「ゆりかご」


ぬけみち


天使に護られた家のなかの*
産婦のための小さなランプのような*


さまたげ


融資に寝取られた街のなかの
金庫のための陰気な貨幣のような


いちにち


テントに放たれた石のなかの
鎖のためのかすかな移動のような


まさゆめ


演技に盗まれた役のなかの
信義のための静かな鋼のような


こめかみ


感謝に阻まれた足のなかの
あしたのための愚かな小人のような


げんじつ


原理に縛られた皿のなかの
雫のための卑劣な任務のような


ゆりかご


安易に削られた虹の中の
木綿のための遥かな錯誤のような



*レオン・ブロワの小説「貧しき女」水波純子訳(サンパウロ)の八十四ページの二行目から三行目にあった表現より借用。