-あらすじ-
人間と吸血鬼が、昼と夜を分け合う世界。山森頼雅は両親が営むコンビニを手伝う高校生。夕方を迎えると毎日、自分と同じ蓮大附属に通う少女が紅茶を買っていく。それを冷蔵庫の奥から確認するのが彼の日課になっていた。
そんなある日、その少女、冴原綾萌と出会い、吸血鬼も自分たちと同じ、いわゆる普通の高校生なのだと知っていく。普通に出会い、普通に惹かれ合う二人だが、夜の中で寄せ合う想いが彼らを悩ませていく……。
人間と吸血鬼が共存する世界の、普通の人間と普通の吸血鬼の恋愛小説。
太陽の下に出られない吸血鬼は陽が沈んでいる間に学校や会社へと行く。また人間の血を吸うことが法律で禁止されているため確執なく共存しているが、吸血鬼は本能的に血を吸いたくなる衝動に襲われるため血液パックを薬局で購入しその衝動を抑えている。
そういった完成された設定を踏まえた上で普通の恋愛小説が描かれます。
コンビニのウォークイン冷蔵庫の裏からいつも見ていた吸血鬼の女の子。しかし吸血鬼は暗闇もよく見えるためいつも冷蔵庫の裏側から見られているのに気づいていた。そして昼と夜のちょっとした事件を挟みつつお互いの距離が近づいていく。しかしお互い感じている"好き"の先の感情(本能)にちょっとしたずれがあり、それが2人を悩ませる。終盤に近づくにつれそのずれが明確になっていき、どういう締め方にするのかハラハラさせられ一気に読んでしまいました。ラストも普通の恋愛小説とはちょっと違う読後感です。
ラノベらしいぶっ飛んだ展開やコメディ要素は薄く、それよりも2人の細やかな心理描写に重きを置いて描かれています。特に好きだからこそ相手に対して過大評価してしまうところなどはうまく描かれていました。物語的にはラノベらしさは薄くてもキャラ立ちした登場人物、そしてイラストレータ切符による挿絵が本当にかわいい。思春期だったら確実に二次元に目覚めてましたね。
ラノベが苦手という方でもちょっと変わった恋愛小説として楽しめるのではないかと思います。
こういう学園ものや恋愛ものがやっぱり読んでて楽しいのは、何かしらやり残したことがあってそれを創作の世界の中でやり直してもらっているような感覚になるからなのかなと思ったりします。まぁそれは読者も作者も同じで、それこそ創作の存在する意義のひとつだったりするのかなとか。よくわかんないですね、ここらへんにしときます。
