「左手をお隠しなさい」

罪の色に染まった左手を僕はポケットに突っ込んだ。

「右手をお隠しなさい」

偽善に満ち満ちた右手を僕はポケットに突っ込んだ。


足を前に進めながら僕は貴方の横顔を盗み見る。

と、小石に躓いて僕は前のめりにこけた。


「そこの鏡を御覧なさい」

貴方の指す鏡に目を遣った。


傷付き血に塗れた僕の顔は、

さも貴方の生き写しのようだった。

傷一つ、血液の一滴でさえも違えることなく貴方と同じで、

漸く僕は笑って貴方に言える。



『ただいま』

小さな穴の

奥の底の方で

君は天に向かって手をのばす

それは陽の光に輝き

誰かの涙という雨に濡れそぼつ

穴の近くで転んだ少女

君に気付き 手を差し伸べる


君はその差し出された小さな手を払った

なぜなら

少女の手は罪に塗れ

いくつもの嘘を握っていた


その美しさゆえ穴から出られない君は

やはり美しいままである

衝動に身を任せて動くのは短絡的な人間のすることで、くだらないと思っていた。

しかし、今の私は完全にそれである。

湧いて止まない感情に頭を支配されて出した結論は、本当に衝動的なもの。

それ以上でもそれ以下でもない。


決めたことは実行に移さなければ気が済まない。

決意してから時間が経ち、段々とその願望は薄らいできているような気もする。

だからといって「やっぱりやめよう」と掌を反すようなことはできないし、したくない。

たとえ、そこに恐怖心が現れようと、誰かに引き止められようと。


もうすぐ彼に会える。きっと会える。

そう信じて私は来たるべき時を待っている。

阿呆のような考え方だろう。ひとは私を見て嘲笑を堪えられないだろう。

それでも、私は決めたことはやり遂げる。


失敗した時のことを考えると、少し二の足を踏んでしまう。

しかしながらそれはもう行動に起こすしかないものである。

誰に何と言われようと、私はもう後戻りはできない。

前に進むのみ。


失敗する確率の方が圧倒的に高いが、私は一縷の希望に賭ける。

もうすぐ彼に会えるのだ。きっと、必ず。