嵐の勿忘草 -7ページ目

嵐の勿忘草

忘れたくないけど忘れてしまうこと
忘れたいけど忘れられないことでも

ショウがプレゼントしてくれた、カフェオレボウル。

すっかり手に馴染んで、僕の朝のルーティンに欠かせないものになった。

だから僕もショウが一緒に使えるようにカフェオレボウルを探してる。

 

だけど・・ショウの誕生日までにはこれだ!ってものが見つからなくて。

誕生日のプレゼントにはできなかった。

急ぐものでもないから、ホントに気に入るものが見つかるまで。

根気よく探そうと思ってたある日。

新しいキッチン雑貨のお店が散歩コースにできていることに気付いた。

 

どういうわけだか?素通りできなくて。

特に買わなきゃいけないものもないのに。

僕は入り口のドアを開けて入っていた。

キョロっと店内を見渡すまでもなく。

 

真っ先に目に入ったのが赤いカフェオレボウルだった。

 

木製の棚が並ぶ中。

店内の奥近い壁際の棚に並んでいた。

濃い赤の中にホンの少しの青みが混ざってる。

 

それはショウがバーサーカーになってしまった時の炎の色に似ていた。

一目でこれだ、って思った。

これはショウが使うためにここに来た。

僕はこのボウルに呼ばれたんだ、って思った。

 

手に持ってみると手の中に収まりのいいサイズ。

僕の青いボウルと同じくらいの大きさ。

きっとショウの手にピッタリ合うと思う。

それは推測なんかじゃなく、確信だった。

 

迷うことなくレジに持っていった。

プレゼント用の包装してもらって。

 

添えるカードには

"To My Eternal Dearest"

 

 

僕がカフェオレボウルを使う時に感じる愛おしさを。

ショウもこのボウルで感じてくれるといいな。

そんなことを考えながら、バッグの底に隠すように入れた。

 

いつ渡そうかな?

渡したらショウはどんな顔するだろう?

喜んでくれるかな?

 

夕飯の後、ゆっくりしてる時に渡そうかな?

そうしたら、明日の朝、一緒にカフェオレを飲むときに使えるよね。

 

なんか久しぶりだった。

こんな気持ちが浮かれてる感じ。

ショウのことを考えるのが、こんなに嬉しいってこと。

なんか忘れてた気がする。

 

 

散歩から帰った僕はそのまま浮かれてたんだろう。

ショウが訝しげな顔をしてることに気付かなかった。