昨日、一昨日の土日は、このところバッハの教会カンタータやリュート曲など聴いていたので、少し気分転換で、港区の図書館などで借りたギターの曲CDなどを聴きました。どれも初めて聴いた程度なので、第一印象ですが・・・。

●優しき玩具-吉松隆ギター作品集
優しき玩具
第1印象は良かった。ただ、解説を見て少し気になるところが・・・。今手元に解説を持っていないのでうろ覚えですが、「玩具なんだから、気楽に演奏したので、評論したら死ぬ・・・」といった(福田の)感想が書いてあった。このコメントはプロの評論家向けの仲間内のコメントなのだろうか・・・。で、評論ですが、良かったのはハーモニカが主でギターが伴奏の曲です。ハーモニカは和谷泰扶(さん)です。この方は1960年生まれ、現在は洗足学園音楽大学・大学院のハーモニカ科の教授らしい。ハーモニカ科というのがあるのをを初めて知りました。とにかく、このハーモニカ(クロマティックハーモニカ)がとても美しかった。福田さんの伴奏もまずますといった所です。一方、福田さんのみのギターソロの曲は、少しまとまりが無いような・・・(これは、吉松さんの作品そのものがすこし物足りないのかもしれない)。吉松(さん)の曲は、通俗性とぎりぎりのところで(「通俗そのものだ」という批判もある)、北欧的な透明な何かをもとめ作曲しているのだろう・・・。その片鱗がすこし見えるような気がした。

●墨東奇譚/神山繁朗読
永井荷風という生き方/松本哉/集英社新書を読んだので、その流れで、江東区の図書館で新潮社のCDブック(CD3巻)を借り、車のなかで聴いた。朗読は神山繁。TVでは踊る大捜査線の刑事役なんかをやっている方。やはり第一線で活躍している俳優というのは、(ほんとうは)凄い(のが判る)。こういう小説は、やはり映像がないほうがいい。荷風は墨東奇譚のなかで、「珈琲はホットでこそ珈琲だ」と言っている。これをかけあわせると、つまり、「小説の映画化は香りのない珈琲だ」ということ(私の言葉です)。なお、荷風は墨東奇譚のなかで、主人公に"(小説を題材にした)映画は嫌いだ"と言わせている。この映画が出ているようだが、荷風が生きていたらどう思うだろうか・・・。この小説は、現代の価値観とは違うが、味わい深いいい小説だと思う。また、神山さんも見直した。

●アブリール/新井伴典新井伴典
初めてこの人の演奏を聴いたが、なかなかいい演奏をする(というか、この感性は新鮮だ)。こういう現代曲を好きな人にはたまらないだろう。このような曲を聴いていて、すこし考えた。最近は、古楽は当時のピリオド楽器を使った演奏を求める風潮がある。しかしながら、クラシックギターの世界は、もともとオリジナル曲が少ないので、リュートやビウエラの曲にギターレパートリィを求めていた(セゴビアやブリュームがそうだった)。一方、ルネッサンスやバロックの曲の演奏を、最近の日本の若手演奏家は避けている様に見える。古楽=ピリオド楽器がもてはやされる現代は、実はギターのレパートリィとしての選択肢が(とても)狭まっているのではないだろうか(これは、プロの世界に対する話です)。
話を彼の演奏に戻すと、バーデン・ジャズ組曲も通俗にならずにうまく弾いている。こういう弾き方なら、自分で演奏する場合の参考になる。でも、(ほんとうの)作曲者の意図は、もっとどろどろしているのではないだろうか・・・。

・・・ということで。ここまでと。