古くからの寺院など、日本の木造建築は千年を越えて今にその姿をとどめているものがあります。
そこに「和くぎ」が使われていることを最近知りました。

私が中学生の修学旅行で行ったときには、奈良の薬師寺の塔は天平時代にできた東塔しかなく、西塔は礎石だけが残っていました。
1981年に有名な宮大工の西岡常一氏が西塔を再建するときに、
檜は千年もつので
千年持つ和くぎを提供したのが
松山在住の鍛冶師の白鷹幸伯(しらたかゆきひろ)氏。

鉄は年月がたてば錆びる。
鉄鉱石から溶鉱炉で作る鉄、スクラップを電気炉で溶解して作る鉄、近代製鉄法で商業生産される鉄はいつかは錆びる。
だからメッキしたり、塗装したり、合金をまぜてステンレスをつくったりするが、錆びにくくなるだけ。

しかし、日本古来の製鉄法である「たたら」は純度の高い鉄ができる。
砂鉄を木炭で作る鋼は限りなく100%の純鉄に近く、理論上は錆びない。

白鷹氏は特注の鉄を入手して和くぎを鍛えて作る。

和釘

白鷹さんによって鍛えられる白鳳型和釘
(写真はいよぎん地域経済センターHPから借用しました)

(日本職人名工会HPから借用しました)
白鷹氏のこの和くぎで薬師寺西塔、中門、回廊は再建された。
災害や戦争がなければ千年もつはずだ。

世界文化遺産もすごいが、それを作った昔の技術、そして現代に受け継がれている技術、これがあってこその世界遺産なのだと、あたりまえのことにいまさらながら気がついた。

私はエンジニアではありませんが製鉄会社に勤める者として、
日本の伝統技能というのはすごいものだと感動してしまいました。