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[Japan,HipHop]
01.前夜
02.教室の隅ホックを閉めた君へ
03.元ファン
04.温度差
05.拝啓アルバイト様
06.くらし
07.命題
08.インストゥルメンタル
09.這うて歌う応援歌
10.果て
11.買い物袋
12.夢をあきらめて現実を生きます
13.スクラッチ
14.慟哭
神戸在住のラッパー神門のアルバムが素晴らしいです。製作に専念するためライブ活動を休止し日常と現実に真正面から向き合い、言葉とアイデアを駆使して作り上げたクリエイティブなアルバムになっています。
観音クリエイションの素晴らしいトラックに乗せられる内省的なラップ。日本語の新しい表現を模索するような言葉遊びと人柄のにじみ出る歌詞。配信なしMVなし試聴なし。音楽の聞き方なんてそれぞれの自由ですが、このアルバムは34Pにも及ぶ歌詞カードを目で追いながら聞いてもらいたいですね。
言葉だけの作品や彼の人間性溢れるメモ、あえて言葉を抜かしたり違う言葉で記載していたりといった仕掛けがたくさん隠れています。情報量が多いので短編集のように少しずつ聞き進めるのも良いかもしれません。
自分でそういう仕掛けに気づく楽しさもあるので、このアルバムについて書くということはどこか小説のネタバレを書くことに近いように感じます。とは言え何の情報もなしに手に取るのは難しいと思うのでちょっとだけネタバレを。
サビなしのピアノループで進む「教室の隅ホックを閉めた君へ」は真っ当に生きることしか出来ない真面目くんへのエール。どこかMOROHA「三文銭」でのMCを思い出します。
曲名通り昔ファンでいてくれた人への率直な気持ちを吐露する「元ファン」。何のメッセージもなくある一日を描写する「くらし」。普段は綺麗な言葉を多用するスタイルだからこそ鋭く刺さる攻撃的な「インストゥルメンタル」。愛する人との日常を描きながらやがて来る別れを感じさせる「買い物袋」。
そして12分にも及ぶライブ活動休止後のリアルな現実を綴る「夢をあきらめて現実を生きます」がクライマックス。短いストーリーと決意に満ちた12分は一切歌詞から目が離せません。最後は飲み会で後輩の愚痴をこぼしながら自らの素直な気持ちを話すような「慟哭」にてアルバムを締めます。
それぞれの曲で明確にテーマを分け、日本語での表現を突き詰めたラップとフィジカルでリリースする意味が詰まった素晴らしい作品集です。11月にはビートからインスピレーションを受けて作詞した、音先の曲をまとめたアルバム「色彩」をリリースするそうです楽しみ。
動画がないのでどうすれば伝わるか悩んだんですが、個人的に良いなと思った歌詞をいくつか載せておきます。どの曲の歌詞かは書いていないので、聞きながら見つけていただければ。
"俺が韻を踏まないタイプ? そう認識する奴ぁ大体 語尾上げたフロウじゃなきゃライムにすら気づかないんかい?
「声」で識別 それは最低限のオリジナル 「歌詞」で分かるそれが必要なオリジナル"
"バンドのことは忘れてもいいから 思い出してくれたら嬉しいんだが
その曲だけは愛してあげてよ それは昔のあなた自身だ"
"あなたが俺を忘れようと 俺があなたを忘れようと
あなたにもらった励ましで こっちゃ一生くらいは乗り切れるのです"
"こうして二人で歩く帰り道 いつしか愛しく思い出すでしょう
過去が思い出に変わるとしたら 悲しみが訪れた後でしょう"
"リズムと共に近くなる歩幅 どっちか一人いなくなるのなら
日々の意味を問うことの意味を問う 息のある君と日々を生きよう"
"全身で傷つけ 若い内に苦しめ 思っくそ悩め 何一つ悟んな
「学生時代」なんていってやるよ「ただの過去」だ 子供なのに大人演じ違わず不格好だ"
"生きていると転ぶから 生きていると丸くなる それぞれに歪だった形 みんな似てくる
想像できるか? 何年後かに君は 彼ら達と肩を並べ乾杯をするんだ"