今、いろいろと悩んでいる。

 

そして信じることに少し疲れたのかもしれない・・・

 

会社のことですが・・・・・・

 

何度も裏切られた。

 

でも何度、裏切られても信じてきた。

 

・・・すると自分でも気づかないうちに独り言を言うようになって、その頻度も多くなっていった・・・

 

自分自身の心が限界なのかもしれない。

 

ハルさんという存在がいなくなって、いろいろな重みが俺を押し潰そうとする・・・

 

ハルさんのメンタルの強さと比べれば、俺のメンタルなんて豆腐に等しいと思う。

 

単純に自分のキャパを越えてしまったのだろう。

 

しかし俺は会社の長で、ハルさんから会社組織を譲り渡され社員の生活を守る義務がある。

 

そう思う反面、潰れそうな自分がいて・・・・・・その狭間で藻掻き苦しんでいる。

 

自分でも、どうすればいいのか解らなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はそんな状態で・・・行き詰まって、トクさんに相談した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トクさんは、こう言った。

 

「あのなぁ、何でハルの真似をしようとする?お前はハルになれねえよ?もちろん俺もだけどな」

 

「ハルの・・・あいつの真似なんて誰にもできねえよ!」

 

「お前はお前だろ?ハルとは歩いてきた人生も環境も違う!」

 

「それに会社だって譲り受けた時点でお前の好きなようにすればいいんじゃね?」

 

「お前が会社をどうしようとハルは文句一つ言わないと思うぞ」

 

「お前らしく自分らしくでいいじゃねえか!ハルを目指すのは勝手だが、真似しようなんて思うなよ」

 

トクさんに相談したら、いろいろ考えさせられることを言われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は「ハルさんって偉大すぎるんだな」って呟くと、トクさんから言葉が返ってきた。

 

 

「当たり前じゃねえか!俺だってハルを尊敬している!真似もできない!」

 

と・・・・・・

 

そして俺は沈黙した・・・

 

しばらく沈黙した時間が流れ、トクさんは缶コーヒーを買ってくると言って、その場を離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トクさんは缶コーヒーを二本買ってきて、そのうちの一本を俺に投げた。

 

そして二人で缶コーヒーを口に少し入れる・・・

 

そしてトクさんが語り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ・・・・例えるならお前は”木”だ!お前の本質を例えた話だ」

 

「すごいスピードでどんどん吸収し、大きな大木に育って行く!」

 

「枝を伸ばし根を張り、ハルの元で大きな成長を遂げた!ハルが言う”拙者が育てた最高傑作”だ」

 

「技術者としては一流を越える存在でもあるだろう・・・」

 

「今では俺よりも、お前の方が技術者として上だろう」

 

「もちろん知識も俺より上だろう」

 

「だが戦略においては、まだまだ俺の足下にも及ばない」

 

「情報戦においても俺の方がお前よりも上だ!」

 

「ハルは俺に言ったよ。トクは戦略において一流だ俺では到底敵わないな・・・と」

 

「でもな・・・俺はそうは思わなかった」

 

「ハルが情報を持ってきたのを精査し戦略を組むのは俺だった」

 

「しかし、よくよく考えるとハルがみんなお膳立てをし俺を導いていただけだ!」

 

「情報戦においては確かに俺の判断でやっていたが・・・それでもハルの助言は頼りになったよ」

 

「お前は、そのハルを間近で見てきたんだろう?」

 

「お前には、そのハルの教えが宿ってる・・・・・」

 

「まだ芽が出てないだけだよ!焦るなよ」

 

「ハルなら『気楽に行こうぜ!』って笑って言うだろうよ・・・・」

 

「一つ言っておくと、ハルのメンタルの強さはモンスター級だ!簡単に真似はできんよ!」

 

「社員に対しては・・・社内では、とことん社員を信じてもいい!お前がぶっ壊れようと信じてやれ!」

 

「何度裏切られても信じてやれ!」

 

「でもな社外じゃ優しさを捨てろ!弱肉強食の社会だ。優しすぎるお前には酷かもしれんが・・・・・」

 

「大事なモノを守るためなら鬼となれ!」

 

「もちろん自分自身で状況や立場を考えて判断しろ」

 

「社外でも時には優しさが必要だ!要はバランスが大事だ!ってことだよ。うまく立ち回れよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は弱い・・・・・・知っていたことだが改めて自覚した。

 

自分の弱さを認めることから始めて第一歩・・・か。

 

ハルさんが言っていた言葉だ・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてトクさんが言ってくれた”一流を越えた技術者”という言葉には、単純に嬉しかった。

 

でも・・・・俺もトクさんも解っていることがある。

 

俺やトクさんは日本全国で仕事をしてきた・・・・・・

 

被災地での土木作業にしても、体力だって自衛隊に全く引けを取らない。

 

むしろ自衛隊の隊員より体力があるのは間違いない。

 

炎天下の過酷な環境下でも隊員よりぜんぜん動けるし、長時間の作業も負けちゃいないと思ってる。

 

民間で利益を追求するため、豪雨の中のぬかるみでも炎天下でも培った慣れと体力がある。

 

しかも”技術者”としても自信がある。

 

 

しかしだ!

 

ハルさんを越える技術者には、まだ出会ったことがない!

 

俺もトクさんもだ!

 

体力面でもハルさんは化け物だった。人間離れしていた。

 

”こんな状況でどうやってやるんだ?”って一流の技術者達が無理だとサジを投げるような仕事でも、

 

ハルさんは「任せろ!」と言ってやってしまう。

 

どうやってやったんだ?と聞くと、決まってこう言う・・・

 

「内緒だ!モノの見方を多角的に見ないと気づかないだろうな」と笑って言う。

 

不可能だという言葉が、いとも簡単に薄れてしまうハルさんの台詞。

 

そしてミリ単位で正確で、それでいて一流と呼ばれる技術者の3倍のスピードで作業をこなす・・・

 

一流の技術者達がハルさんのことをこう呼ぶ・・・・

 

”神の領域にいる男”と・・・

 

ハルさんは、そういう技術者だった。

 

そして知識も豊富で、いろんなモノの見方ができ、設計者としても一流を越えていた。

 

俺は自分で解る・・・・技術者としてハルさんを越えることはできないだろう・・・

 

決して最高傑作なんかではない。

 

最高傑作とはハルさんに相応しい称号だと思っている。

 

俺にはまだ、ハルさんに最高傑作と言ってもらえる資格はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はトクさんに相談して、少し楽になった気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トクさんは俺の本質を”木”と例えた・・・・

 

じゃあトクさんの本質を例えるとなんだろう?と思って聞いてみた。

 

ちなみに俺はトクさんのことを例えると”毒”か”土”だと予想した。

 

理由は清濁合わせ飲める人だし、明晰な頭脳で毒を制する人ってイメージがあるからだ。

 

もう一つ”土”の理由は大地のようなイメージがあるからだ。

 

とにかく広大な大地を連想させる固い意志と、壮大な思考を持っているからだ。

 

でもトクさんの自己分析での回答は”氷”だった。

 

トクさんは自分の本質を例えるなら”氷”と言った。

 

確かに冷静沈着で熱くなって自滅することはない。

 

少し冷たい感じもするのも事実だ。

 

妙に納得してしまった・・・・・

 

顔はハルさんと双子のように似ていても、感じる印象は全然違うのだ。

 

ちなみに葵さんは”土”というイメージらしい(笑)

 

そして真美さんは”空(そら)”か”宇宙”だというイメージらしい(笑)

 

真美さんの本質の例えには妙に納得してしまった(笑)

 

たしかに壮大すぎて自由すぎるので、ぴったりのイメージだ。

 

葵さんに関してはトクさんのイメージなので、俺には少し違うんじゃない?というイメージだ。

 

俺が葵さんの本質を例えるなら”光”かな・・・・・なにもかも照らしてくれる光。

 

決して闇に飲まれない光。

 

そんなイメージです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてハルさんの本質を例えると?ってトクさんに聞いてみた。

 

すると・・・トクさんは”水”と即答した。

 

俺は正直言うと意外だった。

 

てっきり”鉄”とか”光と闇”とか、そんなイメージなので・・・

 

そしてトクさんが、なぜ”水”に例えるのかを話はじめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハルは・・・毒にも薬にもならない・・・・光でも闇でもない・・・・酸性でもアルカリ性でもない・・・ただの水だ」

 

「中性の水だな」

 

「時には流れに身を任せ、時にはユラユラと漂い、激流にもなり清流にもなる、そんな男」

 

「牙を剝けばとてつもないし、攻撃を受ければ受け流す」

 

「時には強固な壁にもなり、全てを包み込むような水のようにもなる」

 

「全てを飲み込み、受け入れ、受け止め、生命に必要な活力を他人に与える」

 

「全てを洗い流すような側面も持っている」

 

「そしてハルは水鏡でもある」

 

「あいつと対峙した人は、自分を映す鏡にもなる」

 

「ハルと対峙すると、自分の心を内側を鏡で映されるように感じたことはないか?」

 

「そして、かつて葵ちゃんは”ハルを掴もうとしてもこぼれ落ちてしまう”と言ったことがある」

 

「まさに”水”だ!」

 

「ハルは誰がなんと言おうと間違いなく”水”だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は妙に納得してしまった・・・

 

そしてハルさんは職業も・・・・・水に関わっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは後日の話だが真美さんにも、ハルさんの本質を例えると何?って質問を投げかけてみると、

 

ハルさんは   ”水”    と、答えた。

 

理由はトクさんと同じようなことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は”鉄”だと思ってたけど・・・・・

 

たしかに”水”と言われれば、そなのかもしれないとも思った。

 

俺はハルさんから、いろいろと吸収した”木”・・・・

 

たしかにハルさんは”水”なのかもしれない。

 

俺に栄養を与えたのはハルさんだからだ。

 

”木”は”水”になれない・・・・

 

妙に納得してしまい、妙に心が晴れた気がした。

 

ハルさんの本名は、漢字にも水の色をイメージする字が入っている・・・

 

偶然が重なっただけなのか?・・・・

 

それとも生まれたときからの運命だったのか?・・・

 

いろんなことを考えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とにかく、このトクさんとの話で少し元気になれた気がしたのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それと真美さんとは、たまに連絡を取っている。

 

相変わらず元気そうです。

 

ちなみに娘のKも元気で、ゆっくりと自分を取り戻しつつあるようです。

 

環境が変わり、自分を見つめ直す時間も取れるようになったことが大きいらしいようで。

 

環境って大事ですよね。

 

真美さんは、そのことを・・・・・・・・・・・・・

 

よーーーーく知っていたからこそ、今の道を選んだのだと確信しました。

 

環境とは人間が生きるうえで、いかに大切か?ってことですね。

 

普段は慣れた環境で生活しているため、それが当たり前となり気づきもしない・・・

 

でも真美さんは違ったというこです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして・・・・・・・・”水”も環境と関係が深いもので・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いろいろと考えさせられるんです・・・・