記事より~
金融会社SFCG
(旧商工ファンド)の大島健伸社長らが経営する投資会社ケン・エンタープライズ(東京)は13日、中古車販売大手で東証2部上場のソリッドグループホールディングス(旧ライブドアオート)に対するTOB(株式公開買い付け)が成立したと発表した。ソリッド経営陣・従業員は反対の意向を表明していたが、上場会社に対する国内初の敵対的TOBが成立した。
T・ZONEホールディングス
やマルマン
などの企業再生を手掛けたケン社は、1株あたり26円でソリッドの発行済み株式総数の48~66.58%の取得を目指し、10月31日に買い付けに着手。その結果、48.48%の応募がありTOBが成立した。買い付け金額は29億7500万円。
記事のとおり、日本で初の敵対的TOBが成立したとのこと。
このTOB、公開買付開始が10月31日、買付価格26円という条件でした。この前日(10月30日)の株価の終値が43円、75日平均が40円でしたから近日の時価と比べだいぶ安い公開買付価格であったといえます。
ケンエンタープライズ社の公開買付届出書によると、この公開価格の時価からのディスカウントの根拠は、ソリッドグループホールディングス社は19年3月期の有価証券報告書においてゴーイングコンサーンの記載が行われていることおよび連結ベースで5期連続で当期純損失となっているため、時価での買付にはリスクがあるとのことでした。
このTOB価格に対して、今日12月13日のソリッドグループホールディングス社株式の終値は52円、TOB発表後の株価も30円を下回ったことは一度もありませんのでしたから、普通に考えて一般投資家がこのTOBに応じているはずはありません。ではなんでこのTOBが成立したのか?これに対してソリッドグループホールディングス社に関する適時開示&EDINETを見てみました。
が、もと親会社であるソリッドアコースティックス(SA社)からの変更報告書が12月13日付で大量にでていて、ぱっとみよくわかりません。
(いっきにPDFで見ていたのですがウインドウ開きすぎてこんがらがってきました)
これらのなかには、変更報告書№10と書いてあるものがありますので、10の変更報告書が同時に提出されたということでしょうか。。
めげずに、なんとなく内容を見る限る、どうやら過去分も12月13日に報告している模様です。
金融商品取引法27条の25において「100分の1以上増加し又は減少した場合、(中略)、その日から5日以内に当該変更にかかる事項に関する報告書を内閣総理に提出しなければならない」とありますので、ソリッドアコースティックスは、ずっと変更報告書を出すのを懈怠していたと思われます。記載されている報告義務発生日も大半が以前の日付ですし。
(ただしがきで、「株式等保有割合が100分の1以上減少したことによる変更報告書で当該変更報告書に記載された株券等保有割合が100分の5以下であるものをすでに提出している場合その他の内閣府令で定める場合についてはこの限りではない」とありますが、ここでいうところのその他の内閣府令がどれにあたるかがちょっとわかりませんでした。。。)
なお、もし上記27条の25に違反している場合は197条の2第5項により5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金(もしくはこれを併科)となっています。
途中はすっとばして、変更報告書№10をみるとわかりますが、どうやら今回の敵対的TOB成功はリーマンブラザーズが公開買付に応募したことによるものとのこと。(参照、【当該株券等に関する担保契約等重要な契約】)
なんでリーマンブラザーズが応じたのかというと、リーマンブラザーズがもともとの株主であるソリッドアコースティックスへの貸付に対して、ソリッドグループホールディングスの株式に対して貸付の担保として質権が設定していたからのようです。
なお質権の設定のみであり所有権等は移動していなかったので、TOBに応じたのはリーマンブラザーズですが下記の報告書における主要株主の移動にあたってはSA社からケンエンタープライズ社への移動というようになっています。
pressrelease~「その他の関係会社」及び主要株主の移動に関するお知らせ 12月13日
https://www.release.tdnet.info/inbs/2c0d09d0_20071213.pdf
今回のこの敵対的TOBですがいろいろと複雑すぎて、一見しただけではよくわかりません。。。
かつ法律がらみのことも多いので余計にです。
リーマンがTOBに応じることをわかってか(どうかは不明ですが)、ソリッドグループホールディングスは12月11日付けのプレスリリースにてリーマンブラザース社に対して訴訟提起したことを報告しています。
pressrelease~訴訟提起、破産申し立て等の近時の一連の行為に関するご案内 12月11日
https://www.release.tdnet.info/inbs/4c0b0950_20071211.pdf
なお、ここではリーマンブラザーズへ対する牽制ととれる一文がありますが、時すでに遅しということだったのでしょうか。
原文抜粋~
「LB社が当該公開買付に応募することはその有する担保の価値を著しく減少させる行為でありSA社が債務超過である状況をも考慮すると、到底許されるものではないと考えております。当社は名だたる金融機関であるLB社がそのような行為に出ることはないと信じておりますが、なお当社の強い反対意見を示すべく、意見表明報告書において当該公開買付に対する明確な反対の意向を表明しました。」
今回、初の敵対的TOBの成立とのことですが、もともとTOBにおける目標取得割合が48%以上(66.58%以下)。この割合だとソリッドアコースティックス(≒リーマンブラザーズ)さえTOBに応じれば成立してしまうようなものだったため、なんとなく結果がはじまったときから見えていたような気もしますが。