前号俳句ふたり合評(20~25P)の全文を掲載しますので、ご覧ください。

 

鍵のように手を失くす鬼灯市 / 未補 

阪野基道 『空席』一連、魅力的な句ばかり。掲句は、鍵と手を直喩で結びつけ、幻想的な句に。省略されている語を補足すれば「〈大切な〉鍵のように手を失くしてしまった」となり、イメージは鮮明になる。鬼灯市に功徳を得るはずが、魔的な雰囲気を纏ってしまった。

男波弘志 鍵を失くして途方に暮れていたとき、やけにボンヤリした浴衣のオンナが僕の背中にキツネの手をかけてお祭りに行こうと言った。鬼灯をくちびると間違えていた子供たちが、浴衣に描かれた鬼灯のくちびるを探して、人攫いにあった夕間暮の隙間を抜け出してぞろぞろこちらに歩いてくる。

 

荊棘線に蝶はほどけてたなびく白く / さ青 

松永みよこ 荊や棘に突き刺され、身を砕かれようとも、まだ白さを失うことができずますます孤を深める白蝶の気高さ孤高さに圧倒された。蝶々を「ほどけて」、「たなびく」、「白く」とたたみかけるように形容しているのも、蝶の動きを感じられて、哀切さが増す。

竹岡一郎 バラセンに引っ掛かった白蝶がバラバラになって風に吹かれてゆく様を詠ったと見るが、蝶は最初から物質ではなく、魂が蝶と見えていただけか。最後に色が置かれて、初めて蝶の本性が見える。そんな本性なら、たなびくだろう。バラセンはやはり現実の惨さ、春の惨さか。

 

仕立て良い喪服の裾にレダ白鳥 / 阪野基道 

斎藤秀雄 「レダと白鳥」が亡霊のように《裾》に取り憑いているのだろうか。これはやっかいだ。亡霊に特有の透明性を欠いているからだ。ダ・ヴィンチの、ブーシェの、イェイツのそれへと時々刻々と変転し、結婚式のお色直しの様相を呈してしまう。《喪》は失敗するだろう。

竹岡一郎 スパルタ王の妃レダを、ゼウスが白鳥と化して誘惑した神話は、性愛を暗に描く格好の題材として描かれたが、近代以前は、道徳心に照らして描写露骨、と破棄された物も多い。喪服と相俟って、寡婦の性愛の情景が浮かぶのだが、上五に情景のスタイリッシュさは見える。

 

芒原乳をしまいし母ぎつね / 松永みよこ 

未補 子育ての役目を終えた《母ぎつね》が、ほっと一息ついてうずくまる姿が浮かぶ。《芒原》にまぎれて、《母ぎつね》の姿が消えゆく感触もあり、物悲しい。しかし、《芒原》を選んだのは、外敵から身を隠す生存戦略かもしれない。《母ぎつね》の強かさもうかがえる。

男波弘志 母が病弱であったせいか、他人の乳を呑んで眼を腫らして泣き叫んでいた。いったい何人のオンナの乳を呑んで育ったのだろうか。首に大きな黒子のあるオンナだけがほんとうの乳母だった気がしている。オンナはいつも芒原の真ン中に突っ立っていた。ハイハイをして乳をもらいに行くことが、オンナを知る最初の儀礼であった。

 

日に一度外出寒の行として / 宮中康雄 

江良 修 コロナ禍で外出自粛の世の中。外出はできる限り控えておこうと思いつつ、家に閉じこもってばかりでは身も心も萎えてしまう。日に一度の外出を寒行とみなせば頑張っている自分を感じられそうだ。外出の言い訳も立つ。一石二鳥のアイデア。心が軽くなる。

小田桐妙女 日に一度の外出が寒の行とは、外は、ものすごい吹雪なのだろうか。それとも、外出先には寒行のように辛いことがあるのだろうか。辛いことがあった時ほど、外に出るのは悪くないだろう。いちばん怖いのは、何を考えてしまうのか想像できない自分の頭のなか。

 

月光の常温保存できますか / 森さかえ 

さ青 月光と《常温保存できますか》という言い回しの取り合わせではある。保存できるか聞くなら、残すつもりがあり、月光は残しておきたい光景や時間の遠景か。また、常温と言うことで、月光が差していた空間の皮膚感が思われる。その心地こそ保存したい月光の正体のようにも。

しまもと莱浮 唐の千秋鬼薊以て 無理を承知でラジオ相談室に電話した。里芋は一ヶ月も常温で保存できるのに、満月は十五日で融けてしまいます。今見ている月は前の月と同じでしょうか。あんな所に痣などあったかしら。夜が明けなければよかったのに。

 

ザ銀座バスコダガマは歓喜した / 森誠 

斎藤秀雄 《ザ銀座》は秀吉の常是座か、一九七五年誕生のブティック(のちスキンケアブランド)か。いずれにせよ十六世紀初頭のヴァスコが、濁点によって日本に召喚される。その《歓喜》はインド航路の発見同様、血に塗れたものであるに違いない。肌の美しい殺戮者であれ。

しまもと莱浮 強大さの音象徴である濁音からもバブル期の繁栄が連想された。小雪舞い散る時計店、祭りの後の淋しさもいや増す。インド航路の開拓者によってガネーシャとも繋がるし、ポルトガル国旗から柊、柊からイヴへと戻りつつ、幻想は第九に帰る。デカビタCに乾杯。

 

林檎転がる象は逆立ち / 石田真稀子 

江良 修 古代インドの宇宙観を示す亀蛇宇宙図。亀の上に象が円を描くように並び地球を支えている図だ。林檎転がるからはニュートンの万有引力の法則が想像される。万有引力に従えば前述の図の象は重力によって逆立ちしていることに。機知に富んだ愉快な句と思う。

男波弘志 シュールレアリスムの絵画の手法を用いてモノを投げ出したのだろう。絵画の場合はそれを観た者に、色、容、が明らかに表現されている。言語表現で顕された場合、イメージを創造し、映像化するのは読み手だけである。サーカスの一場面であろうか。それ以上は何もわからない。

 

クロスワードの中一人芝居の紅葉 / 内野多恵子 

江良 修 タテヨコのヒントから言葉を探し出すクロスワードパズル。そのヒントの一つに紅葉があったのだろう。しかし、タテヨコがうまく繋がらない。タテヨコの協力無くしてパズルは解けないのだ。浮いてしまった言葉「紅葉」。窓の外には本物の紅葉が舞っているかも。

未補 《クロスワード》という文字だけの世界にあって、《一人芝居の紅葉》の鮮やかさがひときわ目を惹き、美しい。しかし、他の単語をすべて背景にして《一人芝居》をしているつもりでも、《クロスワード》のなかでは、ただ一つの答えを導く一部でしかないのかもしれない。

 

記録から記憶を探すナナカマド / 江良修 

下城正臣 最近は、記憶が揺らめき、かつ思い違いのままそう信じ込んでしまったりする。日記でも出納簿でもいいが、何らかの記録を紐解くと、自分自身を探し出すことが出来る。おや、わしも案外輝いていたんだなぁーとかー。そう、ナナカマドはあなたご自身です。

竹岡一郎 記憶を辿ってゆくという作業を、ナナカマドの性質に喩えたか。赤い小さな沢山の実が記憶の一粒ずつで、「七日竈」という語原にあるように、七日間炭焼竈にくべて炭を作る如く、記憶を燃え立たせて探ってゆくと読んだ。その記憶は、恐らく燃え立つように美しいのだろう。

 

衣更ふ少女につつと小さき角 / 小田桐妙女 

森 誠 少女の角は新芽、形が角に似ている。やがて葉となり花となり、角は消えるが、少女の自立心は成長する。

阪野基道 脱皮をするような衣替えが心地よい。少女が鬼の子かユニコーンの子か定かではないけれど、愛憎を昇華させるための小さな角が、つつと生えてきたのは確か。しかし実際にはツノなどはなく、少女が女へと成長するには、見えないツノが必要、ということなのかも。

 

いわし雲なんども使ったことばたち / 男波弘志 

小田桐妙女 「なんども使ったことばたち」とはどんなことばなのだろう。愛の囁きを想像したい。白くて細やかな雲片の淡い群れ。いつまでも眺めていたい。そして、いつまでも思い出に耽っていたい。いつかは、消えてしまうのだが。こんな一人きりの時間を糧に生きてゆく。

しまもと莱浮 中八が温かい。何気ない日常会話だったのかもしれない。ケンカになったこともあろう。離別、世界は変わり行くけれど、名残は何時までも消えない。虚空が澄むと漂って、見上げるとそこに居る。わかった、書き写しておくよ。じゃ、また洋墨の滲みのなかで。

 

落ち葉掃く隣りの隣りのその人も / 柏原喜久恵 

森 誠 落ち葉掃きを徒労とみるか勤勉とみるかは人によって異なるが、きれいに掃かれた庭は一種の達成感である。

江良 修 絶え間なく降り注ぐ落葉の様子。一読、街路樹の通りかと思ったが、「その人も」が気にかかり読みを変えた。落葉の元となる木が「その人」の家の木なのだろう。顔を見合わせて、すまなさそうな顔をしている「その人」が浮かんできて、思わず笑ってしまった。

 

いずれにせよ探梅といふ忘れ物 / 島松岳 

下城正臣 島崎の百梅園など梅の名所はある。桜は、校庭や公園のどこでも仰げる。昔は梅が日本人の花の王だったが、その後、探梅への関心興味は薄れ、忘れ物的になった。だが、梅をなおざりにして風流と言えるだろうか。「梅が香にのっと日の出る山路哉 芭蕉」。

小田桐妙女 冒頭の「いずれにせよ」がくせものである。なにに対しての、「いずれにせよ」なのか。どこか旅先から帰ってきた家族同志が揉めているのだろうか?一人旅から帰ってきて、自問自答しているのだろうか?いずれにしても、梅を見る事を忘れてしまったようだ。

 

画家老いし西瓜も筆も鼻も揺れ / 下城正臣 

松永みよこ 「老い」に敏感になると色々思い当たり、やってられないなと思う。なかでも画家の老いは筆の線に如実に表れることは想像できる。画家は老いることで、自在で奔放な線を出せるようになってきたのか。すべてが揺れる世界に住めるのなら、それも楽しそうだ。

未補 老いゆえに、《西瓜》を描く手元が覚束ないのだろう。《筆》だけでなく《鼻も揺れ》るのが面白い。《鼻》が揺れるほど、はげしく顔を揺らしているのかもしれない。また、芥川龍之介の『鼻』に出てくる長鼻の高僧も想起する。《西瓜》の絵は歪であろうが、若くしては描けない傑作の予感もある。

 

子路がゐて顔回のゐる良夜かな / 瀬角龍平 

下城正臣 この句の御縁で、孔門十哲について多少学べた。中国人にはなじみの人々のようだ。優れていて人間的、実

際の治世に参画している人もいる。粛々と師のうしろに付き従っているだけではない。孔子は教え、彼らは実践し進む。その彼らが、今夜はすぐ近くにいる。

阪野基道 十年ほど前、吉川幸次郎全集の『論語』を、一年かけて読了。子路の剛勇快活さと顔回の徳行真面目さを、儒者・吉川教授は孔子とともに愛していたようだ。吉川教授は支那服を着て大学構内を闊歩し、講義をしていたとか。儒教といえば古めかしいけれど、徳のある夜は「良夜」としか表現できないものかもしれない。

 

あの世でもいいねと西瓜愛されて / 竹本仰  

男波弘志 スイカの姿形を観ていると、どこにも嘘がない。噛り付いた後に無限に種を吐き出している大人を観て、自分はいつもこの人は種を吐き散らすためにスイカを食べているのだと思っていた。シャツの前身をびしょびしょにしている姉妹の横にいて、まだ六歳だった自分が、二人の女と不思議な情交を結んでいたのを爪の先が覚えている。

斎藤秀雄 「此の世で愛された西瓜が、あの世に行っても愛される」とも読めるが、「いまここがあの世だとしてもいいね」とも読める。いずれで読んでも、餓鬼棚に供えられる《西瓜》が《あの世》への、水分の多いルートを確保する。《西瓜》は愛された故人のように感ぜられる。

 

健康てきな眼をした猫は不健康 / いなだ豆乃助

森 誠 健康は自由。存分に謳歌した自由も制限のときを迎える。猫の天運は猫のものである。

松永みよこ 猫の目は美しい。だが、どう美しいかと尋ねられたら困ってしまう。猫はもともと不健康や不安、憂鬱の方がスタンダード(主流)で、健康的な目をしていては物足らないのだろう。この句を読み、健康的なものはどこか嘘っぽくて不健康に近いのだと思わされた。

 

オレンジに塗りつぶされた受けこたえ / しまもと莱浮

松永みよこ 「塗りつぶす」という言葉はよく使われるのに、案外強烈だ。接客バイトの新人が、受けこたえのマニュアルをチェックペンで塗りたくって丸暗記しているのだろうか。それとも、「受けこたえ」そのものがオレンジに塗りつぶされたと思う方が不思議で楽しいか。

さ青 塗り潰すなら《オレンジ》は色のことで、答える人物の何かを覆い隠す。《オレンジ》一色だと相手に思わせる画一的な対応なのだろうが、どう画一的なのか想像する時、読み手は自分の中の《オレンジ》のイメージをつぶさに当たることになる。私は笑顔過剰の接客を想像。

 

血は泥に胎凍て地平窯変す / 竹岡一郎 

斎藤秀雄 絶対零度の空間で《胎》は《凍て》、hum(土)から創られたhumanは《泥》へ回帰する。ここは過去か未来か。おそらく何度も繰り返す現在だろう。《地平》が爛れたように美しく色彩を変性させる様は、時劫の過去と未来を、円環状に結ぶ、次元の歪みの感触をもたらしている。

さ青 血は泥に落ちる、混じる、変質する。胎児も胎盤も母体も懐胎も、凍てれば健やかではいられず、それが負荷となって窯変を招くのか。その果てに窯変が訪れるのか。窯変した地平に、血は胎はまだあるだろうか。完成型を得るまでの変遷に、変種の無数の失敗と滅びを思う。

 

斬新な蝶は鼻毛を伸ばしたる / 加藤知子

未補 《蝶》は虫か。ホステスか。人の鼻は蝶の触角にあたるので、伸びた触角を《鼻毛》に喩えていると読める。だが《蝶》が虫であれ、ホステスであれ、実際に《鼻毛を伸ばし》ていると読んだほうが《斬新》さはある。《蝶》は美しくあるべき、という人々の期待を、ユニークに裏切ってくれるのだから。

しまもと莱浮 蝶が口吻を伸ばして、夢中で蜜を吸っているさまに、生命維持のための食欲だけではない、倒錯した恋愛感情のようなものを感じ取ったのかもしれない。それは、感覚的で主観的で直接的な、ナ形容詞の大鉈を振るうことでしか、表現できなかったのであろう。

 

窓をつくる牛の内壁月よくみえ / 斎藤秀雄

阪野基道 ピカソが描く隆々とした筋肉を持つ雄牛の群れ。あるいはミノタウロスの酒宴。それらが壁となって外を塞ぎ、窓のような隙間から光が差し込み、満月が鮮明に見えるのだ。いや、どうも違う。牛が衣服を脱がされるように、皮を剥がされているのだ。屠殺者によって皮を剥がされた牛がずらりと並び、月に照らされている……。瞑目した身体感覚のような世界、あるいは未開部族の祝祭・儀式の趣もある、と言えば飛躍か。

小田桐妙女 勝手に「内壁」を「内襞」と読んでいた。「牛の」からの私の思い込みで、「内襞」のほうが読みやすい。牛の胃の内側は、牛舎の中にいるある一頭のための牛舎。反芻する牛の胃には、窓があるように思えてくる。よく見える月は満月か三日月か、それとも無月か。

 

 

ポテトチップスは せかいを まもるはね

/ ようたろう(小学校1年生)

 

『 俳句短歌誌We 』第14号 を、

2022年8月26日、

参加者及び購読会員等の皆様に郵送しました。

 

#ISBN   978 - 4 - 910652 - 02 - 3

#JAN    1920092010000

発行日 2022年9月1日

発行所 俳句短歌We社

メール haiku_tannka_we@yahoo.co.jp

 

目 次

俳句招待作家「天地有情」 / 野田遊三 

巻頭エッセイ「つれづれに映画、そして空と宙」 / 阪野基道  

川柳特別作品「M Y C」 / しまもと莱浮  

特別寄稿「はるかへの眼差し」 / つはこ江津 

 

俳句・川柳作品  / 石田真稀子 内野多恵子 江良 修 小田桐妙女 男波弘志 柏原喜久恵 斎藤秀雄 島松 岳 下城正臣 瀬角龍平 竹岡一郎 竹本 仰 阪野基道 松永みよこ 未補 宮中康雄 森さかえ 森誠 加藤知子

 

前号俳句ふたり合評 / 江良 修 小田桐妙女 男波弘志 さ青 斎藤秀雄 しまもと莱浮 下城正臣 竹岡一郎 阪野基道 松永みよこ 未補 森誠

 

前号俳句さ青選        

竹本仰の前号俳句鑑賞 

斎藤秀雄「第四の壁」を読む / 竹本仰 

阪野基道「聖痕もしくはヒジリ痕」を読む / 斎藤秀雄 

短詩グラマトロジー 第八回:象徴 / 斎藤秀雄 

古・難・珍季語集(8) / 竹本仰 小田桐妙女 

特別エッセイ「共時性の戦慄」  / 男波弘志 

『兜太再見』のマジック / 加藤知子 

『兜太再見』を読んで / 竹本仰  

 

短歌作品 / 安西大樹 加藤朱美 北辻󠄀一展 斎藤秀雄 弟子丸直美 てらもとゆう 富田桜子 永田義彦 西田和平 西村曜 服部崇 芳樹景子 阪野基道 加藤知子 

 

前号短歌評  / 安西大樹 北辻一展 阪野基道 

 

短歌英訳の試み / 芳樹景子 

「短歌英訳の試み」の裏で / 芳樹景子 

 

日時計と句集『日時計』展紹介 / 加藤知子

共鳴句探訪 / 加藤知子 

ありがとぼいす   

原稿募集・略規   

編集後記 

 

表紙絵:千原蘇堂(熊本市)

装幀:西田和平

 

略 規

① 『We』は、年2回(3月、9月)発行。超結社にて、短歌・俳句・川柳作品発表の場を確保し、相互研さんする場です。詠みと読みの多様性をめざします。

②   参加同人会費は、当誌発行1回につき3千円(含む2冊)。短歌と俳句・川柳の両方に参加の場合は5千円(含む3冊)。

③   購読会費は、1冊1千円(送料込)です。

④   頒布価格は、1冊1千1百円(送料込)です。

 

 

寄 贈 先 一 覧

国立国会図書館 日本現代詩歌文学館 現代俳句協会 千葉県野田市・俳句図書館鳴弦文庫 熊本県立図書館 熊本市立図書館 熊本市・リデル、ライト両女史記念館 熊本県菊池市中央図書館 鹿児島県立図書館 鹿児島県垂水市立図書館 長崎県立長崎図書館 北九州市市民文化スポーツ局文化部文化企画課(北九州文学サロン) 

 

 

お 問 合 せ 先 

俳句短歌We社(ISBN 出版者 910652)

メール  haiku_tannka_we@yahoo.co.jp

 

 

       

 

 

『俳句短歌誌 We』第13号

 

#ISBN  978 - 4 - 910652 - 01 - 6

#JAN    1920092010000

発送日 2022年2月25日

発行日 2022年3月1日

発行所 俳句短歌We社

メール haiku_tannka_we@yahoo.co.jp 

 

目 次

俳句招待作家「空席」 / 未補  

俳句招待作家「うつろ舟」 / さ青   

巻頭エッセイ「スピーチからはじめる短歌入門」 / 安西大樹 

俳句特別作品「聖痕もしくはヒジリ痕」 / 阪野基道   

 

俳句・川柳作品 / 松永みよこ 宮中康雄 森さかえ 森 誠   石田真稀子 内野多恵子 江良修  小田桐妙女 男波弘志 柏原喜久恵 島松 岳 下城正臣 瀬角龍平 竹本仰 いなだ豆乃助 しまもと莱浮 竹岡一郎 加藤知子 

 

特別作品50句「第四の壁」 / 斎藤秀雄   

前号俳句ふたり合評  

前号俳句  藤田踏青選  

竹本仰の前号俳句鑑賞 

俳句エッセイ「蜂の巣考―軽みのこと」 / 男波弘志

古・難・珍季語集(7) / 竹本仰 小田桐妙女 加藤知子  

短詩グラマトロジー 第七回:逆説 / 斎藤秀雄 

森さかえ句集『木星は遠すぎる』評 / 西村楊子 斎藤秀雄  

外山一機作品「あいまいな喪失」を読む / 竹岡一郎 

竹岡一郎作品「騙り部たち」を読む / 外山一機 

 

短歌特別作品「ブーゲンビリア」 / 富田桜子 

短歌特別作品「未生の旅人」 / 斎藤秀雄 

 

短歌作品 / 服部崇 阪野基道 芳樹景子 柳本々々 安西大樹 加藤朱美 北辻󠄀一展 弟子丸直美 てらもとゆう 永田義彦 西田和平 西村 曜   

 

前号短歌評 / 阪野基道 西村曜 北辻一展  

 

短歌英訳の試み / 芳樹景子

北辻一展歌集『無限遠点』評 / 江良修 服部崇 

 

共鳴句探訪・句集紹介 / 加藤知子

ありがとぼいす 

原稿募集・略規

編集後記

 

表紙絵:千原蘇堂

カット:糸魚香

装幀:西田和平

 

 

略 規

①  『We』は、年2回(3月、9月)発行。超結社にて、短歌・俳句・川柳作品発表の場を確保し、相互研さんする場です。詠みと読みの多様性をめざします。

②  購読会費は、1冊1千円(送料込)です。

③  頒布価格は、1冊1千1百円(送料込)です。

 

 

寄 贈 先 一 覧

国立国会図書館 日本現代詩歌文学館 現代俳句協会 熊本県立図書館 熊本市立図書館 熊本県菊池市中央図書館

鹿児島県立図書館 鹿児島県垂水市立図書館 長崎県立長崎図書館 北九州市市民文化スポーツ局文化部文化企画課 

 

 

お 問 合 せ 先 

俳句短歌We社

メール haiku_tannka_we@yahoo.co.jp     

 

 

 

『俳句短歌誌We』第12号

 

#ISBN   978-4-910652-00-9

#JAN    1920092010000

発送日 2021年8月27日

発行日 2021年9月1日

発行所 俳句短歌We社

メール haiku_tannka_we@yahoo.co.jp

 

目 次

俳句招待作家<偏愛的> / 藤田踏青  

巻頭エッセイ『20週俳句入門』に釣られて / つくい   

俳句特別作品「騙り部たち」 / 竹岡一郎  

俳句特別作品「足のまめ」 / 小田桐妙女   

 

俳句・川柳作品 / 竹本 仰 阪野基道 松永みよこ 宮中康雄 森さかえ 森誠 石田真稀子 内野多恵子 江良修 男波弘志 柏原喜久恵 高鸞石   斎藤秀雄   島松 岳 下城正臣 瀬角龍平 いなだ豆乃助 しまもと莱浮 加藤知子

 

前号俳句ふたり合評  / いなだ豆乃助  高鸞石 下城正臣 しまもと莱浮 阪野基道 森誠  他

 

竹本仰の前号俳句鑑賞 

前号俳句亀山鯖男選 

ひとくちエッセイ / 男波弘志 

古・難・珍季語集(6)/ 瀬角龍平 竹本仰 小田桐妙女 加藤知子

短詩グラマトロジー 第六回:濫喩 / 斎藤秀雄 

この一句(自句自解篇) / 江良修 斎藤秀雄 

共鳴句探訪 / 加藤知子 

「北方兵團」を読む / 竹岡一郎 

原爆読本の紹介 /  江良 修  

『たかざれき』書評 / 柳本々々 

『たかざれき』書評 / 高 鸞石   

 

短歌作品 / 永田義彦 西村曜  服部 崇  阪野基道 芳樹景子 柳本々々 安西大樹 加藤朱美 加藤知子 北辻󠄀千展 斎藤秀雄 弟子丸直美 てらもとゆう 富田桜子 

 

前号短歌評 /   服部崇 北辻千展 安西大樹 

前号短歌選評 / 西田和平 

短歌英訳の試み / 芳樹景子 

 

ありがとぼいす  

原稿募集・略規

編集後記 

 

表紙絵:千原蘇堂

装幀:西田和平

 

 

略 規

①   『We』は、年2回(3月、9月)発行。超結社にて、短歌・俳句・川柳作品発表の場を確保し、相互研さんする場です。詠みと読みの多様性をめざします。

②   購読会費は、1冊1千円(送料込)です。

③   頒布価格は、1冊1千1百円(送料込)です。

 

 

寄 贈 先 一 覧

国立国会図書館 日本現代詩歌文学館 現代俳句協会 熊本県立図書館 熊本市立図書館 熊本県菊池市中央図書館

鹿児島県立図書館 鹿児島県垂水市立図書館 長崎県立長崎図書館 北九州市市民文化スポーツ局文化部文化企画課 

 

 

お 問 合 せ 先 

俳句短歌We社

メール haiku_tannka_we@yahoo.co.jp

 

 

     『 短歌俳句誌We 』 第11 号 

         

    I S B N  978-4-903638-88-1

 発送日  2021年 2月 26日

 発行日  2021年 3月 1日

   特 集  加藤知子句集『たかざれき』

 

               We  第 11 号   目 次

 

巻頭エッセイ「密と非密」    ・・・・・・・・・・・・・・・・   柳本々々 2

俳句招待作家「壺乃牡蠣」     ・・・・・・・・・・・・・・・  高 鸞石  5

俳句招待作家「星祭」     ・・・・・・・・・・・・・・・・・   亀山鯖男 6

俳句特別作品「ちがう気がして」   ・・・・・・・・・・・・   亀山 朧 8

俳句・川柳作品    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  9

     松永みよこ 阪野基道  斎藤秀雄   島松 岳 下城正臣 瀬角龍平  

     竹岡一郎  竹本 仰 中山宙虫 廣島佑亮 宮中康雄 森さかえ  

       森 誠 石田真稀子 内野多恵子 江良 修 小田桐妙女 男波弘志 

       柏原喜久恵 いなだ豆乃助 しまもと莱浮 加藤知子

前号俳句ふたり合評 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  21

    いなだ豆乃助 江良 修 小田桐妙女 男波弘志  加藤知子  

    斎藤秀雄 下城正臣 しまもと莱浮 竹岡一郎 廣島佑亮 森 誠 

ひとくちエッセイ   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・   津久井昌也 26

前号寸感    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 藤田踏青 27 

前号俳句男波弘志選   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  28 

竹本仰の前号俳句鑑賞   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  29

古・難・珍季語集(5)・・・・ 小田桐妙女 瀬角龍平 竹本仰 加藤知子 34

短詩グラマトロジー 第五回:超格法  ・・・・・・・・・・  斎藤秀雄 36

この一句(自句自解篇)   ・・・・・・・・・   しまもと莱浮 竹本仰  38

加藤知子句集『たかざれき』への手紙/鑑賞文(竹本仰)  ・・・・・・・・  39

共鳴句探訪    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  加藤知子 47

短歌特別作品「苦海浄土の入口に立つ」  ・・・・・・・・・   弟子丸直美 48

短歌作品  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・   49

   阪野基道 富田桜子 永田義彦 西村曜 服部崇 芳樹景子 柳本々々

     安西大樹 加藤朱美 加藤知子 北辻󠄀千展 斎藤秀雄 西田和平

前号短歌評  ・・・・・・・・・・・・・  西村曜 北辻千展 斎藤秀雄 56

前号短歌一首抄  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 永田義彦 59

短歌英訳の試み  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 芳樹景子 60

ありがとぼいす  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61

原稿募集 略規 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  62

歌集・句集既刊案内 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  63

編集後記 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  64

          表紙絵・千原蘇堂 / 装幀・西田和平

 

 

          略  規

①   『We』は、年2回(3月、9月)発行。超結社にて、短歌・俳句・川柳作品発表

  の場を確保し、相互研さんする場です。詠みと読みの多様性をめざします。

②   購読会費は、1冊1千円(送料込)です。

③   頒布価格は、1冊1千1百円(送料込)です。

 

  

          寄 贈 先 一 覧

国立国会図書館   日本現代詩歌文学館   現代俳句協会

熊本県立図書館   熊本市立図書館    (熊本県)菊池市中央図書館

鹿児島県立図書館   (鹿児島県)垂水市立図書館

長崎県立長崎図書館   北九州市市民文化スポーツ局文化部文化企画課 

 

 

お問合せ先  俳句短歌We社 

         メール haiku_tanka_we@yahoo.co.jp

 

 

 


 

 

2021年3月上旬に発行予定の『 We 』第11号のうち、

竹本仰氏の 加藤知子句集『たかざれき』鑑賞を 発行に先んじて公開します。

 

 

  加藤知子句集『たかざれき』鑑賞

                                                  竹本 仰

 

  加藤知子さんを見る限り、句の中の作者像と実際に接した目の前の作者がこんなに食い違うことは稀であるとよく思う。句の中の顔と、日常の顔が、別人であると常々、そう思ってきた。なぜであるか?それは、俳句という表現手段が、彼女にとってどれだけ意義深いかということと無関係ではない。他の俳句作者のスタンスとは明らかに違うものを感じるのである。

 この第三句集について、私なりに三つのキーワードを感じた。それは、女、闘い、劇場である。一見語りがたいこの作家について、一応のコースを設け、その地図を順に追ってみたい。

1.    加藤知子と女という性

 小生が或る通信句会で彼女と知り合ったころ、鈴木しづ子に傾倒していたと記憶する。その後、やや過激とも思える彼女の句に接しながら、その頃はまだ面識がなかったので、勝手にこんな顔だろうと想像していた。

 少女期をひきずった、どこか少し翳りと痛々しさがあると。

 

すみれ咲くたびカラシニコフの発情

 

 この句がその頃の第一印象として残った。ここへ来るか?という風に性的な表現が乱射されることがある。

だが、少し注意して読んでいくと、性的な表現にはまったくといっていいほどエロティシズムがなく、むしろ、これは彼女が闘うための通行手形なのだと分かってきた。つまり、女性の性が無ければ何事も始まらないという出発地点をちゃんと見定めていたということなのである。

高橋新吉の詩「断言はダダイスト」の一節を思う。

 

〈DADAは一切のもの出産し、分裂し、綜合する。DADAの背後には一切が陣取つてゐる。何者もDADAの味方たり得ない。DADAは女性であると同時に無性欲だ。だから生殖器を持つと同時に、凡ゆる武器を備へてゐる。〉

 

 加藤知子と性。抜きがたい言葉である。

2.闘い

 したがって、彼女の誠意は、この生=性への忠誠で、闘う、否、闘わねばならないということであった。

 石牟礼道子というしるべ、そこには憑依のような演じ手の文体があり、世界があった。水俣という宇宙から現代社会を見返している闘いの記録があった。

3.劇場

 そして、闘いは純潔する憑依、いわば観察者を抜け出した演じ手となり、その劇のクライマックスは、そこにキーワードを当てはめれば、抱きしめる、であると思う。

 

鵜を抱いてわたし整う骨の冴え

 

 傷んだ鵜の魂を抱きしめることによって一体化され自分を感じる、そんなカタルシスが成り立つ。究極にはこの詩人はここをめざしていると、筆者なりに思っている。

 加藤知子の出発点を想定してみると、

 

白桃の傷みはじめを旅はじめ

 

 青春という自覚、それは傷みはじめを感じてからだろうか。

 それがシャッフルすれば、

 

心中に似合う家あり大西日

稲光るたび人妻は魚となり

目隠し取ればここがさいはて衣被

 

 と、こういう、たびたび、その青春回帰の願望が新たな現実と激突している句があり、独特の詩境をかたちづくる。

 

月光に袈裟斬りさるる目覚めかな

ちちははへ返す骨肉したたらす

金魚また死んで時計の逆回り

 

 死生観をうかがえば、こんなところか、日常の安定というものへの志向はさらさらなく、むしろ志士の奮闘の如き烈死をこそ想定せねばならない、このきまじめな生の姿とは何なのか。

 

脳の襞さわぐ鏡の間の万緑

ふらここを漕いで手放す家を焼く

 

 不思議な譬えになろうかと思うが、弘法大師空海に若き日、『三教指帰』なる青春の書がある。讃岐の一地方の豪族の倅として、官の立身出世の道を志すべく都の大学に入るものの、仏道に大きく方向転換し、多くの地縁血縁をうらぎることに至る、言わば出奔の所信表明のようなものであるが、平安時代当時としては類を見ない戯曲形式の構成を試みている。儒、道、仏という三教の区別はともかく、その生涯の大転換をうながすにふさわしい魂のゆえなきざわめきと揺れが、この作者の作句の衝動にも等しくうかがえるのである。

 また、俳句の世界であれば、高柳重信の

 

船焼き捨てし

船長は

 

泳ぐかな

 

の如き身振りだろうか。句境よりも苦境、つねにその苦境を基にした衝動こそが彼女の句をかたどってきた。

 

けしからんヌードのるーる天高く

おしろいを吸いつくす肌冬銀河

だんご虫丸まり人に恥骨あり

 

 一見挑発的に見えるかという性的表現も、作者にあっては星座愛好者が星を食卓上にあるごとく見るように、実は愛すべき日常性でありそれを全幅信頼する信念の如きものがあろうか。作句する材料や手段ではなく、むしろ目的地であり聖地をその日常の性の向こうに想定しているのである。

 

初旅や戦死者の歯をそろえむ

鷹鳩と化し生真面目な引きこもり

菊人形柩に入りてあたたかし

 

 ここでは死さえ抱きしめるものとして、一体化する対象である。

 もちろん、この作者の志向は次々と対象を変え、自身の存在感をたしかめようと格闘はつづく。だが、私はひとり、何をしているのだろうという自己の孤への問いはない。むしろ、問い続けることでつながりを探し続けているのである。

 

鎮まれば水の祭をクラムボン

抱き合い殴り合いけり鬼やんま

 

 水没した五木という或る原郷へ近づくのは、水没の向こうにある村とのつながりを欲するためである。

 

衣や姫や倭の工人の勃起せる

刈るほどに下萌えてゆく王墓かな

万緑の壺のそとなる人の声

 

 失われた古代国・伊都国に近寄り入っていく、もはやその国のキャスト、スタッフとなり、劇化してゆく、一見ミッシェル・ビュトールが小説『時間割』で見せた、理想を追うが故の時間の迷宮への旅、そんな手法を連想させる。

 そして、卑弥呼にはその性を問いかける。もちろん、卑弥呼であり、作者である共通の性へだが。

 

すかあとのなかは呪文を書く良夜

 

 こういう飛び込み型の問いのゆくえにあらわれるものとして、憑依と原郷、そして女性の性への接近と融合があったろう。

 そこへ石牟礼道子が示す「高漂浪(たかざれき)」、つまり「身体は現の世界にいるにもかかわらず、魂が抜けだしてどこかに行ってしまって、行方不明になる」体験に惹かれ、原郷回帰の思いを核として水俣病の運動と連動し、その芸術を深化させてゆく石牟礼道子の論を組み立てていくのは、実にむべなるかなの道行きだったという他はない。

 しかも、表題になっている常少女(とこおとめ)とは、万葉集の十市皇女の〈河上のいつ磐群に草むさず常にもがもな常処女にて〉から来る、言わば永遠の少女性のことであるが、この言葉そのものが筆者加藤知子自身の来し方の行為の姿に他ならない。

 実は石牟礼道子を論じながら、紛れもなく自身の文学という行為を語っており、石牟礼道子に加藤知子を演じさせているのである。この俳句と評論の表裏一体となったのが加藤知子なのであり、この評論が俳句の解説にもなっていることを心して読むのがよいと思える。

 

海に降る風花ならば抱きしめる

 

 ああ、石牟礼道子を抱きしめているなあと思う。

 ニーチェに「深淵を覗き込むものは、また深淵に覗き込まれる」の名言があった。

 だが、加藤さん、あなたの覗き込みたい深淵、まだ足りていないのでしょうね。

 あらためて、常少女の詩人・加藤知子の道行きのここからの再出発に注目している。

 

現代俳句くまもと 2021 

2020年12月1日 発行

 

目 次

刊行のことば    / 加藤知子  

 

作品集(五十音順)

荒ぶる骨      / 青島玄武   

花冷        / 荒尾かのこ  

人生徐行中     / 池田倫子    

桜貝        / 丘 菜月   

冬の鹿       / 柏原喜久恵  

愛し名       / 加藤知子  

猫と野分を     / 吉良香織  

白い挑発      / 榮田しのぶ  

時間を遊ぶ     / 佐藤恵美子  

昼の憂       / 志賀孝子 

鳥になる      / 田上公代  

うしろから     / 寺尾敏子 

鵙の忘れ物     / 徳山直子  

ホテルシャトー   / 中山宙虫  

ユダの裔      / 西口裕美子   

河馬のまね     / 西田和平  

吹かれる      / 西村楊子  

走馬燈       / 萩 瑞枝    

さくらさくら    / 林よし子  

父母曼荼羅     / 星永 文夫 

宙をとぶ      / 真弓ぼたん  

原発商人      / 右田捷明  

水蜜桃       / 汀 圭子  

秋の蟬       / 宮中康雄  

糶り人       / 故・伊東健二    

明日へのあとがき  / 中山宙虫  

 

会員書籍一覧 会員名簿 役員名簿                            

現代俳句協会編『現代俳句年鑑‘21』より活動報告 

熊本県現代俳句協会会則 編集後記         

 

表紙写真:加藤 知子

装幀:西田 和平  

 

 

 

刊行のことば

 熊本県現代俳句協会三十周年記念合同句集刊行に寄せて

    熊本県現代俳句協会会長 加藤知子

 

  当会は、一九九一年六月三〇日に窪田丈耳会長を中心に設立され、来年で創立三十周年を迎えます。このたび、熊本の現代俳句に携わってこられた先輩諸氏の句業の上に、現会員の皆様が新たに集い、合同句集を編むことが出来ました。大変喜ばしく有難いことだと存じます。

 さて、伝統文藝である俳句が継承されていく為に、その伝統は墨守されるものではなく、革新されるものであると考えます。芭蕉は、「俳諧二古人ナシ タダ後世ノ人ヲ恐ル」と宣いました。これは、古人の作品をなぞるのではなく常に新しみが要求されるという、自己模倣をも排除した自己革新性が求められるということ。また、水俣出身の徳富蘆花は「新しいものは常に謀叛である」と「謀反論」のなかで宣いました。それらの言葉に叱咤激励されつつ、時代の風を感じ新題材にも取り組み、表現の枠を広げて、常に自分も作品も更新していきたいも

のです。

 当会の皆様におかれましては、このことは先刻承知として日々精進されていることと存じます。いま、私達は、今年の正月以来蔓延している、COVID―19(新コロナウィルス感染症)禍のリスクで人との行き来やイベントの自粛など、「新しい生活様式」に慣れていかざるを得ない状況に遭遇しています。がしかし、そういう事態と向き合い闘いながらも、最短詩形の俳句を愛する心を変わらず持ち続け、どのような形であれ、句作に邁進し、乗り超えていこうではありませんか。

 自分を見失わない自分を信じて。 

    二〇二〇年十月吉日

 

 

ひとり1句抄(加藤知子選)

ぞんぶんに空をいただく初湯かな / 青島玄武    

春菜摘む少女に羽の生えてくる  / 荒尾かのこ    

青蓬写真の父をさそいだす      / 池田倫子    

初荷旗平和を口に武器を売る   / 丘 菜月     

千の余震欠けたコップのばら開く / 柏原喜久恵    

夜行列車きれいに蛇の穴渡る   / 加藤知子    

手話ひとつ鏡で覚ゆ春の夜      / 吉良 香織    

湯豆腐や母系の余白ゆらゆらす  / 榮田しのぶ    

花うばら溢れる程の母の愛      / 佐藤恵美子   

崩落の岸に桑の実 供物とす   / 志賀孝子   

アネモネの妙な従順さが怖い     / 田上公代  

生き生きと死ぬつもりです実むらさき / 寺尾 敏子   

空海の山に吐き出す桃の種       / 徳山直子   

触れるものみな陽炎のなかにある / 中山 宙虫   

ひもじさは人愛すゆえ雪こんこ  / 西口裕美子   

沈黙ののちの笑いをあさり汁   / 西田和平   

おとといの指を隠して冬桜      / 西村楊子   

水差しの首の部分に愛がある   / 萩瑞枝    

夕桜しばらくここに死んでみる / 林よし子    

母にしぐれ 父に木枯 ぼくに雪 / 星永 文夫   

朧夜のジェラシー包帯がきつい  / 真弓ぼたん   

葉桜や地震に崩れし明治かな   / 右田 捷明   

水蜜桃病みて笑顔の子の皓歯   / 汀圭子    

胸に来て落花鋭利な凶器かな   / 宮中康雄   

月に出て月に帰宅の作業服     / 故・伊東健二  

 

編 集 後 記

 熊本県現代俳句協会の設立30周年を記念する合同句集には、会員23名、準会員1名、故人1名の参加があった。刊行にあたっては、会報・会長文書等で複数回に渡って呼びかけた。作品原稿の受付・入力を中山宙虫が、編集・校正・印刷所との連絡等を加藤知子・西田和平が担当した。また、締切後の本年9月1日に入会した2名の方にも、参加を呼びかけ、1名の参加を得た。

  「ご縁」とは不思議なもの、奇跡的なものである。大宇宙のなかの、銀河系のなかの、太陽系のなかの、地球のなかの、日本のなかの、熊本県のなかに、同時期に住んでいて、かつ、現代俳句という絆で当会に集っている。さらに、そのなかの希望者が、この合同句集に参加された。そして、この合同句集は、国立国会図書館で永久保存され、その他でも、永年保存される所がある。

 なお、当初、発行年は、2021年の予定だったが、新型コロナウイルスの影響を考え、時期を早めた。

 今後とも、皆様のご健吟と、現代俳句がますます盛んになることを願ってやみません。(西田和平)。

 

発行人 : 加藤 知子

編集人 : 西田 和平  

発行所 : 熊本県現代俳句協会  

            

寄贈先一覧

国立国会図書館 日本現代詩歌文学館 現代俳句協会 くまもと・文学歴史館 熊本県立図書館 熊本市立図書館 荒尾市立図書館 玉名市図書館 山鹿市立図書館 菊池市中央図書館 阿蘇市立図書館 宇城市立図書館 宇土市立図書館 八代市立図書館 水俣市立図書館 人吉市図書館 天草市立図書館 上天草市立図書館 熊本日日新聞 鳴弦文庫 北九州市市民文化スポーツ局文化部文化企画課(北九州文学サロン)

 

 


現代俳句協会『現代俳句年鑑2021』    

「俳誌のプロムナード」 P366に 『We』が掲載されています。

 

個を尊重し、多様な俳句作品と多様な読みを超結社で楽しむ /

   

折目つけ齢重ねる更衣     / 江良 修

緑陰や恋よりも濃く眉をひく  / 小田桐妙女

十本の指を束ねると蓮     / 男波弘志

自由ってそこにあったの烏瓜  / 柏原喜久恵

詩の住所叙情のおほい障子や死 / 斎藤秀雄

秋の蛇いこふ死はへいたんなもの / 竹本仰

空中ブランコ見てきてひとり綿を摘む / 中山宙虫

夕立や河馬のまねして口あけて / 西田和平

油絵の乾きて春の旅始まる   / 廣島佑亮

あの世とは皮一枚の日向ぼこ  / 宮中康雄

そのうちに死にますなあと日向ぼこ / 森さかえ

夕月やカフカの謎を私有せず  / 森誠

黒揚羽羅漢の露に連なりぬ   / 加藤知子  


 

      2022年8月27日 改訂

 

『We』は、2016年3月20日に創刊した超結社の俳句短歌誌です。

創刊目的は、短歌俳句発表の場を確保し、相互研鑽することです。

 

創刊の約3週間後に熊本地震が発生し、余震が続きましたが、

皆様のおかげで、年2回(3月、9月)の定期発行を続けることが出来ました。

 

『We』は、短歌でも俳句(川柳)でも、両方でも参加できます。

作品は、短歌はタイトル付き10首(既発表可)、

            俳句(川柳)はタイトル付き10句(既発表可)です。

 

『We』は、国際標準図書番号(ISBN)を付けており、

国立国会図書館に永久保存され、日本詩歌文学館に永年保存される他、

現代俳句協会、鳴弦文庫などでも長期間保存されています。

 

      国立国会図書館ホームページ 「国立国会図書館サーチ」の「簡易検索」

   http://iss.ndl.go.jp/books?locale=ja&any=%E7%9F%AD%E6%AD%8C%E3%81%A8%E4%BF%B3%E5%8F%A5%E3%81%AE%E6%96%87%E5%AD%A6%E8%AA%8C%E3%80%80We 

 

参加申込みは、簡単です。 haiku_tanka_we@yahoo.co.jp  あてに、次の点をメール送信してください。

   ①  お名前、郵便番号・住所、電話番号、所属

   ②  短歌と俳句(川柳)のどちらに参加されるか、あるいは、両方参加されるか

 

作品提出方法は、メール送信をお願いしています。

 

締切りは、6月10日締切りが9月発行分となり、12月10日締切りが翌年3月発行分となります。

 

参加費は、短歌・俳句(川柳)それぞれにつき、1回3千円です(含む2冊、税込み送料込み)。

同時に両方参加の場合は、1回5千円となります(含む3冊、税込み、送料込み)。

購読会費は、1冊1千円(税込み、送料込)です。

頒布価格は、1冊1千1百円(税込み、送料込)です。

 

 

参加費は、作品の送信後、We社の口座あてにご送金ください。

 

お問合せ等は、haiku_tanka_we@yahoo.co.jp あてに、お願いいたします。

Twitterは、https://twitter.com/tanka_haiku_we   です。

 

よろしくお願いいたします。

 

共同編集発行人

 加藤知子(俳句・川柳担当)

   現代俳句協会理事 熊本県現代俳句協会会長 日本現代詩歌文学館評議員

     「豈」同人 「連衆」同人 元「海程」同人 

         句集『アダムとイブの羽音』『櫨の実の混沌より始む』『たかざれき』

 西田和平(短歌担当)   

   熊本県歌人協会会員 We短歌会代表 

   熊本県現代俳句協会 副会長・事務局長 現代俳句協会会員

 

発 行 所  :  #俳句短歌We社

   2020年11月25日発行  弦書房

 

 

 

俳句272句(2017年夏ころ~2020年6月ころの句)

 及び

評論「『高漂浪(たかざれき)』する常少女性 ~ 石牟礼道子の詩の原点へ」を収録

 

  この評論は『 短歌俳句誌We 』第7号の評論に加筆し、

  第40回現代俳句評論賞に応募したものです。

 

  お問合せ。ご注文は、haiku_tanka_we@yahoo.co.jp あてに、お願いいたします。

  

  弦書房でも、通信販売されています。

  https://genshobo.com/archives/10069