「簡単な靴」


陽が傾くと
目の前の道がまっすぐになった


被っていた帽子を
空に投げ入れた
夜空になった


簡単な靴を履いて出掛けよう


歩きながら
アルファベットを発音する
まっすぐな道をのぼって
破裂音の数だけ
星が夜空にたどりつく


その光りが
私の靴のつま先に
かすかに届いて鈴になる


チリン
と鳴らすと
遠い扉を開けて
時間(とき)が紫色のしっぽをつけてやってきた


試しにもう一度
チリン
と鳴らすと
フワリ
しっぽを振ってみせた