日本の食文化の魅力
「いただきます」という神事
意味であり、食材そのものに対する感謝の気持ちを
表す言葉である」考えてみれば、食べ物は、肉にしろ、
魚にしろ、野菜や穀物にしろ、すべてもとは生き物である。
その生き物の命を頂いて、我々は日々生かされている。
その事への感謝が「いただきます」に込められている。
食事そのものが、日本人にとっては生命をいただく神聖なる
儀式、「神事」なのである。わが国においては、農作物を育てる
農作業も、それを食べ物として提供する料理も神事である。
天皇が皇居の田で稲を育てられ、毎年の新穀を天照大神に
差し上げる新嘗祭は、天皇が執り行われる最重要の神事の
一つである。また伊勢神宮では、毎朝夕、米、水、酒、塩、
海の幸、山の幸を差し上げるという日別朝夕大饌祭
(ひごとあさゆうおおみけさい)という神事が、この
1500年間絶えることなく続けられている。
「調理」という神事に携わる使命感
料理人は、食材の命をいただいて、それを食べ物にすると
いう神事を行っている。自分は、そのような尊い神事を
任されているという使命感が、たとえ無意識の中にでも
潜んでなければ、何代にもわたって愚直においしい料理を
追求するなどということはできない。単なる金儲けが目的
だったら、「看板に偽りあり」でも何でも、もっと手っ取り早い
道に転向してしまうだろう。そして調理が神事であるからこそ、
いただいた食材の命を最大限生かしておいしい料理にしようと
努力し、さらにはいただいた人の健康にも良い料理を提供したい
という思いやりが働くだろう。日本食がおいしく、かつ健康的だと
いう特長は、多くの料理人が先祖から子孫へ、先輩から後輩に
伝えられる伝統の中で、神事に携わる使命感を感じとって、
愚直な努力を何世代も続けている所から来ている。
こういう努力が積み重なって、いまや世界の人々に
好かれるほどに、日本料理はおいしく健康的になったのである。
日本料理に携わる人々が(それはかならずしも日本人に
限らないが)、この日本の文化伝統をより自覚して取り組む
ことで、日本料理はさらに世界の人々に愛されていくだろうし、
また、調理人のそのような生き方自体が海外の人々にも貴重な
示唆を与えるだろう。そうなれば、わが国は国際社会に対して、
ますます良い影響を与えていくだろう。



