そうこうしているうちに搭乗の音楽が
流れる。世界的な作曲家から
提供されたもので薫も最初は素敵だと
感じたが今やボクシング
のゴングのように聞こえる。
「ご搭乗ありがとうございます」「お待ちしておりました」等、各客室乗務員が
乗客を笑顔で迎える。
薫も座席を案内したり、荷物を物入れに
入れるのを手伝ったり、お子さま用の玩具を用意したり正に戦闘開始である。
そこに薫の担当エリアである23K座席の
紳士がやってきた。座席上の
1人用の(厳密には1人用ではないが)
荷物入れがまだ空いているのを見つけると
「CAさん、まだ空いとったわラッキーやな」
と関西弁で話しかけられる。
「そちらが一番便利ですよね」と薫も
慣れた対応でスルーしたのだが
席に座るなりすかさず
「イヤホン頂戴」とリクエスト受ける。
受け取ると当然のように袋のゴミを薫に渡す
こういう時、人間性が出るもので
本当の紳士はポケットにその位の
ゴミは入れておくものだと
声に出すことはないが入社時から
薫は信じている。
続く