言論ながさき12月発行の原稿


 池田 文夫(元長崎新聞)
 

 長崎市の住宅地のど真ん中、長崎大坂本キャンパスに出来上がったBSL4(バイオセーフティー・レベル4)施設。現在、ウイルスを使わない試験運転をしているとみられるが、同大によると、これから弱毒ウイルスを使用した試験稼働を実施、来年度以降BSL4施設としての厚労大臣指定を受けて、日本にないエボラウイルスなどを輸入した本格稼働に入る見通しだ。このため、これまで施設建設阻止などを求めて裁判闘争を繰り広げてきた原告団は、住民らに危害が及ぶ恐れがいよいよ現実化するとして、新たに二つの裁判をしようとインターネットの「クラウドファンディング」による寄付を呼び掛けている。周辺住民55人が予定している裁判の一つは、厚労省にBSL4施設と認めさせない行政訴訟と、もう一つは稼働差し止め訴訟だ。

 感染症法には、建設前に事前に住民の合意を取ること(学術会議提言)や、宅地を避けること(WHO指針)までは規定されていないことから、同大は住民らの根強い抵抗にもかかわらず、2018年12月に着工した。私たち反対する住民らは着工2カ月前の10月にBSL4施設計画の差し止めを求める会(山田一俊代表・求める会)を結成、現在、BSL4の情報開示や基本構想中断を求める裁判をしている。

  私たちがまず強調したいのは、感染症法に定めるBSL4施設は危険な施設だということである。旧建設省が通知で原子力施設と同等の安全性を求めているのもそのためだ。ここで重要なのは、あってはならない活断層が近くにあること。長崎大は千々石断層などについては調査しているが、長崎市史にも明記されている小江原断層が坂本町近辺まで来ているのについては調査しておらず、「調査をする必要がない」と逃げている(大学側準備書面)。

 そこで、原告側は新しい裁判を起こすにあたり、専門家に調査してもらい、小江原断層が活断層であることをまず証明しようと考えている。今年10月、インターネットを使って行政訴訟する「CALL4」の審査に通り、不特定多数に寄付を呼び掛ける「クラウドファンディング」を始めた。ただ、2カ月がたち、100万円の目標に対してまだ3分の1にも満たない。難しいのは、BSL4には反対でも高齢者はパソコンを使わない人が多いし、使ってはいてもカードを利用しての金の送り方などは分からないという人も少なくないことだ。だが、事は地域住民だけでなく市民全体の安全な暮らし、命に関わる問題である。新たな裁判を何とか提起しなければならない。原告役員は最後まで望みを捨てずに、全員一致してクラウドファンディングへの協力を訴え続けるつもりだ。市民の皆様のご理解とご協力を切にお願いしたい。

 

ぜひCALL4サイトをご覧ください。

(下の写真をクリックしていただければご覧いただけます)

市街地でBSL4の研究をしないでください|公共訴訟のCALL4(コールフォー)長崎大学が計画し、国が支援するBSL4施設は、エボラウイルスのような致死的病原体を扱います。 しかし、住宅地から50mしか離れていないため、住民はいつ感染するか、怯える毎日を送らなければなりません。 ウイルスに感染する恐怖から近隣住民を守るため、BSL4施設の差止訴訟を提起します。リンクwww.call4.jp