CHIKAです。

伊勢地にて、通夜番。
ロウソクとお線香の火を灯し続ける
夜のお役目。

ヨルノチカラ作動しないかな。
お義父さん、いるよね
声帯を使わずに話しているだろう声は
私には聞こえてこない。


なんとなく、白い布を外しておく。
ちかちゃん、コレ取ってくれって
お義父さんが言ってる気がして。


お義父さんは
ドクターから最短でも3ヶ月入院って
食べないとエネルギーが不足してるって
この数日でなんでもいいから
食べれられるようにしないと
先の退院は望めない、って言われた。


あんなに食べられなかったのに
食べる気もなかったのに
聞いてから果敢だった。


私が付き添いに昼、病室に入ったら
お義父さんは
ベッドの背もたれを立てて
気を失いかけていた。

ゼエゼエしながら
震える右手から箸を離さず
左手でしっかり器を握ってた。

肺気腫を患って、肺炎を起こして
酸素チューブで息をして
点滴の針をつけて
背もたれの角度があればあるほど
肺と心臓に負担かかって苦しいのに。



ふっと目を開けると
口にご飯を運ぶ。



命がけで食べてた。



涙が出た。


お義父さんは、家に帰りたいんだ。
何よりも一番の願いは
家に帰ることなんだ。


ひとくち運ぶのに
エネルギーを絞り出し
口の回りも首周りにも
あちこちにこぼして。
酸素が行き渡らない震える手。

おとうさん、ありがとう!

言うとチラリと私を見た。

凄い!凄いよ、お義父さん
ちょっと倒すね、ゆっくりゆっくり。


薄眼を開けたお義父さんから
箸を取ってお手伝いした。
既に3割くらい食べてあった!
昨日は手付かずだったのに。
嫌いな人参も、食べてた。


お義父さん、
さっきね、お義父さんの部屋も
掃除してきたからね!

お義父さんの目にグッとチカラが入った。



あの勇姿を
家族みんなに見せたかった。

お義父さんは、凄いファイターだった。


命がけだった。


お義父さんの願いは
半分叶った。


家に帰る。


帰ったけどさ。
お義父さんのせっかち。


お義父さん、今なら目開けて 
面白いこと言っても誰もビックリしないよ。
超現実主義の息子はウトウトしてるから。
今なら私とお義父さんだけだから
ガイア弾いてもいいよ。
ねぇ、お義父さんってば。



あの日、病院に走ってくるのに
初めて一人で伊勢湾岸道路を来れたよ。
凄い空だったの。

あれからずっと
エンジェルナンバーばっかり。

ねぇ。
今の音、お義父さん?ネズミ?