Westfield Makotoのブログ

Westfield Makotoのブログ

こんにちは!
活動はTwitterがメインですが、ブログもやってます。
よろしくお願いします。

Amebaでブログを始めよう!

2021年にmonogataryに投稿した物語です。

お題:ふしぎなともだち

 

『うちゅう人が 出た』

 

 ぼくには、スケッチくんと いう、えが じょうずで おもしろい ともだちが います。スケッチくんは こんな 人です。

●名まえ:スケッチくん。

 ぼくと おなじ 一年二くみです。

●とくちょう:ぼうしを かぶって いて からだが にじのように きれい。

 おなかと せ中:えのぐで できて いる。

 手と 足:ふでや いろえんぴつで できて いる。

 おしり:けしゴムで できて いる。

●とくいな こと:スケッチ。

 ぼくたちが たのむと、しゃしんのように ほんものそっくりの えを、十を かぞえる あいだに かいて くれます。

 たんにんの 林先生の えを かいた ときは、スケッチくんは、えの うしろに かくれて 林先生の はなしかたの まねを します。そっくりなので、ぼくたちは 大わらいします。

●にがてな こと:しっぱい。

 えを かきまちがえたり、十を かぞえる あいだに かきおわらなかったり すると、とても あわてます。そして、しっぱいを かくす ため、えを おしりの けしゴムで けそうと します。

 ぼくたちは、スケッチくんが おしりの けしゴムを つかわないように、気を つけて います。えを たのむ とき、どんな えなのかを わかりやすく はなして、スケッチくんが かきまちがえないように します。じかんが かかる えの ときは、うたを うたうように、コーラスを 入れたり、ダンスを 入れたりして、ゆっくり 十を かぞえます。

 

 一年二くみに いい ことが あったので おはなしします。

 ぜんこくの 小学校から えらばれた 一年生が 日本人うちゅうひこうしの 田中さんと おはなしできる ことに なりました。インターネットで うちゅうと 小学校とを つないで おはなしを するのです。その ようすは、テレビで ほうそうされます。 林先生が もうしこむと、ラッキーな ことに、一年二くみが えらばれたのです。

 ぼくたちは いちばん、さいごに しつもんを します。それなのに、はじまる まえから ドキドキして いました。

 林先生は、ぼくたちよりも ドキドキして いました。その ため、ぼくたちの じゅんばんが もう すぐ はじまる ときに なって、「きんちょうして トイレに いきたく なりました。もう がまんできません。」と いって、きょうしつを 出て いって しまいました。

 テレビの アナウンサーも、カメラマンも「林先生が いないので こまった こまった。」と いって います。

 ぼくは、スケッチくんに こう いいました。

ぼく:「いそいで、林先生の えを かいて。」

スケッチくん:「うん、わかった。」

 スケッチくんが、林先生の えを かきました。

ぼく:「カメラマンさん、スケッチくんが かいた えを 林先生の かわりに うつして ください。」

カメラマン:「よし、やって みよう。」

 インターネットが つながって、田中さんとの おはなしが はじまりました。

 アナウンサーさんが、田中さんに いいました。

アナウンサー:「はじめに たんにんの 林先生を しょうかいします。」

 カメラマンさんが、スケッチくんが かいた えを うつしました。 スケッチくんは えの うしろに かくれて、林先生の まねを しました。

スケッチくん:「こんにちは。ぼくが、たんにんの 林先生です。よろしく おねがいします。」

田中さん:「こんにちは。田中です。あれ おかしいな。まわりは いろが ついているのに、林先生だけ、かおも からだも 白と くろだけで、まるで ジャイアントパンダみたいですよ。」

 スケッチくんは、いろを ぬりわすれて いたのです。スケッチくんは、しっぱいしたと おもって、おしりの けしゴムを つかいそうに なりました。このままでは スケッチくんの おしりが テレビに うつって しまいます。

 ぼくは、カメラの まえに 立って えを かくしました。

ぼく:「田中さん、すみませんが、十を かぞえる あいだ、まって いて ください。」

 そして、ぼくたちは、ダンスを おどりながら、十を かぞえました。カメラマンさんが、その ようすを うつして くれました。十を かぞえる あいだに、スケッチくんは いろを ぬりおわりました。

 カメラマンさんが スケッチくんの えを うつしました。

田中さん:「わあ、林先生が、カラーに なって、かっこよく なりました。みなさんの ダンスも すばらしかったです。」

 そう いって、田中さんは はく手を して くれました。林先生が いない ことは ばれませんでした。

 ぼくたちは、田中さんに しつもんを しました。

ぼくたち:「うちゅう人は いると おもいますか?」

田中さん:「見た ことは ありませんが、ぼくは、うちゅう人は いると おもいますよ。」

 いちばん ききたかった うちゅう人の ことが きけました。十を かぞえる ダンスに じかんが かかったので、たくさんの しつもんは できませんでしたが、ぼくたちの しつもんは ぶじに おわりました。

 

 すべての おはなしが おわりました。ほかの 小学校の 一年生が じゅんばんに あいさつを した あと、もう 一ど ぼくたちも あいさつを して、テレビほうそうは おわります。

 さいごに、ぼくたちが テレビに うつって いる ときに、トイレに いって いた 林先生が、「おそくなって ごめんなさい。」と いいながら きょうしつに 入って きました。そして、スケッチくんが かいた 林先生の えの となりに ならびました。

 田中さんが おどろきました。

田中さん:「ひゃーっ、林先生が 二人 いる!」

 スケッチくんは ぜんぜん わるく ないのに、田中さんを おどろかせて しまったので、じぶんが しっぱいしたと おもって、おしりの けしゴムを つかいそうに なりました。このままでは スケッチくんの おしりが テレビに うつって しまいます。

 ぼくは、スケッチくんの おしりを まもろうと おもって、こう いいました。

ぼく:「まえから いる 林先生は ほんものです。あとから 入って きた 林先生は うちゅう人で にせものです。」

 そこで、テレビほうそうが おわりました。

「テレビに うちゅう人が 出た!」

 たくさんの 人が そう いいました。日本だけで なく、せかいじゅうが 大さわぎに なりました。

 

(おわり)

 

2021年にmonogataryに投稿した物語です。

お題:ふしぎなともだち

 

「かくれんぼで アッカンベー」

 

 ぼくには けらけらくんと いう ともだちが います。小学校に 入る まえからの ともだちで、いちばんの なかよしです。きょうは、けらけらくんの ぼうしの ことで、たいせつな  はなしあいを して います。はなして いるのは この 四人です。

●ぼく。名まえは 上山空。一年二くみ。

●けらけらくん。 一年二くみ。

 大きな ぼうしの くにから きた 人。

 からだは りんご一こぐらいの 大きさ。

 ぼうしは、三がいの マンションぐらいの 大きさ。

(学校に くる ときは、ぼうしを おりたたんで、キャンプで つかう テントくらいの 大きさに する。)

 とくいな こと:力が つよい。

 にがてな こと:ぼうしを とられる こと。

● 川口先生。一年二くみの たんにんの 先生。

 ふだんは ふつうの ふくを きて いる。

 きょうは にんじゃの ふくを きて いる。

●校ちょう先生。

 ふだんは ふつうの ふくを きて いる。

 きょうは にんじゃの ふくを きて いる。

 

 はじめに 川口先生が はなしました。

川口先生:「けらけらくんも、この 町の 小学校に かよって いるのだから、ふつうの 大きさの ぼうしを かぶらないと いけませんよ。」

けらけらくん:「ぼくは 大きな ぼうしの くにの 人なので、大きな ぼうしを かぶらせて ください。」

校ちょう先生:「ほんとうはね、川口先生も 校ちょう先生も にんじゃの くにの 人なのです。でも、ふだんは 学校の きまりを まもって、ふつうの ふくを きて います。だから、大きな ぼうしの くにの けらけらくんも、ふつうの 大きさの ぼうしを かぶらないと いけませんよ。」

 けらけらくんは こまって しまって へんじが できません。

校ちょう先生:「では、こう しましょう。先生たちの チームと きみたちの チームで かくれんぼを します。きみたちが かったら、けらけらくんは 大きな ぼうしを かぶる ことが できます。先生たちが かったら、ふつうの 大きさの ぼうしを かぶらないと いけません。それで いいですね?」

けらけらくん:「はい。それで いいです。」

ぼく;「ちょっと まって ください。先生たちは、にんじゃの ふくを きて いるので、かくれやすいです。けらけらくんは ぼうしが 大きいので、すぐに 見つかって しまいます。だから、かくれんぼで きめるのは ずるいです。ほかの ゲームに して ください。」

校ちょう先生:「けらけらくんは、かくれんぼで いいと いいましたよ、上山くん。」

川口先生:「そうです。もう、かくれんぼに きまったのです。ぜんぜん ずるくは ありませんよ、上山くん。」

 そう いって、校ちょう先生と 川口先生は、「ムヒヒヒヒ」と わらって、ぼくに アッカンベーを しました。

 ぼくは 先生たちには まけたく ありません。よ〜し、かくれんぼで ぜったいに かって やるぞ!

 

 かくれんぼは 森林こうえんで する ことに なりました。森林こうえんなら、大きな 木が あるので、けらけらくんも かくれる ことが できます。

 ほかの 先生も、一年生の みんなも、おうえんの ために 森林こうえんに きました。

 かくれんぼを はじめようと した とき、一人の おまわりさんが ぼくたちの ほうに はしって きました。

おまわりさん:「森林こうえんで あやしい にんじゃが テントを はって、キャンプを して いると いう でんわが ありました。あなたたちが その にんじゃですね?」

校ちょう先生:「いいえ。わたしたちは、 にんじゃの ふくを きて いますが、ほんとうは 小学校の 先生です。」

けらけらくん:「これは テントでは ありません。これは ぼくの ぼうしです。」

 そう いって、けらけらくんは、じぶんの ぼうしを ひろげたり、おりたたんだり して、おまわりさんに 見せました。

おまわりさん:「その ぼうしは 大きいですよね。森林こうえんに 大きな ものを もって 入っては いけませんよ。」

 校ちょう先生と 川口先生は、かくれんぼを する わけを おまわりさんに せつめいしました。

校ちょう先生:「子どもたちとの やくそくなので、きょうだけは 森林こうえんで かくれんぼを させて ください。」

おまわりさん:「う〜ん、こまったなあ。」

けらけらくん:「しかた ありません。かくれんぼは やめましょう。この 町の 小学校では、大きな ぼうしを かぶる ことが できません。だから、ぼくは 大きな ぼうしの くにの 小学校に てん校します。みなさん さようなら。」

 けらけらくんが てん校すると いったので、大さわぎに なりました。校ちょう先生と 川口先生は、ショックで からだが 石のように かたまって うごけません。一年生の みんなは、けらけらくんに 「てん校なんて しないでよ。」と いいました。

 

 ぼくは たいへんな ことに なったと おもいました。その とき、おまわりさんが こう いいました。

おわまりさん:「けいさつかんは からだを きたえて いるので 力が つよいです。けらけらくんと 二人でなら、ぼうしを もっと 小さく おりたたむ ことが できる はずです。」

 おまわりさんと けらけらくんは 力を あわせて ぼうしを おりたたみました。二人で うん、うん、力を こめて おりたたむと、ぼうしが おべんとうばこぐらいの 大きさに なりました。その 上に ふつうの 大きさの ぼうしを かぶせると、けらけらくんの あたまに ぴったり はまりました。

おまわりさん・けらけらくん:「これなら、だいじょうぶですか?」

校ちょう先生・川口先生:「はい。ふつうの 大きさの ぼうしを かぶって いるので、それなら だいじょうぶです。」

 みんなは はく手を しました。やった! けらけらくんは、大きな ぼうしを かぶったままで 学校に かよえるのです。

「けらけらくんは てん校しなくても だいじょうぶだね。」

 そう いって、みんなは よろこびました。

 

 さいごに みんなで きねんしゃしんを とる ことに なりました。

 カメラマンやくの おまわりさんが カメラを かまえると、校ちょう先生が おまわりさんに いいました。

校ちょう先生:「一年生の みんなは ぼうしが にあう 人ばかりです。おまわりさん、かっこよく とって あげて くださいね。」

 そう いって、校ちょう先生と 川口先生は 「ムヒヒヒ」と わらいました。ぼくたちを からかって いるのです。

 一年生の みんなは、校ちょう先生と 川口先生に むかって アッカンベーを しました。みんなが アッカンベーを した しゅんかんを、おまわりさんが じょうずに しゃしんに とって くれました。

 

(おわり)

2021年にmonogataryに投稿した物語です。

 お題:みんなで 作ろう百物語

 

『タナトスとの乖離』

 

 ある楽曲の原作になったということで気になって、僕は、「タナトスの誘惑」という小説を読んでみた。そして、ひどく驚いた。作中の人物と同じような行動パターンを示す女性を、知っていたからだ。少なくとも、僕と彼女の出会いの状況は、小説の場面にそっくりだった。彼女がマンションの屋上から飛び降りようとしているのを見つけて、僕が、やめさせたというのが、2人の出会いだった。

 

 僕が、彼女の体を抱きかかえ、屋上のフェンスから引き剥がしたとき、彼女はとても興奮していた。僕は、とりあえず、彼女を落ち着かせようと思った。念のため、「君は、未成年じゃないよね?」と聞いたら、小さくうなずいたので、僕は自分の部屋に、彼女を連れ込んだ。ここから、2人の奇妙な交際が始まった。

 

 彼女の部屋と僕の部屋は、階段と廊下を伝って行き来できるが、棟は違っていた。合鍵を交換していたが、彼女から僕の部屋に来ることは、まず、なかった。彼女が自殺をほのめかして、僕があわてて彼女の部屋に駆けつけるというのが、お決まりのパターンだった。僕が彼女の部屋に駆けつけると、いつも、彼女は、ベランダ側のガラス戸の前に立って、夜の闇をうっとりとした眼差しで見つめていた。

 僕らが出会ったのは冬の初めの頃だった。彼女はたぶん寒がりだったのだろう。自殺をほのめかしたときでも、ベランダに出ていることはなかったので、その点は助かった。それでも、物騒なことに違いはなかった。

「君は、まだ自殺のことを考えているの?」

「違うの。私はただ、夜に溶け込みたいだけなの」

 (僕がそばにいるのに、彼女はやはりまだ……)

 僕は、彼女の中での、僕の存在の小ささが悔しかった。

 

 ある日、僕は彼女の部屋に駆けつけるのが遅れた。彼女は、「今日は遅かったわね」と不服そうに言った。

「ごめん、途中で疲れちゃって。僕も、もう歳かな?」

 彼女がフッと笑った。彼女が笑うなんてめったになかったので、僕はつい、調子に乗ってしまった。

「この間の健康診断でも、血圧が、下が90を超えちゃって」

 彼女は「死神さんは成人病になんか、ならないよ」と言った。「死神さんは〜」というのは、彼女の口癖だった。

 彼女は、ことあるごとに、僕と死神を比べたがった。僕は嫉妬した。「死神って、誰?」と聞いたら、彼女はそっぽを向く。

(自分から話を振っといて、聞いたらそっぽを向くなんて、何なんだよ。世の中にこんなめんどくさい女がいるとは思わなかった)

 僕はこう思ったが、彼女のルックスが好みだったので、性格には目をつぶった。何とかして彼女に好かれたいと、それだけを願った。

 

 彼女は、タートルネックのセーターをよく着ていた。僕もまねをして、タートルネックのセーターを着るようになった。ペアルックのようで楽しかった。

 僕は子供の頃、おじいちゃん、おばあちゃん子だった。だから、たまに古い言葉を使ってしまうことがある。ある日、タートルネックのセーターのことをトックリのセーターと言ったら、彼女に「死神さんは、タートルネックのことを、トックリなんて言わないよ」とマジギレされた。

 僕は、彼女にマジギレされて、悲しかったけど、彼女の好き嫌いの基準がわかった気がした。彼女は、古臭いものとか、ダサいものが嫌いで、おしゃれなものが好きなんだ。

(よし、これからは、もっともっとおしゃれに、気を使おう)

 

 その後は、僕も服装や言葉遣いに気をつけたので、彼女を怒らせることはなかった。そして、冬が過ぎ、桜が咲く季節になった。

 週末の土曜日、午後から気温がグングン上がって、夜になっても20度を下回らなかった。異常な気象で、何かが起こりそうな嫌な予感がした。

 めずらしく、彼女のほうから、僕の部屋に訪ねてきた。僕らは彼女が持ってきたワインを飲み始めた。彼女は僕のすぐ隣に座り、肘や膝、腰でツンツン、ツンツン僕のことを押して、ベランダの方に追いやった。

 僕は、気づいたら、ベランダのガラス戸の前に、彼女と並んで立っていた。彼女が、ガラス戸を開けた。春の夜の心地よい風が、吹き込んでくる。彼女はベランダに出た。僕もつられるように、ベランダに出て、彼女の横に並んだ。

「このまま、夜に溶け込んだらどんなに素敵なことでしょう。あなたは、そう思わない?」

 そう言って、僕を見つめる彼女の瞳は、この世のすべてのものを吸い込んでしまうように、深く、澄み切っていた。僕は彼女の瞳から目が離せなかった。いっさいの思考を失っていた。

 

 そのとき、「ガタッ」という音がした。僕は我に返った。

「何の音?」

 彼女が聞いた。

「ごめん、僕、ベランダで、ミドリガメを2匹飼ってるんだ。今日、あったかいから、冬眠から覚めちゃったみたい」

「えっ?」

 彼女は、ベランダの隅に置いてあるカメの水槽を覗き込んだ。カメはガサゴソと動き続けている。

 しばらく、沈黙が流れた。そして、彼女が悲しそうに言った。

「死神さんは、ミドリガメなんて飼わないよ」

 僕は、それが別れの言葉だということにすぐに気づいた。だから、すべてを諦め切って、彼女の言葉に乗っかった。

「確かに。鶴は千年亀は万年っていうから、死神とカメは真逆だね」

 

 彼女は「さようなら」と言った。彼女の体は、ベランダの柵を影絵のようにすり抜けた。僕はそれを見ても驚かなかった。彼女は人間というより、人間の想念とか、意識とかの塊が、服を着ていたものだろうと、そのときは、ぼんやり思っていた。

 折から、春風が彼女のスカートをまくり上げた。高級そうな黒いレースのパンティーが丸見えになった。

(彼女なりに、勝負パンツを身につけてきたんだ……)

 そう思ったとき、僕は、初めて彼女の内面も、心から愛おしいと思った。彼女は、スカートがまくれ上がったことなど頓着せずに、そのまま、夜の闇の中に溶け込んでいった。

 

(了)

 

2021年にmonogataryに投稿した物語です。

お題:理想のアイドル像

 

『女神になったお父さん』

 

 アイドル好きのお父さんとお母さんは、私が生まれたとき、「この子を立派なアイドルに育てよう。」と、誓いを立てた。私は子供の頃から、アイドルになるべく、英才教育を受けた。中学生になり、そろそろ、オーディションでも受けようかという時期になって、お父さんとお母さんの間で、決定的な意見のズレが生じた。

 

 お父さんは、こう言った。

「俺の理想とするアイドル像を10とすると、今の段階では、ミクは、1か2のレベルにしか達してない。並のアイドルになるくらいなら、俺は大事な娘を、アイドルになんかさせたくない。並のアイドルに収まるくらいなら、アイドルは諦めて、ふつうの人生を歩んでほしい。」

 アイドル道に厳しいお父さんらしい考え方だった。お母さんは反論した。

「あなたがいう、理想のアイドル像なんて、私にはわからない。もし、理想のアイドル像というものがあるにしても、とりあえず、アイドルになってから、理想のアイドル像に近づいていけばいい。あなたは、もしかしたら、自分が育てたミクが、オーディションを受けてみて、落ちるのが怖いのではないか?」

 それからは、水掛け論である。それで、最終的には、「ミクに決めてもらおう。」ということになった。

 

 私は、お父さんの言うことのほうが、正しいことがわかっていたから、正直に答えた。

「私は、お父さんのほうが正しいと思う。それに、私は、今後、いくら努力しても、理想のアイドルにはなれないと思う。だから、もう、アイドルになることは諦める。」

 お父さんもお母さんも泣いた。諦め切れないお母さんはこう言った。

「私には、理想のアイドル像なんて、いまだにわからない。そんなに自分の理想のアイドル像が大切なら、あなたが、理想のアイドルになればいい。」

 これが、決定打となった。お父さんが女の子のメークをして、女性アイドルになり、理想のアイドル像を追求することになった。

 

 お父さんは、Mayaka-Cという、本名、年齢非公表のネットアイドルとして、世界的に、大人気になった。私もお母さんも、お父さん(=男の人)が思い描き、自ら演じる理想のアイドル像の底知れぬ魅力に、驚愕した。

 しかし、2年もたたないうちに、お父さんがアイドルをやることで、家族全員が疲れてきた。

 お父さんは、アイドルを応援したい人なのに、アイドルとして応援される立場になって、ストレスのはけ口を失っていた。

 私は、系統からいえば、お父さんの顔の系統なので、私にMayaka-Cの面影を見て、言い寄ってくる男の子が増えた。でも、本当の自分を見てくれない彼らを、私は嫌悪した。一方で、急に、男の子にちやほやされたことで、女の子の友達との付き合いは、今までの何十倍も気を使わなくてはならならなかった。

 いちばん、ダメージを受けたのはお母さんだった。「Mayaka-Cを演じているお父さんを見ていて、私は、昔も今も、お父さんから、まったく、女だと思われていないことに気づいた。」といって悲しんだ。お母さんが、深酒をして、「どうせ、私なんて、女と思われてないんだから。」と言って、トイレのドアを開けたまま小用を足そうとしているのを見て、私はお父さんに、「もうアイドルはやめて。」とお願いした。

 

「俺も、もう、いい潮時だと思う。でも、ファンの中には『Mayakaちゃんがいるから、僕は、今日も生きていられる。』みたいなことを言う人もいる。だから、急にいなくなるのではなく、徐々に消えていかないと、ファンに迷惑がかかる。」

 これについて、私には、いい考えがあった。

「お父さん、大丈夫。私とお父さんは、顔が似ているから、私が、Mayaka-Cのメークをして、お父さんの代わりをすればいい。ルックスは同じでも、私には、理想のアイドルなんて演じられないから、きっと、人気は少しずつ、なくなっていくはず。」

 

 私の考えは間違っていなかった。私がMayaka-Cを演じ出すと、コアなファンの一部には「何か、Mayakaちゃんの雰囲気が変わった。」とか「Mayakaちゃんは、誰か、他の人と入れ替わったのではないか?」と言う人も、いるにはいた。しかし、真相は、誰にもわからなかった。そして、Mayaka-Cの人気は、徐々に落ち着いていった。頃合いを見計らって、「1年後に引退する宣言」をして、その後、言葉通りに引退した。理想のアイドルではなくなっていたMayaka-Cの引退に、世間はそれほど騒がなかった。

 

(了)

 

2021年にmonogataryに投稿した物語です。

お題:三匹の子猫

 

 『猫、産んじゃった!』

 

 昭和時代は、ペットについてのルールがしっかりしてなかったと思う。だから、 飼っている猫が、家の中と外を自由に行き来して、近所の猫や、のら猫と仲良くなって、子どもを産んじゃうなんてことがよくあった。

 

 うちの飼い猫のミーちゃんも、ぼくが小学校4年生のときに、3匹の子猫を産んだ。1匹は真っ黒け、1匹は真っ白け、もう1匹は黒と白のまだら。だからぼくは、黒猫にはクーちゃん、白猫にはシー子、まだら猫にはマーちんと、名前をつけてやった。

 

 家族でいちばん、子猫をかわいがったのは、ぼくだった。だって、ぼくは、すぐに3匹の鳴き声を聞き分けられるようになったぐらいなんだから。鳴き声のちがいを文字で表すのはむずかしいけど、大げさに言うと、クーちゃんは「ニぃャーニぃャー」、シー子は「ニゅャーニゅャー」、マーちんは「ニャーっニャーっ」みたいな感じ。でも、ぼくが何度説明しても、ぼく以外の家族はだれも、ちがいがわからなかった。

 

 母猫のミーちゃんもがんばったし、ぼくも、一生懸命世話をしたから、子猫は、すくすくと大きくなった。でも、家では4匹も猫を飼えないから、もらってくれる人を探して、クーちゃん、シー子、マーちんの3匹は、近所の人や、友達の家にもらわれていった。ぼくは、3匹のことを夢で見るほど、さみしい思いをした。

 

 3匹がいなくなって、初めての日曜日のこと。家族でいちばんおそく目を覚ましたぼくは、子猫の鳴き声を聞いた気がした。クーちゃんの鳴き声に似ている。「あれっ おかしいな?」そう思って、ぼくはベットから、起き上がった。

 また、子猫の鳴き声がした。シー子の鳴き声に似ている。ぼくは部屋から出て、声のする方へと歩いていく。

 3回目の鳴き声がした。これは、マーちんの鳴き声だ。鳴き声はトイレからだ。3匹が、うちにもどって来ちゃって、トイレにかくれているんだ。

 

 ぼくは、トイレのドアを開けようとして、ドアノブをガチャガチャと回した。でも、開かない。クーちゃんたちは、トイレにとじこめられちゃったんだ。ぼくは、大声でさけんだ。

「だれか来て、トイレから、クーちゃんたちの鳴き声がするんだ。トイレに、とじこめられちゃったみたいなんだ!」

 すると、トイレの中から、お父さんの声が聞こえた。

「ちがうよ、今のは、お父さんのおならの音だよ。」

 

 ……お父さんは全然悪くないのに、ぼくは、クーちゃんたちの鳴き声を聞きまちがえたことがくやしくて、お父さんに、ちょっといじわるなことを言ってしまった。

「なんで、あんな、変な音のおならが出るの?」

「だって、しかたないだろ……。」

「もう、下品だなあ。お父さん、本当に、出たのはおならだけ?」

 

(了)