ファンタジー小説(過去ログ休止中)

ファンタジー小説(過去ログ休止中)

現在はファンタジー小説を書いています。
過去ログ休止中のためタイトルを改めました。

Amebaでブログを始めよう!
アガルケーダ第四話「不吉な予感」

城を覆い尽くす空はどこまでも青く澄みきっている

女王の周りに集まっている人々の目は

この若き女王にくぎ付けになっていた

「私たち一人ひとりは小さい力しか持ち合わせていなくても、みんなが心を一つに歩んでいけば出来ない事なんてありません」

若き女王の心地よい響きに応えるかのように歓声が上がった

それはかつて狡賢い人間たちが

自分達は安全な場所にいながら

兵士たちを犠牲にして

功績を称えてきた言葉と同じだった

「真剣に偽善者に成れない者に、指導者となる資格はない」

これはわが友が俺の偽善者呼ばわりに対する返答だった

俺は昔からみんなで力を合わせるという言葉が嫌いだった

皆で力を合わせるというこの甘美な響きは

人を陶酔させ一つの考えに縛り付ける

その言葉に突き動かされる者は

必ず思考停止させられるからだ

そして

植えつけられた考えが指した方向へのみ動かされてしまう

一つの呪いの言葉のように俺は感じてしまう

しかし・・・

我が友が兵士たちの墓場で人知れず涙にくれて

己の無力さを悔いている姿を何度も見かけて

確かに自分の部下たちを利用している事を

自覚していると認識できた

心を痛めながら勝利を手にしてきているのだ

それこそが偽善者たる所以

部下たちを利用して勝利を手にしている者の業であり

俺もまたその一人なのだと自分を律する事にした

死んでいった部下たちの事を

決して忘れてはならない

自分が偽善者だと言った友の心は

つまり自分の采配で失った兵士たちへ向けられている

こんな友の心を感じ取った者達は

彼の為に命すら惜しまなかった事も目の当たりにした


俺はゆっくり視線を女王へと移した

すると

この幼い女王の姿が友と重なったように見えた

恐らくこの女王もまた友と同じ心で兵士や民に

向き合っている

そんな直感が纏わりついて離れない

ここは友の匂いがする

もしあいつがここにいたら

この国の将軍として生きられたら

あんな惨い死にざまはしなかっただろう

無実の罪で投獄された挙句に毒殺されるなんて

そんな死に方はあいつには相応しくない

戦場の中で英雄として・・・

俺は鼻で笑って見せた

馬鹿らしい

もしもなんて事などこの世に存在しないのだ

一方で燃え上がるような悔しさが

全身を焼き尽くされんばかりになっていくのを感じた

憎しみから生まれる力は必ずや自分を蝕んでいく

俺は戦場の中で憎しみに駆られた者達が自滅していく姿と

嫌という程であった

憎しみは相手も自分も破滅させるだけで

何一つ生むものは無いのだと俺は思う

だから心の中に燃え上がった炎を

治める為に幸運の天使たちを見つめた

純粋な子供の姿を見れば少なからず

怒りが収まる気がしたからだ

子供たちは、その小さい肩にこの国の期待が圧し掛かっている事を

まるで自覚でもしているように感じられた

後でガーゴスに聞いたのだが

四人の天使たちの魔力は微々たるものらしい

それは国中の民たちにとって周知の事実であり

誰一人知らない者はいない

しかし

彼女たちが幸運の天使である根拠は

いくつかあるらしかった

俺にしてみればその根拠がどんなものであれ

これだけ劣勢な状況で戦っているのだから

どんな迷信でも希望につながるものであれば

信じてみたくなるのは当然の心の発露だと思う


その日から俺はこの国を歩き回る事にした

地形を地図の上だけでなく

肌で感じて、自分の目で確認したかったのだ

俺の場合戦術を立てるのは主に自分の頭の中でしかない

全てはそれで事足りていた

だが友は違った

どんな時も

自分の目で見て肌で感じてみなければ気が済まないようで

俺は随分と無駄な時間を付き合わされたものだった

少なくとも今まで

自分の頭で描いた戦術で間違いなど一度もなかった

決して実現される事はおろか

目も通してもらえなかった戦術ばかりではあったが

全ての事は俺の想定内で展開していた

友の軍師として呼ばれて以来

ただ一度だけ

友と意見を異にした戦場があった

それは地図には記されていなかった

わずかな隙間を利用した敵軍の無鉄砲とも呼べる

奇襲作戦に備えるべく罠をしかけるべきか否かだった

拮抗し膠着状態となっている状況を打破して

敵の本陣に切り込む作戦下で

罠を仕掛ける時間的余裕などなかった

一時の遅れが命取りになる

ところが、彼はそれを断固実行した

実際、敵の奇襲に合ってその罠が無ければ

全滅を免れなかったのだが

逆にその奇襲にすべてをかけていた敵軍は

その失策によつて戦意を弱めて

形勢はわが軍有利となり遂に勝利を手にした

俺は生まれて初めて自分の間違いに気が付いた

それ以来重要な戦場では必ず

自分の足で歩き肌で感じ取る事にしている

しかし、そのほとんどは無駄足になっていたが

俺のこれは最早癖のようになっている

歩いて感じて、また歩いて

この国の人々と触れ合う事も多くなった

村では痛々しい程の戦火の跡が残っている

戦争になれば、真っ先に民の農地が破壊される

まして、国々が挙ってこの国を落とそうと

何度も戦をしかけているのだから無理もない

村人は王宮の連中より遥かに警戒心を持っているが

それでも打解けるのにさほど時間がかからなかった

この国の人々は常に戦火に見舞われながら

どうしてこんなに開けっぴろげに生きているのだろう?

俺は傭兵の連中が

正規軍の者達より陽気に生きている姿を思い出した

最前線へと追いやられる彼らは

正規兵より死線の近い所で戦っている

文字通り死と背中合わせで生きているのだ

だからこそ、その時その時を精一杯生きているのかもしれない

そして、この国の村人もまた彼ら傭兵に近い感覚で

生きていても不思議ではない

この国の宿業は大きく常に戦が付きまとう

俺は村の有様を垣間見て

何故王宮で農地があるのかを理解した

民が飢餓に陥らない為に

貴族はおろか女王自ら畑仕事をしているのだ

農家の納屋で夜空を見ながら

俺は長い夢でも見ているのではないかと

錯覚を起こすことがしばしばあった

こんな異常な国は見た事が無い

そして自分ほどこの国に似合わない者も居ないだろうと

笑顔が漏れるのを禁じ得ない

俺は戦術において冷酷極まりなく

最も効率的に戦に勝つ戦術を何の躊躇いもなく実行してきた

たとえ、どんな犠牲が発生しようと心を痛めた事はない

友のような心は持ち合わせていないのだ

しかし

この異常な人々の生きざまに触れるうち

その毒気に侵されてきているのも感じてきた

ここの連中を守ってやりたい

こんな気持ちになった事はかつて無かった

いよいよ毒が体中を蝕んでいるのだろう

それにガーゴスの奴だ

あんな気持ちのいい男が居る軍は居心地が良い

それは奴の部下たちも奴に似ていた事もあるだろう

なにせ、上官である奴にため口でズケズケと意見する

ここでは上官は敬うものではなく

あくまでまとめ役に過ぎないように見える

兵士はすべて同列でそれぞれ自分の好き放題を許されている

ところが、一旦戦いになると

その結束の固さに驚かされる

俺は傭兵の中ですら打解ける事は無かったが

奴と奴の部下たちは俺の毒舌にも動じない

元々は他国の兵士ばかりで

それぞれの事情を抱えてここに辿り着いた者達ばかり

只者ではない者達が集まっている

一人ひとりが武将として活躍してもおかしくない粒揃いだ

それだけに戦術会議は熾烈を極める論議が展開して

俺ですら笑ってしまう程の毒舌合戦が繰り広げられている

俺はここ暫く、この居心地のいい場所をどうしたら守れるのか

そんな戦術ばかり考えるようになっていた

どう攻めればこの国を落とせるのかも考えていき

その戦術を悉く打破していく日々を送った

アイデアは尽きる事はない

小さい国とはいえ一回りするのに半月以上かかった

もちろん馬で駆ければもっと早く回れるが

俺は歩いてゆっくりと感じたかったのだ

そして遂に

この国を落とすのに最も恐ろしい戦術に辿り着いた

こんな戦術を思いついても実行するものはいないだろう

そう振り払ってみても

もしそんな作戦で来られたら犠牲どころか

この国は壊滅してしまうだろう

そして

その作戦に対して唯一対抗する作戦が思い当った

それは地形だけでなくあらゆる情報を入手したからだ

かといえ確実な作戦には至らない

殆どを運まかせという戦術的には情けない代物だ

しかし

その運を呼び込むのであれば話は違ってくるだろう

とはいえ、俺が口出しできる立場にはない

つい数か月前まで敵軍の傭兵として

この国を攻めこんで来た俺をそこまで信用してはくれないだろう

俺は密かにガーゴスに戦術を打ち明けたが

流石の奴も笑い飛ばした

「いくらなんでも考え過ぎだ」

それは俺も思うが、この世の中で絶対なんてものは存在しない

「知性のある敵国の軍が、こんな常軌を逸した戦術をするはずはない、第一こんな形で勝ってなんの意味がある」

「意味なんて無いさ、敵が勝つことのみに執着しているなら」

「あり得ない、軍が国を攻める場合利害が必ず存在する、ましてその利となるものすら消して一体何を目的に戦うと言うのだ」

国益のない戦いなど軍隊がするはずはない

俺もそんな明確な事は熟知している

しかし

世の中には常軌を逸した将もいるのだ

俺はかつて一人そんな男と出会った事がある

奴は勝つことに異常に執着していた

その戦術は国益など眼中にないように見えた

あいつは一体何を目指し

何のために戦い続けているのだろう?

奴なら間違いなくこんな恐ろしい戦術を展開してくるだろう

俺は笑いの止まらないガーゴスを何とか説得して

その戦闘に対する準備だけは

してもらう事にした

奴は俺がここまで心配性になっている事に驚いて

何かしら感じたのだろう

それから一月ほどして、俺の危惧が現実のものとなった


****************************************************

色々と事情がありまして

ネットも出来ないありさまでしたが

ようやく落ち着きました

一年近くお休みしましたが

少しずつ更新していこうと思います。

今回は何の進展もありません。。

ペースもゆっくりになりますが

のんびりおつき合いいただけたらと思います。

たけし

アガルケーダ第三話「幸運の天使たち」

俺は辺りを見回した

これだけ手の込んだ策略を企てる奴は

自分の立てた計略がどう成功するか

確認したくない筈はない

当然この聴衆の中に潜んでいる事だろう

或いは、相当の自信家で自分の立てた戦略が

成功すると確信していて

既にほかの事に手を出しているとも考えられるが

人心を掴む策略だけは

何があるかわからない

国民の支持を得られなければ

先には進めないのだから

やはり、ここにその真っ黒な人間は潜んで

事の顛末を見ているに違いない

ふと俺はその真っ黒な人間を引きずり出してやろうと

意地の悪い事を考えてしまった

高々10歳の子供と十代の少女だ

演技者としては天賦の才は窺えるが

与えられた台本と違うアドリブを要求された場合

それを交わす術を体得してはいないだろう

「ひとつ質問がある」

俺はその子供に話しかけてみた

「なんだ、お前か」

面倒臭そうな顔で子供は応えると俺の前まで歩いてきて

俺の前にあるカボチャの積まれている荷台の上に乗りながら

腕を組んで聞いてやるから言ってみろと顔で催促した

「古来星見は、多くの学問に精通して、数限りない経験を積んだものしかなれない、生まれてきて高々10年ほどのお前に星見になれる道理を俺には見つけられない」

それを聞くや子供は大笑いした

「なんだそんなことか」

ほう、与えられた筋書きでない事態にも動じていない

この子供は俺が思っているよりも遥かに頭がいいのか

「その質問に答えるには、まず俺からお前にいくつか質問したい、それに答える事が出来たなら、それがお前に対する答えになるだろう、どうだ答える気はあるか?」

これは明らかに俺に対する挑発だ

論争では質問返しは

無能な人間が苦し紛れにする事だとタブー視されるが

この子供のそれは少し違う

俺がどのように答えるか確信して

問答を挑んで来ているのだ

聞いてきてはいるが俺に選択肢は既にない

「いいだろう」

俺は簡潔に答えたが

一体どんな質問をするのか内心期待感に満ちていた

「お前は戦術に長けた一族の末裔だと聞く、しかしすべての一族がその戦術家としての才に恵まれた訳ではない」

こいつは俺の事を知っているのか?

「俺が見る限りお前は相当の戦術家としての才に恵まれ頭が良い、お前が俺の年にその片鱗が無かったと思うか?」

確かに俺がこいつと同い年くらいの頃には

既に過去の戦術記を読みほしていた

最初は心躍りながら読んでいた記録が

その頃には

それを打ち破る戦術やもっと効率のいい戦略を巡らせていたし

叔父や20歳は年上の従兄弟に助言して

手柄を立てさせていた事などが脳裏に浮かんでは消えた

なので質問に対して首を縦に振ってみせた

「ではお前に問う、戦術のその才は経験によるものか、それともそれ以外だと思うか?」

体験を経験に変えて積み上げてる事によって

人は実力を身に着けていく

そこには先人たちが勝ち取ってきたヒントを体恤して

自分のものにしていく事も含まれる

けれど時代や世の中の動向というものは

まるで生き物のようで

その時その時に感じ取って判断していかなければならない

そこには過去の経験が役に立たない局面も確かに存在する

多くの場合、積み上げられた経験によって一種の勘が養われ

対応していけるものだが

俺の上官は確かに俺以上に経験を積んできた筈だが

それを生かすどころか

まるでものが見えていない事が多かった

「確かに、経験を超えたものも存在する、しかしそれがそのままお前の才気だと言う事にはならない」

俺の言葉に子供はニヤリとした

「その才気とは一体何なのか、それはお前がこの辺境の国に辿り着いた過程で味わってきたのではないのか?」

子供はカボチャの頂上まで登ると仁王立ちして続けた

「俺とお前、同じ位の年の差の上官にお前は苦しめられて来たのではないのか?お前とその上官の違いをお前は何だと見ている?」

俺はすっかり驚いてしまった

その上官は無能者に過ぎないという言葉が最初に浮かんだが

その答えではしっくりとこない

確かに世の中には天より与えられた才が存在する

もちろんそれも磨かなければ光らないのだが

俺は子供の頃から好奇心の塊で

疑問に抱いた事があれば納得する答えが得られるまで

その事を諦める事無く探究してきた

特に戦術に対して以上に興味をしみてしていたと

御守役のディジーは言っていたことがある

そしてそれらがその才を磨いていた事と同義になっていた

「俺は人間としては欠陥品で、当然かかるはずのブレーキがとしても緩い、それが奴らと俺の違いだと思う」

その言葉を聞いて子供は大笑いした

「俺もお前と同じ欠陥品の類だ」

俺にはその笑いの中にかき消された子供の涙が感じられる

こいつもその若さで理解されない孤独を感じてきたというのか

子供の頬に一筋流れた涙の理由を知る者は

恐らくいないだろう

いや大笑いにかき消されて

奴が涙を流した事に気づきもしない者がほとんどだろう

「欠陥品には、常人では見えないものが見える時がある、だから俺は自分が見えているものを語っているにすぎないのだ」

その言葉の響きは

俺の心の中に先程まで色濃く居座っていた

真っ黒い人の姿を幻のように消していく

こいつは自分の言葉を語っているのだ

当然この年若き皇女様も自分の生き様でここにいる

子供の星見に、自ら畑仕事をする十代の女王様

まるでおとぎ話を見ているようだが

それは間違いなく俺の目の前に存在している

しかも

今までどの国もこの幼稚な国に勝つことは出来なかったのだ

俺は笑いがこみあげて

遂に大笑いが止まらなくなった

「癪に障るがこいつは俺と同類だという事が証明された、アガルケーダも噂だけではないようだ」

そういうとまた大笑いした

つられてここにいる連中の笑い声が城中に響き

再び子供は主導権を取り戻していく

俺はテリイーズという子供の名前を深く心に刻み込んだ

こんな辺境の小国にこれ程の人物がいるのか

世界中の猛者たちや有能な人材がこの国の要になっていると

ガーゴスは言っていた

だとしたら、常勝無敗という名は不可能ではない

「面白い」と俺は心で叫んだ

俺の中のゲイルーマ一族の血が騒ぐのを感じる

しかし、それでもこの国の背負っている宿業は大きい

いずれどこかの国に滅ぼされてしまう事は間違いない

それには大きな理由がある

突然ガーゴスが数人の兵士を引き連れて現れた

数人は怪我をしていて争いをしてきたようだ

「大丈夫ですか?ガーゴス将軍」

女王の心地よい声が響いた

「少しネズミが騒いでいたので片づけてきました」

どうやらバダルード国軍の偵察部隊と一戦交えて来たようだ

今この国に侵入しているのは

その国で俺も数日前まではそこの傭兵をしていた

しかし、奴が将軍だとはな

俺は将軍の屋敷とは思えない

奴の散らかった小さな屋敷を思い出して

笑いを堪えるのに一苦労した

そんな俺を一瞥して咳払いをしてから

ガーゴス将軍は星見の子供に一礼をすると

「バダルードの鼠などいずれ退散する、それよりいよいよ赤い炎がこのバスコン国へやって来る」

子供の星見はカボチャの上で大きく通る声を響かせた

テリイーズが言っている赤い炎は

バダルード国軍ではないようだ

では一体どこの国の軍隊なのか

今の俺には見当もつかない

それを聞くやガーゴスはキリッとして剣を抜き掲げた

すると歓声が湧き起った

英雄とは不敗の信仰心を人々に植え付けた者だと

誰かが言っていたが

この国では奴がその英雄なのだとその時初めて認識した

もしこの星見がいち早く敵国の進軍を予知して

対策を練ってから

罠を仕掛けて戦いに挑んでいるとしたら

俺は鳥肌が立つのを感じた

それは朝の肌寒い風のせいではない

更にその後、ガーゴスの指揮のもと

奇妙な作戦の準備を垣間見ることになった

「いかに厳しい戦いになろうとも、我らには幸運の天使が四人もいる」

ガーゴスが手を差し伸べると

それに応えるように10歳前後の四人の子供が姿を現す

子供たちは魔法使い独特の衣装を身に纏っていた

色々な国を渡り歩いて来たが

魔法使いの数は少なくて

まして正式な魔法着にお目にかかる事は数えるしかなかった

それだけに印象に残っていてよく覚えている

魔法が戦に用いられる事はほとんどない

けれど俺はその事に以前から疑問を抱いていた

魔法の致命的な欠点は理解しているが

それを補う事の出来る戦略を練れば戦術的にも

充分利用できると考えていたから

しかし既にこの国はそれを実践しているのだろうか

それにしても、こんな子供の繰り出す魔法に

どれだけの威力を期待できるだろう?

或いは、年若くてもテリイーズと等しい逸材かも知れない

俺はまだまだ、バスコン国が未知数である事を自覚した。




***********************************************


遅くなりました

最近多忙が続き、更新が出来ませんでした。

更に来月の中ごろまで

ネットも出来ない状態になりそうです・・・・

更に遅くなります

頭の中には既に

三年間の沈黙を破りユウリが動き出しているのですが

事情は中々そこまで描かせてはくれないようです。。

今日はほんの少し時間が取れましたので

急いで書きました・・・

間違いなどは来月直します。。


たけし

アガルケーダ第二話「狂星~接触その2~」

城を出てから

出会う人々は俺の事を知っているようだが

何の警戒心も抱いた様子もなく

まるで昔からの知り合いのように話しかけてきた

ここにいる連中の腹の中がまるで読めない

城を出ると直ぐに畑が広がっている

ここはまだ城の領地の中のはずだ

こんなところに畑があるのか

よく見ると平民に混ざって王族のような衣服の者が

一緒に耕している

軍服を着た者も居て

まるで農民の手伝いをしているように見える

「軍人はおろか、王族や貴族も農民の手伝いをしているのか?」

俺は相当体を鍛えていて気骨が体からにじみ出ている

軍人らしい男に話しかけた

暫くの間その男は俺を見つめていたが

突然斬られるような殺気を感じて身構えた

今彼の手に持っている鍬を頭に振り降ろされたら

一溜まりもない

戦う力などまだないのだ

こんな所で剣ではなく鍬で殺されたとあれば

友に顔向けが出来ない

だが戦って死ぬのならまだマシだ

そう思いたち

俺はその男の懐に飛び込んで胸元の短剣を奪取し

フラつく体を気力で抑えて短剣を構えた

もちろん勝てる気がしない

しかし次の瞬間その男は大笑いした

「お前は一体何を恐れているのだ?」

「お前がその鍬で俺を斬ろうという殺気を感じたからな」

「俺が?」

きょとんとした顔をしてからもう一度大笑いする

「だとしたら、それはお前の殺気がこの鍬に映ったのだろう」

なんとも爽やかな声に俺は驚き

それから男は鍬を放り投げた

俺は空を見上げて深呼吸するともう一度男を見た

確かに俺は自分の影に脅えていたようだ

一瞬にして男からの殺気は消えていく

「違いないようだ」

俺は素直に認めると短剣を差し出した

「その短剣はお前にやろう、俺からその体でぶんどった記念にな」

男は逆に鞘を俺に渡した

「この短剣で俺がお前に襲い掛かるとは思わないのか?」

男はまた大笑いをする

「そんな死にかけている男にやられるものか」

俺は久々に気持ちの良い男と出会えたようだ

こいつは歯に衣着せず自分の思ったまま口にするタイプのようだ

それは亡き友に似ていた

「しかし軍人であるお前が農民の手伝いか?、お前だけではなく貴族まで手伝っている、何より城内に農地とはな」

「ここは小国で人手も足りない、貴族はおろか王族でも農民を手伝わなければ国は立ち行かないんだ」

「ほう」

そんなに貧しい国だとは思わなかった

「しかし列強国がそんな貧しい国に一度も勝てないなんて、不思議だ」

「窮鼠猫を噛むってやつだ、ぎりぎりで戦っている、今まで勝ってきたのが不思議なくらいだ」

「自国の軍力をそこまで批評するとは笑わせる」

「いや、それは事実だ、ただこの国を守りたいその一念でみんな戦っている、それに・・・」

男は城を見上げた

「お前のような他国の軍人が今ではこの国の主力部隊となっている、この俺もその一人だ」

「ほう、そんなに良い国かここは」

俺の問いかけに男はただ城を見つめたまま

「あぁ」とだけ短く答えた

「お前の噂は聞いている、俺もお前のように国々を渡り歩いてきた、そしてここに辿り着いたんだ、ここは貴族も王族も関係なくみんながまるで家族のように暮らしている、王族が農民を手伝うのは貧しいからだけじゃない、この国の方針なんだ」

「そんな子供じみた国が存在するものか」

俺は懐疑的になるしかなかった

いやこいつらはみんな素人の寄せ集めだとしたら

外交は物資は他国とのかかわりなく鎖国状態で

生きていける国など今の時代にはあり得ない

そうなればこれだけお人好しの国など

カモにされるのは目に見えている

だがしかし、こいつのように他国の実力者が

こんな幼稚な世界に力を貸しているとしたら

確かに不可能な事ではない

俺はこのような世界が素晴らしいとは思わない

むしろ理路整然とした世界こそ理想とする俺にとっては

幼稚過ぎて笑えてくる

「恐らく極貧の小国だから出来る事だろう、国がでかくなればまずこんな雑多な体制では成り立たない」

俺の毒舌はまた顔を出した

しかし目の前の男は大笑いした

「まったくお前の言う通りだ、しかし大きくしなければ今のままでいられる」

俺は自分の耳を疑った

今までそんな発想をした事が無い

今ではどの国も天下取りに乗り出している

それに巻き込まれないはずはないのだ

「そんな事があり得ると思っているのか?」

「お前の言う通りだ、俺は戦場を駆け巡りながら世界の実情を知っているからここの貴族や農民たちのように能天気に信じているわけではない、むしろここは俺にとって絶好の死に場所だと思っている」

最初から死に場所を求めている人間か

盲目的に出来もしない夢を実現しようと生きている人間より

こんな悲観的な奴の方が遥かにマシに思える

だが俺の趣味ではない

「最初から諦めて死に場所を求めて生きるなどバカらしい、おれならこの小国から天下を狙う」

 男はまた大笑いした

「お前は本気で言っているのか?こんな小国に何ができる、今までは奇跡的に勝ってきたがいつ滅ぼされてもおかしくはない、そんな国だここは」

今度は俺が笑う番だった

「これでは立場が逆転している、まるで俺がこの国の住人でお前がよそ者だ」

その後直ぐに、顔を見合わせて二人で大笑いした

こんな気持ちのいい論争をしたのは

友がまだ投獄される前の事だったから

かれこれ5年ぶりだろうか・・・・

俺はこいつの家に招かれ酒を酌み交わした

王宮の絢爛豪華な酒席よりも

気の置けない奴と飲む酒は格別に俺の性に合っている

「しかし狭苦しい上に見事なまでの散らかり放題だな」

「一人暮らしの軍人の部屋にお前は一体何を期待してやがる」

俺たちは互いに相手が自分とウマが合う事を認識した

王宮の連中はどこの国も大差はなかった

みんな口から出る言葉と、腹の底のどす黒い思いは

この大地に動き回る蟻と夜空の星までの開きがあった

俺は自分の腹の底の言葉を

何のためらいもなくぶつけてくる奴が好きのようだ

このような人間は俺の毒舌などものともしない

俺は初めて人間と話をしている気持ちになれる

ジークとも同じ気持ちになれた

5年ぶりに俺は久々、人間と再会した気持ちになり

毒舌合戦を夜通し繰り広げた

といっても途中から酒が回って

二人とも自分が何を言っているのかわからなくなっていたと思う

翌日俺は子供に頭を踏まれて目が覚めた

「一体何事だっっ」

飛び起きた俺に驚いて子供は振り向いた

「俺の歩く場所を遮るように寝るとは不埒な奴目っっ」

10歳くらいだろうか、その生意気な子供は俺を睨んでいた

しかしその言い草があまりにも度を越して常識から逸脱していたので

俺は逆に面白くなって大笑いしてしまった

「なっなんだ?何がおかしい」

怪訝な顔でその子供は俺を見ていたが

直ぐに飽きたのかきょろきょろと誰かを探し始めた

「ガーゴスの奴一体どこに行きやがった」

独り言のようにつぶやくとその子供はそのま部屋を出て行った

そういえば互いに名乗らず酔い潰れてしまったようだ

恐らくあの子供が探していたのはここの主である

昨日酒を酌み交わした軍人に違いない

奴の名はガーゴスというのか

俺も辺りを見回したがそのガーゴスの気配すら感じなかった

ここにいても仕方がないので部屋を後にした

不思議な事に体調はかなり良くなっている

薬で解毒されているとはいえ、昨日までフラつていたし

その上深酒で酔い潰れたにも関わらず

逆に体調を良くしているとは、こんな事もあるものだろうか

昨日まで杖にしていた旗も今では部屋のオブジャになっている

俺は短剣を懐に収めて歩き出した

早朝でようやく日が顔を出し始めた頃だったので

未だ朝のきりが立ち込めている城内は

見渡す限りの農地が広がっていた

ここは本当に王宮の領内なのか

農地を囲むように建てられた城壁には

幾何学的な装飾が施されていて

実っている野菜たちとのギャップで不思議な雰囲気を漂わせていた

俺はいつも未明には起きて戦術を学び思索に耽る癖があった

意味もない事だが戦のシミュレーションを頭の中で

行く通りも展開してみてはさらにそれを打ち破る戦術を練っていた

このイタチゴッコを頭で何度も繰り返す中で

気が付けば夜になっている事も少なくない

俺はまったく意味のない事だがこの国を攻めるとすれば

どう軍を動かし、それから守るとすればどう立ち向かうかを

シミュレーションしていた

強いてしているのではない

これは俺の生来の癖なのだ

恐らくゲイルーマ一族の血が色濃く俺の心を突き動かしている

遺伝というものは確かに存在しているようで

ここ二百年現れなかった戦術家としての才を俺は受け継いでいた

しかし一度もそれを発揮できないまま

ろくでもない人生を送ってきて

こんな幼稚で不可解な国に辿り着いた

ジークの奴め今の俺のざまを見てあの世で大笑いしてやがるだろう

名を貰う時、大口をたたきながら結果を出せず

今にも崩れてしまいそうな国の

常識というものを認識しない夢想家の住人達に助けられている

きちんと現実を認識できる奴は死に場所を求めている軍事だ

俺は霧が晴れ、ようやく友と同じ目の色が顔を出した空を

睨めつけるように見つめた

ガーゴスの言う通りだ

この国は恐らくそう長くは持たないだろう

もしあの時、部下の指示を得ていたら

俺がこの国を滅ぼしていた事は間違いない

しかし俺はその部下に毒矢で殺されかけたのだ

本来は敵国の城を目前に後ろから毒矢でやられる筈はない

罠にはまって後ろに軍を忍ばせているとも考えられるが

あの時、奴らは後ろに逃げて行った

毒矢が後ろから放たれている限り敵は後ろにいるはずだから

当然部下たちは反射的に左右に逃げたはずだ

しかし俺は落馬してから奴らが矢が放たれた方へ逃げていくのを

耳と体で感じていた

ここまで考えれば俺は自分の部下に殺されかけたのだと自覚できる

アガルケーダの名を恐れての事だろうけれど

ここまで人望を得られないのは

最早その原因が自分以外に見つけられない

ジークの言う通りだ

全ての原因は俺から生まれている

ただ運が悪かった訳ではないのだ

人を見下し寄せ付けないこの歪んだ心が

仲間を生み出す道を閉ざし

孤独の中で人望も支持もえられないまま敗戦を繰り返してきた

どんなに打解けようとしても

持って生まれたこの歪な性格はどうにも出来ない

口から出るのは毒ばかりで

人は毒を恐れて俺に近づきもしなくなる

ジークの奴め仲間を信じろとぬかしやがったが

お前以外に信じるに値する人間など何処にもいなかった

そう心の中で叫んだ時ガーゴスの顔がチラリと浮かんだ

確かにあいつは信じられるかも知れない

死に場所を求めている奴が人を悪用する事はまずないだろうから

小気味よい心地で再び歩き出すと

人だかりを見つけた

いや人が一つの場所に少しずつ集まっている感じだ

一体何があるのだろうか?

俺は興味を感じるままその人を寄せ付けている原因へと足を進めた

すると、俺の顔を踏みつけて非常識を当然の事のように言ってのけた

不敵な子供が大声で叫んでいた

みれば、その子供の言葉をみんなが真剣に聞いている

貴族も軍人も村人も王族も無差別に少年を囲んでいた

こんな光景をどこの国でも見た事が無い

しかも彼らの中心にいるのは10歳前後の子供だ

一体ここは何なんだ?俺の理解の範疇を超えている

「収穫祭には赤い星がこの地に降り立つ、そしてここは赤い炎に包まれてしまうだろう」

少年はその容貌に似つかわしくない達観した語り口調で話を続けた

「その炎を消すには、藁と水と風を吹かせる必要がある」

「テリイーズ様、我らにその風を吹かせる事は出来るでしょうか?」

子供の言葉に応えるかのように心地よい声を響かせたのは

見忘れるはずはないこの国の女王だった

見ると手が土で汚れていた

女王自ら畑仕事でもしているのだろうか?

「可能性はある、しかしそのためには多くの血を大地に捧げなければならない」

「その血の代価を減らす事はできないでしょうか?」

「お前は値切るつもりか?大地は血を欲していてそれが満たされない限り風が吹くことはない」

女王の顔は暗い翳りを見せた

しかし少女とはいえこの国の女王を

お前呼ばわりする子供がいて

それを誰一人咎める者がいないとは

ますます、俺は迷宮の中に迷い込んでいく

「しかし落胆する事はない、風が吹けば奴らは自分の炎で自らを焼き尽くす事になるであろう」

或いはこれは三文芝居とも考えられる

実は相当の参謀がいて裏で女王と子供に一芝居打たせている

そう考えればこの不可思議な情景も頷ける

昔から政(まつりごと)は宗教や占いを利用して人心を掴んできた

国民の支持を得られなければどんなに強固な国力を持っていても

勝ち戦を見る事は出来ない

それは俺が一番良く知っている

なんとも卑怯なやり口であろうとも

結果的に国を救えるなら

使い古されたゲゼリズム(マキャベリズム)と侮られても

これを行使するのは当然だろう

俺は冷ややかに、彼らの芝居を見物してみる事にした

みるみるここにいる連中は、この芝居に乗せられて高揚していく

「もし俺の血が大地に飲み込まれようとも、俺は戦う」

一人の農夫らしき男が叫ぶと

王族や軍人たちが、挙って同じような決意を表明した

農夫にこれほど力強い事を言われては

自分達の武勇を誇示しない訳にはいかないだろう

その連鎖は見事に広がり城中に伝染していった

見事だ

これほどまでに人心を掴む現場を俺は見た事が無い

「人間というものは、自己正当化できる大義名分に弱いものだな」

俺はこんな綺麗ごとを恥しげもなく語る彼らよりも

この筋書きを考えた真っ黒な人間に興味を抱いた

俺にこのどす黒い芝居が出来たなら

今までのような敗戦の苦渋を味わう事はなかったのではないか

反面俺の性格では先ずできない事も自覚した

俺は戦術においては手段を択ばない所はあるけれど

生き方においては、自分の性格に外れた事は出来ない

このようなやり口を嫌悪してしまう

結局人間を道具として利用しているだけだ

俺はもちろん、戦術的に部下を利用する事はあるし

毒舌で人を傷つけたりもするけれど

人間を道具として見たことはない

「胸糞の悪い奴らだ」

こんな言葉を響かせるから

人は俺のもとを近づかなくなるのだ

それは自覚しているだけど

思った事を口にしてしまうのだから仕方がない

ただ俺は感情に左右されて真実を見逃してしまう愚かな

人間の性質は心得ているつもりだ

だから秋には敵国が侵軍してくる事は見逃さなかった

それがどんなルートで攻めてくるのか

それを迎え撃つ策はあるのかをまた考えてしまう

この国が滅ぼうとも俺には関係ない

しかし、ここにいては巻き添えで一網打尽だ

この国と運命を共にするのはバカらしい

この時はまだ、俺はこの国を逃亡する事だけを考えていた



*****************************************************


早くから八割は書けていたのですが

落ちついでまとめる時間が取れず遅くなってしまいました。

今回自分らしいくない表現をしているため

そうとうてこずっております

試みた事のない表現で実力はなく

読みにくい所は許して下さい。。。


たけし