昼夜の交代、
太陽と月の動き、嵐と洪水。
 
神話はあまりにも明瞭に
自然現象のアナロギーであることが
読み取れるので、
 
神話は原始人が
自然現象を説明するために
考え出したものとする
学者もあった。
 
事実、神話という母体から
自然科学が育っていったのであるが、
むしろ、そのような
物理的説明としてのみならず、
 
それによって生じる心の動きを
自分の心のなかに基礎づけ、
安定させていく試みでもあるのである。
 
神話学者のケレーニィは、
真の神話は事物を説明するのではなく
事物を基礎づけるためにあると述べた。
 
単なる天文学としてなら、
東から昇る太陽はあくまでも、
太陽の姿として
記述されるべきであるのに、
 
どうしてそれは
黄金の四輪馬車に乗る神として
述べられねばならなかったのか。
 
ユングはそれを、
古代の人が外部の現象のみでなく、
それが彼の心の内部に与えた動きをも
述べようとしたのではないかと
考えたのである。
 
 
―ユング心理学入門より抜粋(河合隼雄)