真美さんが29日の夜遅く、こちらに戻ってきた。
そして30日に俺の所に来た・・・
息子Tが4月1日に入社式。そのために真美さんは戻ってきた。
息子Tの祝いを兼ねて側に居てあげたいという気持ちで真美さんは戻ってきた。
でも4月2日には、再びこちらを旅立つ予定だ・・・
30日の夜みんなでバーベキューをやろうということになった。
会社の資材置き場でバーベキューをすることになった。
雨が降ってきても屋根もあるし、周りに気兼ねなくできるというのが理由だ。
美香さんも参加。
俺はもちろん参加。
Tの彼女ソフィーも参加。
そして真美さん、息子T、娘Kと6人。
美香さんの息子も誘ってが都合がつかなかった。
串に刺した野菜や肉を焼き、焼きそばもつくった。
食材の買い出しと調理は女性陣で、ワイワイと楽しくやっていた。
Tと俺はコンロや火起こし等の準備。
なにをやるにしても、みんなでやると楽しかった。
ちなみにKは、まだ言葉を発しない。
でも楽しそうに笑顔で、みんなと作業していた。
俺は少し安心した。
ちなみにTの彼女ソフィーは、真美さんに憧れている。
ソフィーもほんとうに楽しそうだ。
はじけそうな笑顔がとても印象的だった。
真美さんの生き方や思想、容姿なども含め理想の女性だとソフィーは言う。
真美さんは女性にもとてもモテる。
さすがです・・・
俺は・・・・将雄さんのことを話そうか迷ったが・・・やめた。
自分の心にしまっておくことにした・・・
将雄さんとの約束を全うすることにした。
いろいろな話をした。
Tが俺たちに問いかけたことがる・・・
「なんのために生きるのかな?」という質問だった。
すでに社会に出ている社会人の考えを聞いておきたいとのことだった。
俺も過去に同じ質問をハルさんにしたことがある・・・
今度は俺がTに答える順番が回ってきたんだと思った。
でも真美さんが、すぐに言葉を発した。
「自分のために生きるんだよ。そして大切な人のために生きればいい」
Tは「自分のために・・・か」と呟いた。
美香さんは「愛する人のために生きる」と言った。
美香さんは今も亡き宗二さんのために生きていると言う・・・
一生それを貫く覚悟だと言う。
美香さんらしい答えだ。
そして真美さんも真美さんらしい答えだ。
俺は過去に同じ質問をハルさんにしたことを話し出しました。
「ハルさんは”なにかのために生きるんじゃねぇよ”って俺に言った」
「”生きるために闘え!自分自身と闘うんだよ!それに生きてみんと分からんしな”って俺に言ったよ・・・」
「難しく考える必要なんかない。シンプルに生きたいように生きて、生きるために闘うんだよ」
「俺はハルさんに、そう教わったよ」
Tはクスッと笑って「父さんらしいや」って一言。
そしてTは言った。
「生きたいように生きるって・・・すごく難しいことじゃない?」
俺は頷いた。そして、こう答えた。
「難しいことだと思う・・・ハルさんにしかできない生き方かもな」
Tは「人それぞれなんだね」って微笑みながら言った。
それを見ていたソフィーが「そんなTだから大好き!」と言って抱きついた。
・・・少しTが羨ましい・・・
心の中で「人前でイチャつくなよ」とも大人げなく思った(笑)
Tは「自分のために俺は俺らしく生きていく」こう言った。
人の痛みが分かり、思いやりがあり優しく、強い信念を持つTが自分らしく生きられるよう心から祈った。
一通り食べ終わると、Tが「母さん何か歌ってよ!母さんの歌が聴きたい!」
と、こう言った。
すると真美さんは頷き、常時車に積んであるアコースティックギターを取りにいった。
そしてギターを抱え歌い出した。
スローテンポの曲だ・・・どこか切ない旋律・・・
歌い出した途端に曲が分かった!ジギーの”グロリア”だ!
真美さんの十八番の曲。
しかもバラードバージョン。
ウィスパーボイスでしっとりと優しく歌う・・・
呼吸と混じり合う声が、とてもセクシーだ・・・
みんなで聴き惚れた。真美さんさすがだ。
俺も久しぶりに真美さんの歌を聴いた気がする。
娘のKは自然と目を閉じ体を小さく横に揺らす・・・真美マジックの発動だ。
・・・葵さんはハスキーボイスで魂で歌う・・・そんな感じだったが
真美さんは、また葵さんとは違う優しい声で歌う。
曲を歌い終わると真美さんが言った。
「Tに捧げる歌よ!社会人になってもがんばって!」
ソフィーは真美さんの歌を聴いて、感極まって泣いていた。
真美さんが続ける・・・「ではサービスでもう一曲!」
そしてイントロが流れる・・・またもやバラード!でも何の曲かは分からない・・・
真美さんはオリジナルアレンジでギターを弾くので、イントロ聞いても分からないんです。
歌い出して分かった!”ペガサス幻想”アニメ聖闘士星矢の曲だ。
これもウィスパーボイスで吐息混じりに優しく歌いあげる・・・
グロリアもそうだったが、このペガサス幻想も原曲とイメージが全然違う・・・
オリジナルアレンジでバラード曲になっている・・・すごいセンスだ。
そして曲が歌い終わると・・・みんな感極まった顔をしている。
Kも感情が表に出て泣いている。
Kとソフィーは泣いている・・・俺を含めその他も泣きそうになっていた。
やっぱり真美さんの歌はいい!
その気になれば絶対歌で食べていけそうだ。そのくらいクオリティーが高い。
そして、そのポテンシャルは計り知れない。
真美さんが満足そうな笑顔で抱えたギターを片付けようとすると・・・
Tが「もう一曲だけ・・・クローズ ユア アイズ歌って!」とせがんだ。
すると真美さんは「じゃあ、もう一曲だけ。後方付けもあるから最後だよ」と言い
長渕剛の"Close your eyes"を歌い出した・・・
相変わらず吐息混じりで歌う声はセクシーで心地よい。
時に力強く歌う・・・
Tも感極まったのか、父のハルさんを思い出したのか・・・泣きながら真美さんの歌を聴いていた。
俺もハルさんを思い出して聴いていたが・・・驚くことに真美さんが泣きながら歌っていた・・・
真美さんもハルさんを思い出してしまったのかもしれない。
こうして夜も更け、後片付けをしお開きになった。
帰り際に、俺はTに拳を差し出した。
そしてTが軽く俺の拳に、自分の拳をぶつける・・・
そして、それがみんなに伝染して・・・
各々が全員と軽く拳をぶつけあって帰りの挨拶とした。
久しぶりに楽しい夜を過ごした・・・
真美さんがまた旅立ってしまうことに、少し寂しさを感じた。
美香さんもソフィーも同じように感じたようだ。
でも真美さんはいつでも元気に笑って・・・そしてKも笑顔で元気そうだ。
少しだけでも顔みせてくれるだけで安心する・・・
ここに・・・ハルさんと葵さんと叶、そして宗二さんが居たら・・・
もっと楽しいんだろうな・・・
そんな想像をしてしまった・・・
そんな想像をすると自然と涙が溢れる。
人は・・・・・思い出があるから・・・生きられるのかもしれないですね。