記事より~

みすず監査法人の解散などから他の会計監査人への契約切り替えを迫られながら、自力で契約できない異例の状態が続くと懸念されている上場企業が、新興企業を中心に数十社に上ることが二日、分かった。

 関係者によると、こうした“監査難民”の企業は日本公認会計士協会に紹介を求めるなど監査人探しを急いでいるが、六月下旬にピークを迎える株主総会までにすべてが契約できるかは不透明。監査人不在が長期化する可能性があり、不在のまま九月中間決算の監査報告書を十二月までに用意できない事態に陥れば、その企業の株式は証券取引所の規定により上場廃止となる恐れもある。

 数十社は、みすずから大量の監査先を引き継いだ監査法人に、人手不足などを理由に契約を拒否された企業が大半とみられる。粉飾決算が問題になった企業や、赤字決算続きで監査報酬が安い企業が目立つという。

 カネボウ事件など相次ぐ粉飾決算に絡み、厳しい行政処分を受けたみすずが解散に追い込まれたことを教訓に、監査法人による顧客企業の選別強化と監査の厳格化が一段と進んでいる。五月下旬には、菱和ライフクリエイトなど上場企業三社が、中堅の「麹町監査法人」から人手不足などを理由に会計監査人の辞退を通告された。

 東京証券取引所によると、情報システム会社のアソシエント・テクノロジーが二〇〇五年、粉飾決算で十分な監査を実施できなかったことから、監査法人に意見表明を拒否されて上場廃止となったケースはあるが、「監査人不在で上場廃止になった企業は記憶にない」(上場部)という。

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みすず監査法人の解散とともに、今年より制度化された上場企業への監査を行うにあたっての登録制度。このダブルショックにより記事のような監査難民が多数発生している模様。


新たな監査法人がみつからない理由としては記事にも書かれているようにリスクがとても高い企業であるか、または監査報酬がとても安い企業であるということになります。


今回のみすず監査法人の顛末をみていれば、どこの法人もリスクをなるべく避け、リスク高いところを引き受けたくないのは、自明の論理とも思われます。が、企業としてのリスクが高いからといっても監査法人が見つからないのは確かに問題であるでしょう。

特に新興企業であるだとか、業種的な問題(IT等はやはりリスクが高いとされてしまいます)によって監査法人がみつからないとのは今後の経済の発展にとっても大いなる問題ではないでしょうか。

これに対して個人的には、リスクが高い新興企業においても監査をうけれるよう、車両保険のごとく、リスクの等級をつけリスクに見合った報酬を払えば監査を受けれる等の対応が必要かと思われます。



一方で、監査報酬がとても安い場合、これはあきらかに企業側の問題であると思われます。実際、監査報酬をより安くしようと躍起になる企業が結構あります。


現在、有価証券報告書には監査報酬を記載しなければなりません。その記載を他企業と比較して値段交渉の材料だと勘違いしている企業が多いのではないのでしょうか。「うちとあの企業は同業種でほぼ同規模なのになぜ監査報酬が違うのでしょうか」等々を行ってくる企業もあります。

もはやこうなると、監査に対する認識の問題かと思われます。払わなくてもいいなら払いたくないコストと経営者がかんがえているのでしょうね。トップがそう考えているので実際に現場レベルにもその考えは波及しており、そういう企業は監査に当たっても対応が悪い場合が多い。。。まぁそういう企業に限って、実際には出来が悪くまた対応もわるいので、通常よりも手間がかかる企業が多いのですがね。



そんな状況を打開するにあたっても今後、現在の日本におけるような契約ベースでの監査報酬ではなく、アメリカのようにタイムチャージの報酬へのシフトすることを個人的には望みます。その際に上記にも書きましたリスクで分類したチャージレートの適用を行うことでリスクの高い企業への対応することも必要になると思われます。



上場を考えている企業は、今以上に上場のメリットとデメリットを考えて上場を目指していくほうがよいのでしょう。上場維持コストとして監査報酬は固定費用として常に計上されるものだと考え、それを払い続けることが享受できるメリットに見合ったものかどうか。監査報酬が経営を圧迫してなんていうのは、笑えた話ではありませんからね。