…僕の父も、ほめることをしなかった人だ。
彼は僕たち子どもを養ってくれたし、
働くことについて良いメッセージをくれた。
数年前、まだ父が生きていたころ、
僕は自分も父を大してほめなかったことに
気づいたんだ。
だから、父を訪ねているとき、
僕はこう言った。
「あなたは良い父親でしたね。
僕をヤンキー・スタジアムに
連れて行ってくれたときのこと、
二人でベーブ・ルースが試合をするのを
眺めたのを覚えていますよ。
あなたと過ごした楽しい時間だった」
父は口の中で
モシャモシャ何か言っただけだった。
その日の午後
僕は昼寝をしようと横になっていた。
父が寝室に入って来て、
僕の足の親指をつかんだんだ。
たぶんその程度の触れ方が、
彼にとっての安全圏だったのだろうと
僕は思うね。
そしてこう言ったんだ。
「お前も、なかなか良い息子だったよ」
ってね。
そしてくるりと向うを向いて、
部屋から出ていった。
―ボブ・グールディング
僕の生家では、記念日を祝わない。
だから母の日も特にない。
だけど20代の頃、僕は母に
「僕は、お母さんの子どもに
生まれて良かったよ」
と言ったことがある。
母は確か何も言わなかったが、
言いたいことは伝わったと思っている。
(もう、忘れたかも知れないけどね)
僕は宗教を離れたが、
まだそこに居る母が神を疑っても
自分の子育てを責めないように
したかったのだ。
さて。
僕は、父には何も言っていない。
なんだか、
ずっと言わないような気もする。