7月20日(日)
話題の作品を公開二日目に奥さんと観てきました。
ネットで予約して六本木まで行きましたが、満席。
ものすごい人でした。

期待が大きかっただけに、満足感とか納得感のない結果、楽しむことのできない作品でした。

実在のあのゼロ戦を設計した航空機設計技師の堀越次郎、
そして、堀辰夫の「風立ちぬ」をあわせた宮崎監督らしい作品ではあります。

ですが、監督の思い入れが強すぎて空回りしているように感じました。

作品中で堀越次郎が設計するのは九六式艦上戦闘機。
技術的にはそうとうに高いレベルの戦闘機だったようだ。
この後継戦闘機がゼロ戦。

飛行機を作りたいという子供時代からの夢を追いかけて設計技師となるところが描かれている。

夢の中にイタリアの設計技師カプローニがたびたび登場して、いかにも宮崎監督の好みのようないろいろな飛行機が登場する。
(ナウシカやハウルなどに描かれた飛行機のイメージ)
しかし、あの戦争の時代背景では戦闘機もやむを得なかっただろうが、本当に作りたかった飛行機は戦争に使う飛行機ではなかったのではないか、とも考えてしまう。


宮崎監督が戦争を賛美しているわけではないことはわかっているが、作品の中では、ひたすら技術を追求するだけで、兵器開発に従事することに対しての葛藤は全く感じられない。

一方、結核で療養している菜穂子がヒロインとして登場し、次郎とのロマンスが描かれる。
菜穂子はかわいらしくて健気なお嬢様として描かれているものの、どのような想いを秘めた人間なのか、感情や心の内面をうかがい知ることができない。

戦闘機の設計と恋の物語を無理やりつなげたみたいでストーリーがうまくからんでいないように感じる。
だいたい、結核で寝ている菜穂子の横で平然とタバコを吸う次郎の描写も違和感がある。

登場人物のキャラクターの掘り下げがいまひとつなのか?
あるいは、キャラクターの設定はできていても、画面上で描き切れていないのか?

ラピュタや魔女の宅急便やナウシカや千と千尋は架空の世界の物語で比較的単純なキャラクター設定でもストーリーで十分に作品に厚みがあった。
今回は実在の人間を実際にあった時代に落し込ませた作品である。
しかし、登場人物に人間としての奥行きが感じられない。

航空機設計に焦点を充てるならば、それこそちょっと昔のNHKのプロジェクトXのような作り方の方が納得感があったように思う。

菜穂子と次郎の切なく悲しいロマンスを描くならば、また別の展開が描けただろう。

野村萬斎、西島秀俊、西村雅彦、竹下景子、大竹しのぶ、風間杜夫、國村隼、瀧本美織、志田未来・・・
声の出演の俳優さんたちは、顔は出なくともさすがはプロと思わせる演技力がある。
それだけに、宮崎監督の抜擢で次郎の声を演技した庵野氏の技量のなさが歴然としてしまった。
声質は監督のイメージにあっていたのだろうが、表現力ではプロの俳優にはかなわない。
チョイ役のカメオ出演ならばご愛嬌だが、主役の声である。
残念なキャスティングだった。

これも監督の思い入れが強すぎたように思った。

少なくとも、小中学生には全くあわない作品とも思った。

評価:★★★☆☆