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「おにいちゃん、またわたしとお花のかんむりつくるの?」
「そうだね。今日は予定もないし。・・・・・・・今日はね」
「うそだー。いっつもひまでしょ」
「そんなことはないさ。ただ、最近はお兄ちゃんみたいな有能すぎる人は会社では嫌われちゃうからね」
「ママが言ってたよ。おにいちゃんみたいな人って『ふりーたー』って言うんでしょ」
「君、お母さんに俺のこと言ったの」
「言ってない。ママに言ったら、もう会っちゃいけませんって言われちゃうもん」
「・・・・」
つい最近仕事をなくした俺は、昼間から家の近所をふらふらと歩く毎日を送っていた。
そんなある日、この少女と出会ったのだ。
彼女とであったのは、だだっ広い自然公園の小さな野原だった。
野原といってもそこは、雑草や名前もよくわからない花なんかが自由に咲いている、つまり手入れが行き届いていないところ。
そこで彼女は花の冠作りに夢中になっていたのだ。
正直、何でそんなに楽しそうに花冠なんか作れるのか、俺には良くわからない。
それで金が手に入るわけでもないだろうに・・・。
「ねーねー、なにぼーっとしてるの?」
「ああ、ごめん。今日も同じの作るの?」
「うん!・・・それしか作れないし」
なぜだか彼女はいつも同じ花で同じ冠を作る。
そして俺はそれをただ、黙ってみている。傍から見れば変質者のようだ。
「仲のいい兄妹だねぇ。よくここに来ているだろう?」
「え・・・?」
作業服をきた、50代後半くらいの男が声をかけてきた。
にこにこして、優しそうな老人だ。
それよりも、俺がまさか兄に見えるとは驚きだ。変質者じゃなかったのか。目が悪いのではないだろうか、この老人は。
「お嬢ちゃんは、何を作っているのかな?」
老人は中腰になって少女に聞いた。
「お花のかんむり!パパにあげるの」
「お父さんに?えらいねぇ。お父さんもきっと喜ぶだろうね」
「・・・うん」
「あの、失礼ですがここの業務員さんですか?」
「ああ。そうですよ。もうここに勤めて15年ほど経ちますかねぇ」
「こんな広い範囲を手入れするのは大変でしょう」
「そうですね。だからといってはあれですが、この野原のように手入れの行き届かない場所も何箇所かあるんですよ」
そういって老人はがははと豪快に笑った。
「この野原、手入れする予定はないんですか?」
「ああ、近々ここも業者に頼んでやってもらおうかと思っていたんですよ。なんてったってここ、雑草が多くて虫が沢山いるでしょう?」
そうなのだ。ここは蚊などの虫が多い。だから家に帰るころには体中に虫刺されが出来てしまう。
「いつ頃手入れをするんですか?」
「・・・・ここ、お花なくなっちゃうの?」
今まで黙っていた少女が突然口を開いた。
「いやぁ、お花はまた植えるよ。お嬢ちゃんはどんなお花が好きかな?」
「このお花、なくなっちゃうの!?」
少女は作りかけの花冠を持って立ち上がった。
目には涙がにじんでいる。
老人は目を丸くして驚いたような表情をしている。
「別にいいだろう?この花じゃなくても。もともと雑草みたいなもんなんだし」
「これじゃなきゃだめなのっ!!!!これが・・・これじゃなきゃ・・・パパが・・・」
そういった彼女の目からは涙が溢れてきた。
老人はあせったように俺を見た。
いや、こっち見られてもねぇ・・・。
「とりあえず、帰りますね」
「え・・・あぁ。なんだか、すまんね。心無いことを言ってしまったようだ」
「気にしないで下さい。では、これで」
「あ・・あぁ。・・・気をつけて帰りなね」
「ありがとうございます」
俺は少女の手をとり、家路に着いた。
何で泣き始めたのか俺にはわからないが、なんだか気まずい。
まるで俺が悪いようだ。周囲の人々の視線も痛い。
早く泣き止んでくれ・・・。
「あのね・・・」
小声で少女は声を出した。
「ん?」
「パパね、今、病気なの」
「うん」
「それで、パパは、このお花が好きで・・・よく私とあの野原に言って、お花のかんむり作ったの」
「うん」
「わたしがかんむりを作ってパパにあげると、パパはいっつも笑って、わたしの頭をなでてくれるの」
「そっか」
「パパが風邪ひいちゃったときも、わたし、一人で野原に行って、かんむり作ったの。パパにそれをあげたら、パパは『ありがとうね。すぐ元気になるからね』って言って頭をなでてくれるの」
「うん」
「パパはわたしがお花のかんむりあげると、いっつも笑顔になってくれて。元気になってくれて・・・。だから今度もパパに元気になってほしくて・・・。早く帰ってきてほしくて・・・」
「この花で作ったかんむりは、君のお父さんを元気にするんだね」
「うん」
「でもね、君がそんなに悲しい顔をして、お父さんにかんむりをあげても、お父さんは嬉しくないんじゃないかな。元気も出なくなっちゃうんじゃないかな」
「え・・・」
「だからほら、泣かないで。笑いなよ」
「お父さん、元気になってほしいんでしょ?」
「うん・・・」
少女はそれでもうつむいたままだった。
まだあの野原のことが心配なのだろうか。
この花がなくなることが心配なんだろうか。
「しょうがないなぁ・・・。ちょっとそこで待ってなさいな」
「え?」
そういうと俺は自然公園に向かって走っていった。
自然公園の、業務員室。
俺はそこのドアをたたいた。
「すいませーん」
「はいはい。おや・・・君はさっきの」
出てきたのはさっきの老人だった。
ここの公園は、だだっ広いのにこの人しか従業員がいないんだろうか。
「あー・・・さっきの野原のことなんですけど。手入れ、やっぱりしちゃいます?」
「は・・・?あ・・あぁ。いや、まだその予定は無いんだよ。なんといっても、私しか人がいなくてね。予算もあんまりないし」
やっぱりか。この人しか人がいないのか。・・・大丈夫なのか、この公園・・・。
「えーっと、じゃあしばらくはしないと?」
「うーん・・・しばらくっていうか、この先手入れはしないかもねぇ」
「ありがとうございます!」
そういって俺はまた走り出した。今度はあの野原へ。
野原へつくと、とりあえず少女がいつも冠を作っているものと同じ花を集める。
そして、彼女の見よう見まねで花冠を作っていく。
伊達に毎日、彼女の花冠作りを見ていない。
「・・・出来た」
めちゃくちゃ歪だ。しかもなんか、小さい。
手のひらサイズだ。
「まぁ・・・いいや」
とりあえず、彼女の元へと急いだ。
「・・・ごめん、待った?」
「おにいちゃんが、ここで待っててっていったんでしょー。なにしてたの?」
「えー、あのお花は、もうなくなりません」
「え?」
「さっきの、おじいちゃんいたでしょ。あの人が、あそこは手入れしないって言ってくれた」
「ほ・・・ほんと?お花、なくならない?」
「うん」
「う・・・うわぁー・・・。すっごく・・・・・よかったー・・・」
「あ、それと。はい、これ」
「え・・・」
「お父さん元気にしたいんなら、まず君が元気にならなくちゃ。俺が作った花冠。それで君が笑顔になってくれたらなって」
「え・・・これ・・・。これ・・・かんむり?」
「・・・」
うるせー・・・ガキ。作ったのなんてこれが初めてなんだから、しょうがねーだろーが。
黙って受け取れ、このやろー・・・。
「へへっ・・・」
「あ?」
「ありがと・・・」
そういって少女は、冠というには小さすぎるそれを頭に乗っけた。
「あー・・・別に。もう、大丈夫か?」
「うん」
「じゃあ、帰ろうか」
「うん!」
そういって、俺は少女と手をつないで再び歩き始めた。
今度は泣いていないからいいけど、頭に変なもの乗っけてるから、また周囲から痛い目で見られている・・・。
まぁ、いっか