ウィリアム・ミラーの
「動機づけ面接法―基礎・実践編」
を読んだ。面白かった。
友だちが教えてくれたのだが、
少年院で傾聴だけでは難しくて
この「動機づけ面接法」が一番
よいと教えてくれた友達がいる、
ということだった。
そう思って読んでいくと
でもこの「動機付け面接法」
傾聴的というか、
カール・ロジャーズの
「来談者中心療法」的なのである。
まず、基本的に人を
無理矢理変えることはできない。
これは当然である。
特にミラーは、
自分のクライエントは皆、
とても苦しんできたと語っている。
だから、屈辱・恥・罪悪感・不安
そういったものが変化の原動力と
なるわけではない。
では何が原動力となるか。
それはその人が大切にしていること、
「内的価値」なのである。
それに触れることが出来た時に、
人は変化する。
だから例えば、
いくら肺がんになる危険を言われても
タバコをやめなかった男性が、
ちょっと娘を待たせて隣町に寄れば
タバコのカートンを買っておけると
思った時に、ふと
「俺は一体いつから
娘とタバコを選択の天秤にかけて
平気でいたんだろうか」
と思って
タバコをやめようと“思う”のである。
その上で、本来選択肢というのは
「両価的」である。
つまり、いい面と悪い面が含まれて
ごっちゃになっている。
複雑になると、
Aさんのここが好きだがここが嫌い
Bさんのここはいいがここが問題
というように、二つの選択肢の
両方に良し悪しが含まれる。
だから動機付け面接法では、
まずその人の「内的価値」を
引き出しながら、
それに添う変化を望む言葉である
「チェンジ・トーク」を
繰り返しと要約によって強化していく。
ここで面白かったのは、
「質問」を極力抑えるようにと
書かれていること。
僕は質問を大事に、
また工夫もしているけれど
(そういえば一緒に「質問」の
ワークショップやった友達も
この「動機付け面接法」を
習得していた)
相手の言葉を深めることの方を
多用している気がする。
そもそも、相手が語ることを
最初から理解できるわけもないし。
ミラーが言うには、
動機付け面接で普通のカウンセラーは、
1つの振り返りに対して10質問をするが
熟練したカウンセラーは平均して
1つの質問に2か3の振り返りを返すのだそう。
(振り返りとは相手の言葉を選んで繰り返すこと)
行動できない悩みが両価的である時、
こちらがある正しい側面を強調すればするほど
相手はもう一つの側面を支持することになる。
それでその人の内面にある印象は
バランスが取れる訳だけど、
問題なのはある一つの側面をその人が
口に出して主張するということだ。
だから、家族療法家が
「アイロニーのプロセス」というように、
つまりギリシャ悲劇で、
ある行動が避けようと思っていたことを
引き起こしてしまう悲劇のように、
相手を望んだのと逆の方向に動かすのである。
変わるための言葉、動機が
その人の内にあると信じること。
(方法は専門家の援助もあり得ますよね)
「動機付け面接法」という名前だと、
外から動機づけを与えるような印象を
持っていましたが、
英語ではMotivational Interviewingですから
動機を扱う方法なわけです。
この前開催した「自信を引き出す」ワークショップも、
方向性と価値観が似ていて嬉しくなったのでした^^