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チイサナカケラ
大きな 青い 海の中から
わたしは あなたの カケラを探した
暗く深い 海の底で
それは 一瞬 キラリと光った
サンゴの 野原の 真ん中で
わたしは 確かに カケラを見つけた
息を止めて 懸命に伸ばした てのひらのなかで
あなたのカケラは 海の底に 溶けていった
急に 胸が 締め付けられて
わたしは あなたの カケラを諦めようとした
それでも カケラは キラリと光った
海の底でも サンゴの野原の真ん中でもなく
わたしの 胸の中で あなたのカケラは 確かに光った
この ほのかに暖かく チイサナカケラを わたしは ずっと離さない
無限の宙(そら)
その無限の広がりは まるで母親の母胎のよう
暗闇さえも 暖かい
その広がりに 虚ろに輝く無限の星たちから
ひとつつかめば 多分あなたと同じ名前
だからあなたも この無限の選択から
どうかわたしを つかんでください
静寂な世界
「愛してる」と言わなくてもいい
ただ肩を寄せて あなたが そばに居てくれればいい
あなたの肩に 頭をあずけて この世界を眺める
聴こえますか? わたしの 心臓の鼓動が
あなたとなら この静寂な世界さえも とても素敵な場所に変わる
その静けさが あなたも わたしも 好きなのに
それでも ついあなたは 「愛している」と 言ってしまうのね
それでも ついわたしは 「わたしもよ」と 言ってしまうのね
あなたが わたしを 愛してくれて
わたしが あなたを 愛している
この世界で ずっとあなたと 一緒に・・・
終電の後で
終電の出た 誰もいない駅で わたしは次の 電車を待つ
深夜3時12分発 「パラダイス」行き
あなたがそこで 待っている
そちらはどんなに素晴らしい場所ですか?
あなたが そちらに 旅立ってから もう1年が経とうとしています
何度も あなたに逢いに 行こうと思ったけど なかなか決心がつかなくて
でもやっぱりあなたに逢いたくて あなたの匂いを思い出したくて
今日の列車で あなたに 逢いに 行きます
あなたは 「なんできたんだよ」と怒るかもしれないけど
わたしの気持ちもわかってください
そちらの世界で わたしたちは永遠に一緒になれるかな?
やがて列車がきて わたしはそれに 飛び乗った
乗客は 他に 誰もいなくて
運転席を見ると ウサギが 運転していた
「『パラダイス』行き 『パラダイス』行きです。折り返しの列車はありません」
アナウンスが流れた 列車はゆっくりと 地下から地上へ そして 空の上まで走っていった
夢の続き
深夜の東京 わたしとあなたふたりだけ
「別れよう」と言ったあなたの服のすそを わたしはずっと つかんでいた
街灯のあかりが なぐさめるように ふたりを照らす
あなたは 困ったような顔をしながら 煙草に火を点ける
白い煙が わたしの心のように 当てもなく ふわふわと空に吸い込まれていく
わたしは あなたを後ろから そっと抱きしめて 「愛してる」と つぶやいた
その言葉は あなたの身体を通り抜けて 東京の静けさに 溶けていった
深夜にもかかわらず バスが一台 大通りを 走りすぎていく
「ごめん」とだけあなたは言った
わたしの涙で あなたのシャツが濡れた
あなたは 振り向いて わたしを強く抱きしめる
「ごめん・・・ 愛してる」 確かにあなたは そう言った
近くにあった 公衆電話が鳴って わたしはそこで 目が覚めた
隣で小さな寝息を立てて寝ているあなたに そっとキスをしてから わたしは 受話器を取る
「お父さん、今日の結婚式で泣かないでね」と わたしは 笑い泣きしながら言った
降り注ぐ涙
灰色にくすんだ空に わたしは自分の心を重ねる
大きな交差点 色とりどりに咲く傘たち
その下では カップルが愉しそうに 身を寄せ合っている
わたしは傘を差さず ただ独りで 信号を待つ
泣かないで 哀しいのは わたしのほうなのだから
泣かないで 「さよなら」を切り出したのは あなたのほうなのだから
信号が青に変わって 色とりどりに咲いた花たちは まるで風に吹かれたように 散っていく
わたしは交差点の真ん中で 空を見上げる
優しい雨が わたしの涙を 隠してくれる
泣かないで 哀しいのは わたしのほうなのだから
降り注ぐ 雨のひとつぶひとつぶが とても心地よい
わたしのために あなたはいっぱい 泣いてくれた
信号が点滅するころ ビルの合間から 虹が見えたような気がした
孤独なる緩やかな上昇
観覧車乗り場の前には 長い列ができている
子供が 両親と手をつないで オレンジ色のゴンドラに乗りたいと せがんでいる
カップルたちは 愉しそうに なにを語り合っているのだろうか
その幸福な列の中で 僕は独り
やっと見えてきた 観覧車の乗り場では 中学生同士らしいカップルが ゴンドラに乗り込んでいく
やがて 彼らは 1周して また戻ってくるだろう
色とりどりな ゴンドラがついた観覧車は その緩やかな回転を 止めることはない
前に並んでいたカップルは 赤い色のゴンドラに乗り込んだ
僕の乗るゴンドラは 透明だった
ガラス窓に頭をもたげて 外を眺める
緩やかに 僕の身体は 上昇していく
空が とても青く 深い
たくさんの 銀色のビルたちが 太陽に向かって 咲いていた
ふと 孤独に押しつぶされそうになって 携帯電話を 取り出す
画面には 圏外の文字
視線を 世界に戻す
緩やかな上昇は まだ続いている
その速度と 呼応するように 観覧車を中心として 荒廃が広がっていく
僕は 携帯電話を 深い空に 掲げた
圏外の表示は 画面に染み付いていた
緩やかな上昇は そろそろ 下降に変わる
頂上で 携帯電話が鳴った
僕は 携帯を耳に当てて つながりの向こうに 耳を澄ませた
「ツー」という音だけ 聞こえた
いつの間にか この世界に 僕独りだった
初めから この世界では 僕独りだった
変わらぬ日常の風
いつもと変わらぬ朝 ざわめく廊下をやりすごして 教室へと急ぐ
窓際の 前から3番目 それがあなたの席
窓際の 前から4番目 そこがわたしの席
まだあなたは来ていない と思った瞬間
あなたは わたしの横を 通り過ぎた あなたのヘッドホンから 音楽がもれていた
わたしは 胸の高鳴りを抑えて 3番目の後ろに座る
わたしから あなたの距離は 数十センチ
あなたから わたしへの距離は 遥か彼方の4万キロメートル
振り向いてください 振り向いて わたしとの距離を ぐっと縮めて…
風が カーテンをなびかせて 初夏の匂いを 運んで来る
今日から衣更えで 夏服に変わった
一日の始まりを告げる チャイムが鳴る
校庭を 寝坊した生徒が 走っている
いつもと変わらぬ朝 いつもと変わらぬ日常
わたしは 体の真ん中から 勇気を捻り出して 「おはよう」とあなたの背中に 言った
あなたは 少しだけ振り向いて 「おはよう」と言ってくれた
少しの間だけ ふたりの距離が 近づいた
いつもと変わらぬ日常
「髪きったんだね」 あなたは言ってくれた 「うん」 と返事する 私の声は 少し弾んだ
それが あなたにばれたかもしれないと 恥ずかしかったけど 嬉しかった
いつもとは 少しだけ違う日常







