鴻上 うみ & 澤 里奈のブログ

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ザワザワザワ




駅のホームでは、1月の寒い冬の中大人数の人達が電車を待っていた。




今日はあたしが通っている高校の創立記念日で、学校は休み。




大好きな彼とデートに行く約束をした。




「今日はどこに行くのー?」




あたしが聞く。




「んー……
着いてからのお楽しみ!」




と言いながら、隣にいる和也(かずなり)がはにかむ。




やっぱり好きだなぁ。




和也のこの表情。




あたしは、和也のこういうイタズラっぽい表情が好きなんだ。




和也と一緒にいると真冬のこんな寒い天気も暖かく感じる。




とは言ってみても、やっぱり寒いものは寒い。




「舞花(まいか)?寒いの?」




心配そうな顔を向ける、和也。




「だ、大丈夫!
寒くなんて全然ないよ?」




あたしは和也に心配かけたくなくて、咄嗟にウソを吐いた。




「………良く言うよ。
震えてる舞花にそんなこと言われても、全然信じられないんだけど。」




タメ息混じりに和也がビシリと言う。




「うっ……」




「舞花はウソ吐くの下手なんだから、ウソなんて吐かないの。
オレには素直に甘えなさい。」




そう言って、自分のマフラーをあたしの首に巻いてくれた。




「あ……ありがとう」




「ふふっ、どういたしまして。
あっ、それと……」




和也の手があたしの手をギュッ、と握りしめた。




「手も寒いだろうから、
こうやって手、繋いどこ?」




和也の手はホカロンみたいに温かかった。




やっぱり、和也には敵わない。




あたしがどんなに平気なフリをしたって、すぐに見抜かれちゃう。




あたしがウソを吐いたって、すぐにウソだって気付いちゃう。




あたしが人に甘えるのが下手だってことにも気付いちゃってる。




和也はスゴいね。




あたしのことなら、何でも知ってるみたいだよ。




思わず口が緩んだ。




さっきまで感じていた寒さは、もうなくなっていた。




『~~♪
まもなく電車が参ります。黄色線の内側で、お待ち下さい。』




「あっ、やっと電車来た!」




あたしは少しはしゃぎ気味な声で言った。




「寒かったね。
でも電車の中は暖か……」




ドンッ!




「…………え?」




和也が話し終わる前に、誰かが彼のことを押した。




あたしも和也と一緒にホームの下に落ちそうになる。




このままじゃ、死んじゃう!




と思った、その時……




和也があたしの手を離し、あたしをホームの方に押した。




「舞花……愛してる」




ニコッと和也は微笑む。




イヤだっ…!




イヤだっ…!!!




プーーーッ!




「和也ぃぃッッ!!!」




─────────────────
────────────
───────


和也の飛び出した身体は、駅に向かって走ってきた電車に吹き飛ばされた。




彼の遺体は……
見れるようなものじゃなかった。




あたしの大好きな




あたしがこの世の中でたった一人愛した




あたしが生きる意味を見つけた




和也は死んだ。




ねぇ、神様……




和也がなにをしたって言うの?




どうして、和也が死ななきゃいけなかったの?




そもそも……




アレは……事故だったの…?




警察は、人が混んでいて誰かが故意的に押したと言っているけど……




本当にそうなの?




もし警察の言い分が間違いで、




誰かがワザと和也を押したとしたら?




…………殺してやる。




その犯人を。




あたしがこの手で……




殺してやる──────────……




コンコン




「舞華ー?」




部屋のドアのノックと共に男の声がする。




「入るよ。」




ガチャッ




ドアが開く。




「翔ちゃん……」




あたしの部屋に入ってきたのは、隣に住んでいる翔ちゃんだった。




「心配で見にきた。
お前、最近学校にも行ってないらしいじゃん。」




翔ちゃんは、あたしの前にしゃがみ込んだ。




「……学校に行く気がすると思う?」




目の前にしゃがみ込む翔ちゃんに言い放つ。




あれから二週間がたった今、




あたしは学校に行く気にもなれなく、毎日自分の部屋にこもっていた。




両親はただただ仕事に没頭し、




あたしのことなんて気にもかけない。




まぁ、慣れたけどね。




「………………。」




翔ちゃんは、なにも言わなかった。




ただあたしに切なく微笑んだ。




翔ちゃん以上に、あたしと和也のことを理解している人はいない。




だから、翔ちゃんは知っているのかもしれない。




和也があたしにとって、どんな存在だったのかを……




「舞華」




「…………ん?」




「なにか食べた?」




「……なんにも」




「オレ、なんか作るよ。」




と言い、翔ちゃんは立ち上がった。




「………いい、いらない。」




「いい加減ちゃんと食べないと。」




「…………食べたくない。」




と言った瞬間……




グウゥゥーー



お腹が鳴った。




「お腹空いてるじゃん。
ほら、下行こ?」




翔ちゃんは、クスクスと笑う。




「………わかったよ。」




人間って不便なものだね。




食べる気がしないのにも関わらず、
体は食べ物を求めるなんて……。




あたしは翔ちゃんとリビングへ行った。




二週間もなにも食べてないあたしの身体は、リビングに行くだけでもさすがに辛かった。




翔ちゃんが食べる物を作ってる間、私はソファーに寄りかかるように座った。




なにをしても考えてしまう。




和也のことを。




「……………っ!」




考えるだけ自分がつらくなるのはわかってる。




けれど、どうしても考えるのを止められない。




だって……




和也は、あたしの全てだったんだよ?




頬から雫が落ちた。




「ふっ……うっ……うぅっ……」




声が抑えられない。




翔ちゃんに、泣いてるの気付かれたくないのに………




「……………舞華」




さっきまで台所にいた翔ちゃんがあたしの隣に座った。




「泣きたい時には、泣いていいんだぞ?」




そう言い、あたしを抱き締めてきた。




翔ちゃんの優しさに、涙が止まらなくなった。




「うぅ~~っ……!!!」




あたしは子供のように泣き続けた。




翔ちゃんは、それ以上なにも言わないで




ただただ、あたしを抱き締めた続けた。