、そんなもの許すはずも無く、修正をめぐって会社の方と日々激戦です。
今週はずっとこの仕事にかかりきりです。
この点については後日、内部統制と絡めて詳しく解説いたす予定です。
しばしお待ちを。
(ちなみにこのクライアントは非上場企業ですので、株価に影響があるとかそういうことは一切ございません。というか、そもそも決算確定までには絶対修正させますので、結果としては粉飾決算にはなりません。ご安心下さい。)
最新の監査手法…?
(というか、今までの監査が甘かったのでそのツケを払わされている、という感じでしょうか。)
で、うちの監査法人ではこの厳しい環境に対応し、会計士監査に対する社会の期待に応えるべく、監査手法を根本から変えようという流れになっております。
先日、早速その新しい監査手法の研修を受けたわけですが、なんと言いますか、「いや、それは無理っこ…」という感じでした。
従来の監査手法は主にボトムアップ方式で、恐らく一般の方々が想像されるような、帳簿や証憑、伝票とにらめっこ状態の手続きがメインでした。
一応、ここ数年はリスクアプローチに基づいて、各業務フローの内部統制を評価し、内部統制に穴がある点を重点的に調査するという感じで、帳簿・証憑との仲良し具合は若干低下したものの、それでも、内部統制の評価は各担当者レベルの日常業務に対する内部統制の評価であって、会社の末端部分を重点的に監査するというスタイルには変わりありませんでした。
しかし、最新の監査手法ではスタイルを180度変更し、完全なトップダウン方式で行おうというのです。
つまり、経営陣が会社を取り巻く環境をどのようにとらえ、その中でどのような経営戦略をとり、またそれをどのようにモニターしているのかを把握した上で、その中に潜む不正の芽を探して摘み取る… 大雑把に言えばこんな感じで監査を行おうというものです。
ハッキリ言って、相当難しいでしょうね。
だって我々会計士はあくまでも企業会計の専門家なのであって、企業経営の専門家ではありません。
会社の経営陣と、会社の経営について対等なレベルで話ができなければ、その中に潜む不正の芽なんて当然発見できないわけで、これをやるには経済や各業界、経営戦略についての相当な知識・経験が要求されることになるでしょう。
果たして、このような監査手法を全面的に導入して、社会の評価に耐えうるレベルの監査を実施することができるのでしょうか?
非常に不安です。
(ただ、うまくできれば事業分析についての相当なノウハウが蓄積されるでしょうから、その点は期待しています。)
企業価値の算定
これから決算監査に突入するので、恐らく更新が滞りがちになると思いますが、その辺は暖かく見守ってください。
さて本題ですが、本日、「MBA バリュエーション」という本を読みました。
なぜこの本を読んだかと言うと、最近の流行に乗って、M&Aのことを会計的視点ではなく戦略的視点から勉強したいなと思いまして、本屋で物色したところこの本に巡り会った次第です。(なぜか思った以上に戦略的視点からM&Aを書いた本が少なくて驚きました。)
この本を読んで「おっ」と思ったのが、「企業価値というのは突き詰めれば、企業価値=CF/(期待収益率-企業成長率)で表せる。」という点です。
この式のそれぞれの項目の意味は、
CF:現在の収益力
企業成長力:その企業の将来の収益力
期待収益率:その会社が将来的にどの程度安定して収益をあげられるか
ということで結局は、現在の力、将来の力、その力の安定性の3点で企業の価値が決まる、ということらしいです。
言われてみれば、「なるほどね」という感じです。
確かに今があって将来があって、で、それがどのくらいの確かさをもっているかがわかれば、企業の価値が計れることになるでしょうね。
さらに「おっ」と思ったのが、株式投資の重要な指標となるPER(株価収益率)ですが、これをPER=株価(つまり1株当たり企業価値)/1株当たり利益として、ここに上の企業価値の算定式の両辺を発行済株式数で割って1株当たりに置き直したものを代入すれば、PER=1株当たりCF/(期待収益率-企業成長率)/1株当たり利益となります。
さらに利益=CFとすればPER=1/(期待収益率-企業成長率)となります。
つまり、M&Aにおける企業価値算定も、株式市場における企業価値算定も、結局は同じ指標で表せるのだということらしいです。
今までの私の認識ではM&Aにおける企業価値算定法のディスカウントキャッシュフロー法と、株式市場における企業価値算定法のPER等の各種倍率比較法はまったくの別物だと思っていました。
でも実は根っこの部分は共通していて、結局はその企業への投資からどれだけの収益が期待できるかと、その企業がどれだけ成長するかによって決まっているということで、かなり納得したというか、やっぱり一見複雑に見えるものも、本質の部分は意外にシンプルなんだな~、と感心した次第であります。
在庫の棚卸
後輩の会計士補と二人で手分けして倉庫の立会をしたときのことです。
まずは後輩への指示。
「最初に倉庫全体を見て歩いて、”棚卸済”の札が漏れなく貼られていることを確認して。それから、在庫表に書いてある棚数と実際の棚数が一致しているか確認して、最後に3件ほどテストカウントやってね。」
んで、自分の担当区分の立会を実施、あっさり終了。
その後、後輩の担当区分へ様子見に行ったところ、後輩の方もほとんど終わっている様子。
でも、横にちらりと目をやると、明らかに埃まみれの在庫が…
会社の人に聞くと、「いや~、この倉庫はあんまり掃除しないから埃が溜まり易いんですよね~… ゴニョゴニョ…」
…調べてみると2年前に製造された在庫でした。
当然、価値が無いものとして強制評価減です。
その他にもちらっと見ただけで明らかに古いものが点々と…
このクライアント、ある時期在庫が異常に増加しまして、そのためにわざわざ新しい倉庫を確保して在庫を積み上げているのです。
でも、実態は価値の無いゴミを溜め込んでいるようなもの。
そんなもののためにお金をかけ、管理の手間をかけしているわけで、非生産的なことこの上ありません。
現場の方からすれば、「ちょっと売れないからって捨てるなんて、もったいない」ということになるんでしょうが、実はその売れない在庫を抱え込むためにお金や手間を捨てているということをご認識いただきたい今日この頃です。
帰り際、後輩には「立会のときには、ただ棚卸のカウントが間違っていないかだけじゃなくて、明らかに資産価値が無いものが存在していないかも気を付けて見てね。」と言っておきました。(最初に言うのを忘れてました。申し訳ない。)
原価計算システム
で、本をつらつらと読んでいるわけです。
原価計算って経営管理に役立てるために、色々な手法がありますよね。
伝統的な標準原価計算だったりABCだったり…
いかにして自社にとって有用な情報を得るかというのがポイントです。
ただ、今日読んだ本にはこう書いてありました。
「あくまで現場作業員がどのレベルの情報までなら把握できるのかによって原価情報のレベルは決まります。」
(例えば機械を使って延々と同じ作業を繰り返す場合に、今やっている作業をオーダー別に紐付けて把握できるのか、それともオーダー関係無しに1日この作業を何時間やったというレベルでしか把握できないのかによって、原価情報の細かさが決まります。)
納得というか、「あ~、そりゃそうだよね。」という感じですね。
いや、別にこの本を読む前からわかってはいましたけど、改めて読んで、再確認です。
ということは結局、現場にいって作業を見て、どの程度のレベルの原価情報を収集できそうかを把握しないことには原価計算システムの話は進みませんね。
本を読むだけでは机上の空論で終わりそうです。
やっぱ現場が大事ということですね。
SO404延期
アメリカさんの法律SO404条の適用が1年間延期されました。
新しい適用時期は2006年7月からだそうです。
いや~、危ないところでした。
今年から本気で適用されたら、以前お話した私が担当しているクライアントはほぼ対応不可能というところでした。
1年間余裕ができれば、その間になんとか対策がたてられるでしょう。
しかしまあ、延期されるくらいだから、よっぽど多くの会社で「無理っす…」と言われたんでしょうね。
そりゃあ、内部統制の文書化やら評価やら、会社の人がほとんどやったことないものを1から作り上げていかなきゃいけないわけだから、まあ、無理でしょうね。SECに直接登録している大企業そのものは大丈夫でも、その子会社が対応できないでしょう。
でもこれからの1年、勝負の年になりそうです。
フジとライブドア
実際、私はM&A関係を専門にしているわけではないので、話を振られてもテレビや新聞、ネットで仕入れた情報をもとに「こんな感じじゃないですかね~。でも、よくわかんないんですけどね。」という感じでお茶を濁しています。
今日も、監査会場にいきなり社長が現われて、「あの闘いはどうなっているんですか?」と聞かれました。
「あ~、またか~。」と思っていたら、今日は違いました。
「なんでフジテレビがニッポン放送の株式を買っていいんですか?商法二百十一条の2に子会社は親会社の株式買っちゃだめって書いてるじゃないですか。」
「お~、そういうネタできますか。」と思っていると、
「こんなに堂々とやっていいなら、うちも親会社の株をガンガン買ってやるのにな~。」
…社長。それはちょっとまずいんじゃないんですかね?
っていうか、商法上は議決権の50%超を確保しないと子会社じゃないから、フジテレビはニッポン放送の子会社じゃないっすよ。
いや、っていうか、そもそもフジテレビはニッポン放送の関連会社ですよ。財規上も子会社じゃないっすよ。
なんか、一瞬焦りました。
大先輩
この大先輩というのが、この人こそまさに士(サムライ)業だというお方で、その主張は
「俺たちはプロなんだから、結果を出してナンボ」
「仕事はしっかりやる。報酬もしっかり貰う。報酬を出さない客には、それだけの仕事しかしない。」
「ダラダラ残業するな。17時(もしくは決められた時間)までにさっさと終わらせて帰れ。特に、上の人間がダラダラやるな。」
「組織のために仕事をするな。自分の腕を磨くために仕事をやれ。」
というような感じです。
私はこの人と話をして、現在の監査法人に入所することを決めました。
現在の私の仕事の考え方は、この方の影響をかなり受けております。
この人と出会わなければ、まったく違う会計士人生を送っていたかもしれません。
辞められたあとも、是非、ご活躍していただきたいと思います。
本当にお疲れ様でした。
手作業→システム作業?
今回のクライアントでは、色々な種類の販売形態がありまして、いままではその中でも取扱金額が大きい販売形態の内部統制評価をメインに行っていたのですが、そのほかの販売形態をいつまでも無視し続けるのもなんだろうということで、ワタクシメがその「未開の地」の開拓を命じられたわけです。
その販売形態は、その会社の取引額全体の5%程度しかなく、最近までは手作業による管理(つまり専用のシステム無し)が行われていました。
しかし、ついにこの度、その販売形態専用のパッケージソフトが導入ということでした。
そのため、内部統制の評価もこのソフトを利用した業務フローを前提として話を進めていきました。
で、現在の業務フローをフローチャートに起こしている中で湧き上がる疑問。
「なんでシステムに情報を打ち込んでいるはずなのに、わざわざ手作業でこんな資料を作るんだろう?」
当然、疑問がわいたら会社の人に質問です。
私「すいません。(フローチャートを指差しながら)ここでシステムにこの情報を入力しますよね?なのになんでわざわざこんな資料を別に手作業で作るんですか?」
会社の人「いや、このシステムだと管理に必要な情報がとれないんですよ。」
…詳しく話を聞いてみると、この会社では管理資料として、日々の取扱件数と取扱金額の合計額を、予算比・前年比で並べた資料を作成されているが、このパッケージソフトでは個々の取引の明細は見れるが、日ごとの合計が見れないとのことでした。
そのため、個々の取引伝票をシステムに打ち込んだあと、わざわざ手作業で全ての伝票を集計して手書きの日計表を作成していました。
そのため現場の人いわく「私達は経理の人のために、わざわざそのシステムに入力してるんですよ。我々にはたいして役にたちません。」
これは、システム導入のよくある失敗の一例でしょうね。
自社の経営管理にとって、システムでどのような情報をとれるようにすべきなのか、逆に、システムをいれることによって日常業務をどのように変更すべきなのかをしっかり定義することなく、単純にパッケージソフトを買ってきて、導入してしまった、と。
こういった日常業務にひそむ問題点を洗い出すためにも、やっぱりフローチャートって有用だな~と再確認した今日この頃です。