まだまだ文字にするには心がゆがみいびつなままですが、

これはもう一生戻ることはない、ただへこんだところに蓋をして

絶望的感情を思い出さないように生きていくだけだと思うので

私たちの大切な大切な娘のことを書き残したいと思います。

 

本格的に妊活をはじめて1年ほどで、陽性反応が出ました。

不妊治療がうまくいかず、いったんお休みしたタイミングでの自然妊娠でした。

生まれて初めて見る2本線にただただ驚き、夫と手を取って喜びました。

 

当時私は34歳。出産予定日には35歳になっている予定でした。

高齢出産と言われる年齢だし、人生初の妊娠出産に不安がないといえば嘘になるけれど、

その頃はまだ赤ちゃんが元気に生まれて来るって信じてた。

 

まずは不妊治療で通っていたクリニックで診察。

「おめでとう。がんばったもんね」と先生から言ってもらえて思わず泣きました。

 

その後は地元の産婦人科で診察を受け、心拍確認。

大きさも問題なく、母子手帳をもらって4週ごとの妊婦健診が始まりました。

 

そして私を待ち受けていた、壮絶なつわり。

視覚聴覚嗅覚すべてが敏感になり、一日20回くらい吐いてました(所在地はほぼベッドかトイレ)。

食べられないのでアイスボックスを食べたり点滴してもらったり、

職場にお願いして在宅作業させてもらったり、1ヶ月ほど休職したりしてなんとかピークを乗り切りました。

 

ようやく地獄から抜け出しかけた頃の妊婦健診。夫と二人で行きました。

その頃はもう胎動も感じられる時期で、でもあんまり活発に動かないなぁとは思っていました。

とはいえ初産だし私が鈍いだけなのかな、と。

 

診察室でお腹にエコーを当てた先生は、まず性別を教えてくれました。

「お知りになりたいですか?・・・女の子ですね」

わ~!と声を出す私の横で、夫はぽかんとしていました。

後から聞いたのですが、夫はこの少し前、見知らぬ小さな女の子に手を引かれる夢を見たんだそうです。

予知夢みたいでびっくりしたと。

「あれは娘ちゃんだったのかなぁ」

さみしそうに、でも少し嬉しそうに、そう言っていました。

 

性別を教えてくれた後、先生が気になるところがあると。

「心臓にプチンと小さな嚢胞があるから、詳しい先生に見てもらいましょうね」

先生は深刻そうじゃなかったし、気にしなくてもいいものかもしれないと言うので

さほど気にせず、むしろ自分の尿糖(だったかな?)が高かったことをスマホで調べていました。

 

しばらくしてベテランの先生がエコー診察。

じっくり時間をかけて何度もお腹の上に機械を滑らす先生の表情を見て、

これはただごとじゃないのかもしれないと一気に緊張が走ったのを覚えています。

 

ようやく口を開いた先生が言ったのは

「心臓の弁がうまく作られていないと思われます。病名でいうと、おそらくエプスタイン病」

 

エプスタイン病。

この文字を見ただけで、今でも涙が出ます。本当に本当に本当に、つらい。

 

そして思い出すのが、その直後の先生の言葉。

「もうこの週数だし、堕胎することはできません。どうか最後まで産んであげてください」

 

は?そんなの当たり前じゃん。

どういう意味?

堕胎を考えなきゃいけないくらい重い病気なの?

 

「赤ちゃんはどうなるんですか?」

「今後積極的に治療していくことになります」

「ちゃんと生まれてこれるんですか」

「大きな病院を紹介するので、そちらで診てもらってください」

 

ああ、この子はだめかもしれないんだ。

生まれてこれないか、これたとしても重い病気を持っているんだ。

私はその場で泣き崩れ、夫に支えられる形で診察室を出ました。

 

気持ちがおさまるまでここで休んでいて、と看護師さんに案内された別の部屋で

エプスタイン病のことを調べまくりました。

 

軽症から重症まであるけれど、胎児期に見つかった場合、重症リスクが高いこと。

重症の場合、胎内で亡くなることが多いこと。

生まれてこれたら手術で治療していくこと。

原因は不明。

 

 

なんで。

なんで私の子が。

 

 

家に帰って夫と二人、外が真っ暗になるまで布団に潜り込み、静かに泣きました。

このとき願ったのは、どうか生きて生まれてきてほしい。ただそれだけ。

 

生まれてきてさえくれたら、どんな重い病気があっても、どんな重い障害が残っても

私たちはあなたを幸せにするから。

あなたに人生を捧げるし、どんな高額な治療でも受けられるようにするから。

だからお願い生まれてきて。

ただそれだけ。

 

 

そしてこの日から、私たちの長くて短い、おそらく人生で一番つらくて苦しい日々が始まりました。

 

 

 

一つ言いたいのは、娘の病気は親の年齢や遺伝、ましてや不妊治療(ホルモン治療など)が

原因といったことはなく、さまざまな要因が偶発的に重なって起こるものだそうです。

はっきりとした原因があるというものではない、と主治医の先生方から説明を受けました。

 

私も病気がわかったあとはとにかく自分を責めました。

妊娠初期に階段を踏み外した衝撃が影響したんじゃないか。

つわりで食べられず栄養が不足していたからじゃないか。

そもそも私にそういう病気の遺伝子があったんじゃないか。

 

でも、違うみたいです。

 

もしもお子さんが同じ病気で、自分を責めてしまうお母さんがいるなら、

それはまったくお母さんのせいじゃないよって言いたい。

赤ちゃんの心臓が、たまたまちょっと設計図を間違えてしまっただけ。

誰かや何かのせいではないんだよ。