私が勝手に師匠と崇めている(本当に勝手に…。)イケダノリユキさんの2008年のBlog記事から、広告事例を中心に、非常に勉強になる知識・トレンド・プランニング概念等を抜粋し、以下に整理します。
前エントリーに引き続きですが、私個人の備忘録的な利用です。。
※ネタ元 / イケダノリユキのCommunitainment Blog さん
今年10月の「WAIS JAPAN 2008」でこの方の講演を聞きました。2時間弱くらいの講演だったかと思いますが…、うん、完全にもってかれました。全く飽きなかったもんね。広告全般、特にマーケティングコミュニケーション分野での知識・経験・思考・等、本当に凄いと思いました。尊敬です。
======================================================================
クロスメディアやらコミュニケーションデザインなどの言葉が注目される背景には、「従来と同じ予算で、同じやり方をやっていても、効果が落ちてきている」という広告主様の切実な実感と問題意識があります。それはもはや表面的な手法論で解決できるものではなく、「何を伝えるか」と「どう伝えるか」からさらに一歩進んで、邪魔な広告から「共感を獲得するコンテンツ」へパラダイムシフトをしなければならないことの現われだと思います。
スペックやフィジカルベネフィットの差別性が希薄化する中、商品やサービスの仕様や、それによって得られる物理的な便益はほとんど差が無くなっています。そんな中で、「ウチの商品(サービス)は、他社と比べてここが違う!」といくら大声で叫んでも届かない。自分の興味関心ごとだけでプロテクトされている私たちの頭の中に何かしらの情報をインストールしたいのなら、「頭」ではなく「心」に、「商品情報」ではなく「共感」を伝えなければならないんじゃないかと思うんです。
下記は、そんな広告の一例。これはもはや広告ではなく、「物語」の領域です。課題はこの素晴らしい物語をいかにして最後までしっかり見てもらうか、という態度形成と言えるでしょう。
▼リクルート リクナビ「山田悠子の就職活動編(前半戦)」
▼リクルート リクナビ「山田悠子の就職活動編(後半戦)」
クチコミマーケティングのポイントのひとつには、「いかにしてターゲットを(良い意味で)裏切るか」というものがあります(事前期待と事後評価のギャップの振れ幅が大きいほど、「誰かに伝えたい!」という欲求が強くなるため)。事前と事後のギャップが生じないものにクチコミは発生しないわけです。現在のTVCFの多くは、ほとんどこの形態で制作されています(良い悪いじゃなく)。
ここからは全体のシナリオ(設計)よりも戦術的な要素(具体的には動画)にフィーチャーして、私たち生活者が感情を揺さぶられ、共感や誰かに伝えたいという気持ちが起こる、「琴線スイッチ」の類型をまとめています。当然ですが、琴線スイッチはこれだけじゃありませんし、複数同時に押される場合もあります。さらに、きょうび一本の動画だけでクチコミやバイラルが発生することはほとんどありません。全体のシナリオ(プロモーションの構造)の中で、ターゲットインサイトをぶっ指す設計が必要となることは言うまでもありません。
●琴線スイッチ(1)おもしろさ
・最もわかりやすいスイッチであるため、バイラル性を狙うプロモーションで最も多く利用されている
・ただし、目の肥えた生活者を満足させるためには、様々なギミックやジョークなどの演出が必要となる
▼例:CFJ「ディック」ケイタイプ
●琴線スイッチ(2)インパクト
・文字通り、圧倒的なインパクトで見る者を驚かせるスイッチ(上記「おもしろさ」に次いで多く起用されている)
・ただし、「インパクト=前例がない」であるため、チャレンジ精神旺盛な広告主様か、ある程度ブランドコードが柔らかい企業様に限られる
▼例:ユニリーバ「Dove」Evolution
▼例:FIFA STREET 3
●琴線スイッチ(3)セクシー
・3番目に多く利用されるスイッチ
・当然、行き過ぎ(セクシャル)はNGだが、効果的に活用すると驚異的なクチコミ効果を得ることができる
・例:IKEA「Spaghetti」(おもしろさも入ってますが)
●琴線スイッチ(4)圧倒的な手間ひま
・通常で考えたらありえないことを、圧倒的な手間隙とコストを投じて制作する
・CG全盛時代だからこそ、あえてCGを使わず制作することが視聴者の共感を勝ち取るポイントになる
・問題は、圧倒的な手間ひまをかける分、コストがかかる点
▼例:SONY「BRAVIA」Play Doh
●琴線スイッチ(5)疑問(謎解き)
・噂が形成される経済学を活用したスイッチ
・あえて曖昧な情報として制作し(たまに結果論)、視聴者のクチコミを喚起する手法
▼例:NIKE「Ronaldinho-Touch of Gold」
●琴線スイッチ(6)感動
・「悲しい」、「切ない」などの感情をゆさぶるスイッチ
・感情移入にはある程度の尺が必要となる(60秒~90秒程度)
・金融商材などの無形サービスや高額商材のプロモーションに向いている
▼例:Panasonic「人:HITO」天国からの手紙
琴線スイッチ(6)「感動」について、もうちょっと掘り下げてみます。
いつの時代も人が涙してしまうスイッチは普遍だと思います。その時代背景などによって若干シーンが変わりますが、私たちは概ね下記のような状況設定に弱い気がします。
●大切な人(夫、妻、子ども、親、友人など)の死や離別
●大切な人(〃)への(からの)無償の愛
特にこの2点において、想いが実現できない(自分の力ではどうしようもない不可抗力的な)障害と、乗り越える過程、そしてそれらの想いが凝縮された結末、という設定が感情移入を起こさせ、感動したり、泣いたりする。
▼くらしの友(葬儀屋さん)「私のおばあちゃんへ」

単に葬儀サービスを提供するんじゃなくて、大切な人、愛する人とのたくさんの思い出や、「ありがとう」という感謝の気持ち、死後の世界でまた会いたい(一緒にいたい)という、これで終わりではない、むしろ「これからもよろしく」といった故人を心から愛し、偲ぶ感情もひっくるめたセレモニー(コト)を提供したいという企業姿勢が伝わってきます。
▼ANA/読売新聞/PLUTINUMのコラボCM(やや長編)
▼神様への手紙
▼maxell「ずっとずっと。新留小学校篇」
▼明治安田生命「たったひとつのたからもの」
人の感情の中で「感動」というのは、「おもしろい」とか「すごい」とか「エロい」とか「ブラボー!」とか「何だ?」とかよりも大きく心を揺さぶらないと得られない。つまり、「感情移入」をしてもらわない限り、人には感動してもらえない。
感情移入をしてもらえるくらい感情を揺さぶるということは、(心の)ドアは完全にオープンになっているので、企業や商品やサービスが伝えたいブランドメッセージ(世界観含め)もスムーズにコミュニケーションできるはず。
ただし、ここ数年で一気に目が肥えた私たち生活者は、「感動させてやろう」とか「泣かせてやろう」という企業側や送り手側の目論見や企てをつぶさに見抜きます。なので、諸刃の剣というか、薄っぺらくやってしまうと、たぶん良くない。
「おもしろさ」や「インパクト」の場合は、観たり読んでたいしたことがなければ「ふ~ん」で終わりますが、「感動スイッチ」の場合に失敗すると、「せこい」とか「いやらしい」なんて言われかねないので注意が必要(まぁ、琴線に触れないってことは無視(スルー)される確率が高いですが)。
これからのマーケティングコミュニケーションに必要なこと。それは、ターゲットの「見たい、聞きたいという態度形成」(←ここが一方向的なマスメディアの課題(←限界じゃなく 【課題】))、「必要なもの、オモシロイもの、感動するものといった広義のエンタテインメントコンテンツ」、「リアルやCGMで拡がるクチコミ性(B2C2C型コンテンツ)」なんじゃないでしょうか。もちろん、アドテクノロジーによるターゲティング精度の向上や効果測定も重要なことは言うまでもありませんが。
======================================================================
あぁ、ホント勉強になる。うんうん。
Web-KA






