記事より~
経営再建中の日本航空(JAL)は2日、07年3月期連結決算の当期損益が2月時点の予想の30億円の黒字から、162億円の赤字に転落する見込みだ、と発表した。将来の利益を前提に計上していた「繰り延べ税金資産」を、監査法人の指摘で取り崩すため。一方で、直近の旅客需要は順調に伸びているとして、西松遥社長は記者会見で「営業面では順調に目標を達成し、収益が改善している」と述べた。
JALは06年3月期も472億円の当期赤字で、2期連続の赤字となる。2日発表した業績予想の修正では、売上高は今年に入って旅客需要が回復したため、当初予想より1.5%増の2兆3019億円。経常利益はコスト削減効果で5億円の予想から、205億円の黒字になる見通し。
JALの赤字理由、税効果の取り崩しによるものだとのこと
これにつき半期報告書(18年9月末付け)には税効果注記がないため、前期有価証券報告書(18年3月末付け)より推察。
監査法人は、新日本監査法人。もちろん監査法人が税効果(繰延税金資産の計上における会社タイプ:『繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱』監査委員会報告第66号)をどのようなタイプとしていたかは、有価証券報告書上明記されないため、そこも現状あがっているもののみから予想する。この際、前期に連結にあがっていた繰延税金資産の金額赤字金額が602億円あり、当期に544億円落とすことから考えると、監査法人側は当期より、タイプ4とした模様。
タイプ4とは、期末において重要な税務上の繰越欠損金が存在する会社等でこのタイプ4の会社の場合繰延税金資産は翌期に見込まれる課税所得の範囲内でしか繰延税金資産の計上が認められない。つまり1年分のみ。
これがタイプ3であると5年間の課税所得内での繰延税金資産の計上が認められているため、3から4になるだけで多大なる影響が生じることになる。JALに限らず、3から4へタイプが変わるだけで黒字から赤字へ転換してしまう企業は結構多い。
次に実際の内容を見ていくと、まず持ち株会社である日本航空本体ではすでに、評価性引当金でがっつり落としているためB/S上122百万円しか計上されていない。(評価性引当金の金額:57142百万円 内容としては関連会社株式の評価損)
一方で事業会社である子会社「日本航空インターナショナル」(100%子会社)では、41,898百万円の繰延税金資産が連結ベースで経常されている。機材関連繰延負債(固定負債)として44,452百万円、それにかかる繰延税金資産が、17,469百万円。この機材関連繰延負債というものが何かはまったくの不明。
この科目、17年度の有価証券報告書においては計上されていなかったもの。なのにもかかわらず、18年度の有価証券報告書のB/S注記および追加情報での科目の説明なし。明らかに「特殊な科目」として注記の必要性があるのではと個人的には思われる。こんな科目、普通の会社では絶対に出てくるものではないから、そもそもOKなのかも気になるが。これ以外にも機材関連報奨債権など独特の科目もみうけられるが、これにつき科目説明もなし。
また、もうひとつの事業会社である「日本航空ジャパン」では8,252百万円が計上されている。
(なおこれらの2社は18年10月付けで日本航空インターナショナルを存続会社として合併をおこなっている。)
ということで、有価証券報告書上では、事業会社で計上されていた繰延税金資産の取り崩しを当期に監査法人が要求してきたのだと考えられる。
現在の連結主体の会計上では、グループ全体とかで業績が悪くなると、親会社の数字が悪くなると同時に、子会社で将来キャッシュ等の金額が低くなる→減損の兆候が発生する→税効果が見れなくなる→子会社の赤字により、親会社保有の子会社株式の減損をしなくてはならなくなると、会計上での負の連鎖が続いてしまう恐れが発生する。この連鎖は会社にどでかいインパクトを生じさせてしまうものである。
まぁ、前年度どおりならば、短信発表は10日前後になると思われそれを見れば、より詳細はわかってくるかと。経常利益はプラスであるのだから、ホテル事業も売却し、今後は本業でがんばっていくのだろうが、その本業において「ボンバル機に不具合相次ぎ欠航(5日ニュース)」のような問題が生じてしまっており、信頼性回復の部分では完全復活はまだまだなのかとも思われてしまうのが残念なところか。
記事より~
西松社長は先月23日、定例会見で「当期黒字は間違いない」と強調したばかり。一転して赤字決算になったのは、監査法人から将来の収益見通しに疑問符が付いたためだ。監査法人が繰り延べ税金資産の取り崩しを迫った結果、JALは650億円ある資産のうち、当初から予定していた97億円分を含め544億円の取り崩しに踏み切る。4月に募集した特別早期退職の実施に伴う費用も計上したため、特別損失が膨らむ。
監査法人の指摘の裏にはJALが、01年の米同時多発テロ以降、新型肺炎SARSなど国際リスクに対し、いまだに有効な対応策が取れていないことがある。相次ぐ運航トラブルや原油価格の高騰などが業績の足を引っ張る状況も続いた。
繰り延べ税金資産の取り崩しを求めた新日本監査法人はこうした経緯を踏まえ、「将来の収益予想をより慎重に見積もるべきだ」と、指摘したという。