ギター-ルネッサンスから現代まで/濱田滋朗訳と図書館でずっと借りて督促状が来ていましたが、昨日、借り換えをしてきました。これで、ルール違反状態は解消です。


●ストラディバリウスのギター
ストラディバリウス(この呼び名はラテン名、イタリア名はストラディバリ)
は言わずと知れた伝説のヴァイオリン等の制作家です。私はミーハーなので、この本(第1章の最後)を読んで、すぐ飛びつきました。1680年頃の作品らしい。複弦5コースのギター2つ現存していて、1つはパリ国立音楽院、もう1つは個人所有とのことです。彼は1200挺のヴァイオリンを作りそのうち600程度が残っているようだ。また、50挺程度はヴィオラやチェロを作っていた。ということは、(私が想像するに)ギターも5挺程度は作っていたのではないか(たぶん)。制作年代からは、彼とすれば駆け出しのころではないか(1644年生まれらしいのでそこそこの歳ですが、かれは1937年まで生きたのです)。そのころは、王侯貴族の特別な依頼を受けて作ったり修理していたのではないか(たぶん)。この本では、白黒写真なので印象はいまいちなのですが、特徴的な事項として、下記が挙げられています。


1)当時一般的だった、ギターの胴などについている装飾がなく、木目が美しく出ている。

この本には、ギターの材質(例えば楓、杉、松)が書いていない。写真の木目から想像すると楓です。おそらくヴァイオリンの木材を使ったのだろう。以前(10年程前)、楓のギターを弾いたことがありますが、何とも言えない、明るいというか普通のギターと異なるくせになる上品な音がしました。なお、ヴァイオリンの銘記/音楽の友社/1400円を(比較的安かったので)持っています。このヴァイオリンのカラーの色合いから(またまた)想像すると、さぞかし美しい色のように思います。ヴァイオリンに使ったのと同じ"ニス"なんかも使ったのだろうか・・・。この本では、「彼の隠れもない工人気質、そして木材への敬意は、彼のギターにも明らかにされている」と記してあります。どんな音がするのだろう・・・。もっと、このギターのことを知りたいと思いました。(このような謎を仕入れておくと、ギターの店などで写真付の高価な本を立ち読みするきっかけになります)


2)胴が当時のギターに比べて厚く、現代のトーレスギターに匹敵する厚さ。

このギターの弦長は74cm、胴の厚さは上部が9.5cm、下部が10.5cmとのことです。ストラディバリウスは、ヴァイオリンのみならずギターに対しても”工人気質”を発揮し、それなりの研究の成果を反映したのだろう。


3)12フレットが、現代ギターと同じくネックと胴体の接点に位置付けられている。

当時、ピアノの調律は発展途上にあり、ピタゴラス調律から平均律調律に移行しつつあった(バッハは、平均律クラヴィーア曲集の第1集を出したのが1722年です。)。純生律ベースのピタゴラス調律には幾つか問題があり、それだけでは全て整合した音律の体系を構築できず、どこかにしわ寄せがでるのです。一方、ギターはその構造上、同じフレットで複数のコース(弦)の音階を設定する必要がある。即ち、平均律になる必然があった。というか、初期のギターは(特にかきならしたときに)相当いい加減な音がしたのではないか。それで、当時のピタゴラス調律ハープシコード等と平均律もどきのギターを合わせると、半音程度の差異が生じるところがあった(ようだ)。ストラディバリウスのフレットは、ほぼ平均律で設定されていたと思われる。またまた、想像ですが、フレット付きのヴィオール属が、フレット無しのヴァイオリン属に移ったのも、音量等の他に、音楽理論が体系化され転調があたりまえになりつつある楽曲発展のとき、フレットがない方が適応性があることが理由の一つと考えられる。


・・・上記のような知識は、常識としてみんな知っているものなのでしょうが、音楽愛好歴10年の私には、どれをとっても新しい知識で、面白い。・・・ということで。この本のブログは(その4)ですが、まだ第1章です。どうなることやら・・・。