2016年9月
ハルさんは車の運転中に事故を起こす・・・
そして・・・その後、全身が痙攣を起こし救急車で搬送。
幸い一緒に乗っていた真美さんも、運転していたハルさんもケガはなかった。
ハルさんは体が硬直しハンドルがきれなかった。
ただの左折で・・・ハンドルがきれずに電信柱に突っ込んだのです。
そして、そのまま・・・ありとあらゆる検査をすることになる。
異常が見つかったのは・・・脳波の異常。
異常というと様々だが、ハルさんの場合「脳の誤作動」「脳の暴走」である・・・
脳内麻薬物質といのが何種類かあるようだが、その物質の異常分泌。
この現象は例がなく、対処法がないという・・・
現在では治療法はない。
もうハルさんは・・・体が自由に動くことはなかった。
2016年10月
そしてハルさんは妻の真美さんの手引きで、ドイツに渡る。
真美さんはオランダのクォーター。
遠い親戚がオランダに居て、ドイツとは隣同士の国。
ドイツの医学研究の知り合いを頼り、治療法を探す。
そして・・・脳の沈静化の治療を受けることになる・・・
「脳」は、現代も未知の領域なのだ・・・
ハルさんは・・・生き埋め事故で脊髄損傷を負っている。
本来は、あのとき既に体が動かなくて当たり前だったのだ。
不思議だが事故の後の、ハルさんの体は不自由なく動いた・・・
いま思い返してみると、本来は動かないはずの体が動いたのは・・・
神様が、ハルさんに時間を与えたのかもしれない。
そう思えて仕方ないのだ。
俺は神を信仰しているわけではないが、
何か見えない力が働いて、体が動いていたとしか思えなかった。
ハルさんが事故後のしたこと・・・
会社の譲渡。会社の社員の精神面のケア。技術継承。
真美さんとの結婚。息子Tとの空手の試合。子供達に対する精神面のケア、教え。
偶然なのかもしれない・・・でも、そう思わずにはいられなかった。
そしてハルさんの体の秘密が明らかになる・・・
ハルさんは空手の影響で特殊な呼吸法をする。
その呼吸法は脳をブーストさせ、常人ではできないことをやってのける。
しかし、その呼吸法のため、脳は暴走しオーバーヒートしてしまうのだ。
通常、人間は脳の能力を数パーセントしか使ってないという。
でもそれは、ある意味リミッターとなり体に悪影響を及ぼさないようになっている。
でもハルさんは、呼吸法がスイッチとなりリミッターを外してしまう。
それが原因のひとつとも考えられる。
もちろん確証はない。憶測の域は出ないのだが・・・・・・
ハルさんの脳の沈静化は薬物の投与で行われ、下手をすれば「脳死」。
うまくいったとしても体の不自由を失う。
いや、本来の状態に戻るだけで・・・脊髄損傷しているので動かない体が当たり前。
どちらにしろ、希望の少ない治療であるのは間違いない。
ただ・・・脳の暴走が引き起こす「痙攣」は、大変危険。
命を顧慮して、その痙攣を起こさないようにするのを優先した治療。
そんな感じだ。
薬の微妙な量を調整しての投与で、うまくいく保証なんてない。
言い方を変えれば実験。
「賭」以外のなにものでもない。
それでもハルさんと真美さんは決意する。
薬の投与で意識は失うが・・・一週間経って目覚めなければ・・・脳死と判断される。
いや、脳死なのだろう・・・
一方、俺たちとハルさんの子供たちは日本で待つことになる。
この間、俺とトクさんは毎日ハルさんの家に通って、子供達励ます。
このときトクさんは、ハルさんの双子の兄に連絡をとることに成功していて・・・
実はトクさん、このハルさんの双子の兄に、5年ほど前にハルさんと会わせているらしい。
ハルさんの双子の兄も、ハルさんの自宅に駆けつけ、共に待つことになる。
ハルさんの双子の兄は「トシさん」という。
トシさんは、ハルさんの存在を知っていたそうだ。
それにしても・・・トシさんはハルさんと、うり二つだった。
一卵性のようだ。
そしてドイツでは、ハルさんへの薬の投与が始まる・・・
俺たちは信じて待つことしかできなかった。
そして覚悟もしていた。
高校生であるTすらも覚悟をしていた。
しかし・・・一週間経っても、ハルさんが目覚めることはなかった。
呼吸は人工心肺である・・・
心臓は動いているが・・・脳波は・・・
そして真美さんは、ひとつの決断をする。
「もう少しだけ、待ってほしい・・・」と哀願する!
そして・・・・
約10日後・・・・ハルさんは目覚めた!
その連絡をもらったとき、涙を流しハルさんの子供達と抱き合って喜んだ。
まさに奇跡である!
通常では考えられない・・・常識を覆してしまう奇跡を、ハルさんは起こす。
生死を何度も彷徨っても・・・何度も生還する。
大した生命力である。
余談だが、目覚めてから初めて発した言葉は・・・
「乳触らせれ」だそうです(笑)
あの人らしいです。
そして真美さんは、ほとんど寝ずにハルさんが目覚めるのを、ひたすら待っていたという。
ただ・・・首から下は体が動かない。
言葉は喋れる。
オムツも必要だし、車椅子の生活を余儀なくされる。
体の自由は失ったのだ。
決して喜べる事じゃないが、生きて話せるだけで・・・俺たちは喜んだ。
そして・・・不思議なことがある・・・
ハルさんが目覚める少し前に・・・トシさんが言った言葉がある。
「ハルさんは目覚めるよ・・・」
と、こう言ったのである。
双子・・・・お互いに何か感じるモノがあるのだろうか?
トシさんに聞いても、「なんとなく、そんな感じがした」としか言わなかった。
とても、とても不思議だった・・・
そしてトシさんは、ハルさんの帰国を待たず・・・
ハルさんに合うことなく、地元である北関東の自宅に帰った。
2016年10月30日
真美さんと共に、ハルさんは帰国する。
続く