人間は2つの人間に分けられる。
善人と悪人。
平和を願う人、戦いを好む人、人を愛する人、人を嫌う人。
善を好む人達、悪を追求する人達。
同じ種族でありながら相反するアイデンティティとイデオロギーを抱えながら生きるのが人間だと思う。

しかしながら、善と悪の違いとは一体なんなのかと問われて、まともに説明出来る人間が本当にいるだろうか。

1人の不良がいたとする。
その不良はとにかく好き勝手に行動して、回りの声には一切聞き耳を立てない。
その不良がある日事故に遭ってしまう。
車に轢かれそうになっていた子供を庇って、運悪く自分が身代わりになってしまい、車に激突。
半身不全となってしまう。

この不良を善人と呼ぶのか、悪人と呼ぶのかは難しい話だと私は思う。
様々な媒体でこう行った話は良く聞くと思うが、悪態ばかりついてた人間が、たまに優しさを見せるとそれは10割増しで美化されがちである。
ジャイアンが映画ではいい奴になるのと同じ理論だ。

小さな子供を守り、自らを犠牲にしたこの不良の行為は確かに賞賛されるべきことなのかもしれない。
しかし、その1つの行為で過去積み重ねて来た悪事が帳消しにはならない。
子供の将来を守ってはいるが、他の人間の将来を捻じ曲げるほどの悪事をしていれば、プラマイゼロにはならない。
自業自得と言う人もいるかもしれない。




さて、言葉は悪いがクソ長い前置きはこれくらいで、彼との邂逅を話す。

ある時、彼は本業の仕事から別の業務に移された。
それは、あまりの人手不足に困った会社のとった苦肉の策であった。
しかし、彼は本業が上手く行っていたわけではない。
どちらかと言うと逆だ。
クビにすることもできない会社側から見ての最良の対処でもあった。

初めは彼に対して不憫だと感じてはいた。
やりたいことができずに可哀想だと。

そのうち彼も業務をこなしていくうちに周りからは高評価を得る。
ひたむきに頑張っていると思われたからだ。

しかしその陰で、彼は徐々に本領発揮する。
彼は乗ってしまったのだ、、、



調子に乗ってしまったのだ。



やって当たり前の業務をこなしただけで、褒められる日々を経験したが為に今の自分を過大評価してしまった。

そしてついに、彼は私に言い放ってしまった。

タメ口を、、

○×さん、△工業。

は?
と理解出来ない問いかけに問い返す。
すると、、

△工業!

は?
より理解出来ないことを発する。
△工業がなんだというのだ?
そして3回目にしてようやく、、

△工業から電話です。

やっと理解出来た。
彼がタメ口を使っていたことに。

主語のない文法で話しかけた上に、タメ口を使っていたとなると私はもう怒りを抑えずにはいられなかったが、その場では何も言わずに電話に出た。

そして考える。

本来の業務を外された彼が、別の業務をひたむきにこなしていく姿。
そこに甘んじて、調子に乗ってくる姿。
そこに善悪のどちらが当てはまるのか、、、

私は問う。
彼は本当に人間なのか?と。


改めて言う。
彼は私より年は3つ下で、社歴も2年後輩、、

彼の名は、ケイオス・マン。