メリッサは女性の名前ではない、レモンバームのことである。
むかしアロマテラピーをやっていた頃、メリッサは非常に高価でなかなか手に入らなかった。
その頃はアロマの最適な効果について考えを巡らせるということもなく、ローインパクトの理解も全くなかった。
たくさん使えばいいんじゃない?くらいの気持ちでやっていて、滴数などもいい加減だった。
あるとき知人が純正のアロマオイルを個人輸入するが一緒にどうかと誘ってくれたので、ヘリクリサムとメリッサ、あとカモミールだったと思うが取り寄せてもらった。
随分前のことなのでよく覚えていないが、30mlで1本がだいたい6000円くらいだったと思う。
日本に比べて安価に手に入ったので、喜々として早速その夜セルフマッサージに使ったのは良かったが、外国製のドリッパーは日本のそれのように1滴1滴ゆっくり落ちるように作られていない。
ちょっと瓶を傾けると、わずかなマッサージオイルの中にかなりの滴数が入ってしまった。
マッサージオイルで希釈するべきなのだが、あまり深く考えもせず、そのまま適当にマッサージして床についた。
深夜、夢を見た。
わたしは帽子を被った軍服姿で口髭をはやし日に焼けた手足と堂々とした体格の異国の男性だった。
同じ背格好のもうひとりの男性と並んで入り組んだ廊下を歩いていた。
手に銃を持っていた。
明るい昼間の廊下をはっきり目的が決まっているように無言の圧を感じさせながら歩き、あるドアの前で立ち止まった。
ノックすると軽い応答があり、部屋に入ると初老の男性が椅子に座っていたが、銃に驚いて立ち上がった彼を手に持った銃で何度も撃ったのだった。
その時のことは忘れない。
軍服の男性だったはずのわたしは、いつのまにか撃たれている男性にもなっていて、撃つ側、撃たれる側の激しい恐怖と緊張を全く同時に味わった。
ふたりの男の喉から出る獣のような悲鳴は、いつしか寝ているわたしの喉からも溢れ出て息が止まりそうになり、バネのように布団から起き上がった。
痛くはなかった。
ただ強い悲しみの感情が部屋に満ちていて、しばらく身じろぎもできなかった。
単なる夢にしてはあまりにもリアルで、直感的にメリッサをかなりの濃度で使用したことが原因だと感じた。
前世はあるのか、と聞かれれば知らないとしか答えようがない。
そのころ借りていたオンボロの間借りのせいではないか、と言われればそうかもしれない。
ただ自分の意識できないところで、良くも悪くも強く自分に影響を与えるパワーの存在を知った。
その頃のわたしにこの時の強烈な体験を自身の浄化に結びつけて考えることはできず、ああ怖かった、で済ませることしかできなかったのだが。
ボディやマインドに働きかけようとするとき、強い刺激は逆効果のほうが多い。
強い信頼関係がある場合は別かもしれないが、反発も大きいように思う。
それを受け入れて自分のものにし続ける土台が育っていないからではないかと思う。
気づきは必要だが、一瞬で通り過ぎてしまうようなものであってはならない。
反省を込めて。
自分のこころをそのままに受け入れられる余裕を少しずつ育てようとすることは大切だと思う。