以前のブログで、ウエステックの治具での、
湿度による伸び縮みやソリについて触れましたが、
秋になって段々と乾燥した季節に移って来ました。

静電気が発生しやすい部品を整列機で流すと、
貼り付いて流れが悪くなりますので、
またイオナイザーの出番が増える季節が
来たなあ、という感じです。

湿度が低くなるので、じゃあ治具の伸び縮みや
ソリの方はもう安心か、と言うと、必ずしも
そうではありません。

ウエステック製の整列治具や組立治具などは、
その大部分が樹脂(プラスチック)製で、
ベークライト・アクリル・ポリアセタール
(ジュラコン)・MCナイロン(ナイロン66)
ユニレート・ピーク材などです。

そして、樹脂というのは、成形時の残留応力や、
加工時に刃物から受ける力や摩擦熱などで、
歪んだりソリが発生したりする要素を
常に持っています。

そのため、一般的な樹脂の加工では、
公差を大きめに設定するのが普通です。
金属ならば±0.05mmに収まるところを、
敢えて±0.1mmにして図面を書いたりします。

しかし、ウエステックで並べる部品の大きさが、
例えば縦0.6mm×横0.5mm×高さ0.3mmだったりすると、
公差が±0.1mmでは、向きを揃えて並べる事が
できません。

つまり、従来の常識とは別次元の加工公差が
求められて来ているのです。

ベークライトの場合、穴の深さににもよりますが、
現在、穴の幅公差を±0.01mmレベルまで
加工する事が可能です。更に条件が整えば、
±0.005mmでも加工出来るケースもあります。

しかし、その公差内に収めようとしますと、
わずかなマイナス要因が命取りになります。

刃物の送り速度を調節し、また刃物を再研磨して
切れ味を確保するなどして、加工時の余計な
応力発生や発熱は抑えるように心掛けていますが、
もともと材料が内包している残留応力は、
アニール処理するなどして、できるだけ
緩和するようにしています。

アニール処理とは、材料の残留応力を
緩和するために行う熱処理の事です。

材料を数時間単位で炉の中に入れ、
残留応力を解放します。アニール処理後は、
真っ直ぐだった材料にソリや歪みが出たり
しますが、応力的にはその状態の方が
安定している事になりますから、
再度6面(上下前後左右)を削り、
真っ直ぐに仕上げます。

樹脂の種類によって、アニール処理する
温度や時間にも目安が有ります。

熱可塑性樹脂(熱をかけると溶ける樹脂)
の場合は、それほど高温にはできませんが、
材料メーカーからも指標が出ています。

しかし、材料の板厚や、どのような加工を
するかによって、また、どのメーカー製の
材料を使うかや、生産ロットによっても、
微妙にソリや歪みの発生状況も
変わって来ますので、樹脂加工業者は、
いろいろな経験から、アニール処理の
独自基準を取っている所も有ります。

さて、通常は加工する前の材料に対して行う
アニール処理ですが、加工途中で行う事も
あります。

加工公差が厳しい時はもちろんですが、
ソリが出やすい加工形状だったりする場合は、
最初の段取りで、途中にアニール処理が
できるようにしておきます。

加工途中のアニール処理によって、
初回に比べればわずかとは言え、
ソリや歪みが再度発生する可能性が
ありますので、仕上げしろを残した状態で
加工を行い、アニール処理します。

全てがそうとは言い切れませんが、
完成形に近い状態でアニール処理した方が、
効果が期待できるケースが多々あります。

手間が掛かりますが、加工精度優先であれば、
はしょる事はできません。

また、強度や耐摩耗性を上げるために、
ガラス繊維や炭素繊維が
入っている材料がありますが、
これも、アニール処理をやった方が
良い場合があります。

これらの添加剤の分布の方向性が
原因と思われる残留応力が、
解放される事があるためです。

さて、これだけ気を遣って加工しても、
もともと、ウエステックの治具は、
板状の物で、かつ片面しか加工していない
物が多いです。

組立治具は、穴が貫通している物も
有りますが、整列治具は、基本的に
非貫通穴で、片面加工です。

しかし、それが原因でソリが発生する事が
分かっている場合は、部品の整列に
支障が無い範囲内で、別途に細い貫通穴を
設けたり、裏面に溝加工を入れたりといった
事をやる場合があります。

一見、何のために加工されているのか
分からないので、立会の時とかに、
お客様から「これ何ですか?」と聞かれる事も
あります。