以前、自動巻時計は手で巻くなと言う動画をアップしましたが、

動画では分かりにくいかも知れないのでブログを作りますと言いつつ、忙しさにかまけて遅くなってしまいました💦
なぜこれを以前から言い続けているかというと、本当にこの香箱受け(動画内では1番受けと言っていますが、一般的には香箱受けと呼ぶのが正しかったかと思います。すみません💦)と言う部分を摩耗させるとどうしようも無くなって、正規代理店であってもスイスから部品を取り寄せたり、逆にスイスに送ったり、場合によっては修理不可と言う事も有るからです。
汎用ムーブメントの場合で小さな代理店や修理業者だと、仕上げの柄が違うものやメッキの色の違うもので代用する事も可能ですが、あくまで最終手段であり後に改造されているなどの指摘を受ける可能性も有ります。

このようにさせない為には、やはり定期的なオーバーホールをするしか無いのですが、時計好きの方は複数本お持ちの方が多く、不具合の出ていない時計をメンテナンスに出すというのは中々難しいのが現状だと思います。ですのでなるべく手巻で巻く事を避けて機械を摩耗させないようにするしか無いのではという考えです。
もっと正確に言うと摩耗したら本当に困るのは画像ですでに削れて金色が見えている部分よりは、リューズからゼンマイに繋がる間の部品である丸穴車と言う歯車がセットされるアーモンドやラグビーボールのような形をした部分が削れるのが1番怖いのです。


下の拡大した画像はお客様がおっしゃるには購入後8年目の時計ですが、ラグビーボール部分の側面のメッキが少し剥がれて来ていますのでこのまま使い続けていたら確実に削れていたと思います。

そして動画では長くなり過ぎると思い触れませんでしたが、リューズを取り付ける巻真と言う部品にも手巻きし過ぎると大きな不具合につながる場合が有ります。
これは香箱受けの裏側ですが、巻真が傷んでいた為に触れる部分が削られてしまっています。巻真は機械で1番外に近い部品ですので様々な理由で傷んでしまいます。また時間のセットや日付のセットの為にどうしても動かす部分ですので、そのうえ手巻きを多用するとより摩耗が進行しますし、香箱受けだけで無く機械のメインである地板と言う自動車でいうシャーシのような土台の部分にも影響を及ぼす事が有ります。
そちらは摩耗したサンプルが有りましたら、また何かしらの形で公開したいと思っています。

これまでのサンプルはETAと言うムーブメントメーカーの2824系と言うものでしたが、同じくETAの2892系でもやはり手巻きし過ぎる事で同じ様な部分を摩耗させてしまいます。

こちらはカルティエやブルガリと言ったジュエリー系の時計に多く使われていますし、クロノグラフやパワーリザーブ、フルカレンダーなど様々な追加機能の付いた時計のベースになっているのでより多くの時計に搭載されていると思います。そしてその様な時計は基本修理代金がそもそも高い事が多いので、更なるご負担を強いられてしまいます。

では削れたらどうなるかと言うと、まずは削れた金属粉がその他の部品に挟まって止まってしまうと思われます。運悪く動き続けた場合はその他の部品も削って様々な箇所で摩耗を引き起こす、部品が破断しその衝撃で普通の油切れでは壊れない部分が破損してしまうなどが有ります。

機械は部品同士が噛み合って出来ていますので1箇所不具合が有るとその周りの部品も劣化させてしまう事が多々有ります。
ここ最近では時計の機械部品の流通量が減り、値段も少しずつ高くなっていますので、劣化しているからと簡単に交換も難しくなりつつ有ります。

せっかく入手された時計を出来れば長く愛用して頂きたいと思っておりますし、手放される場合でも破棄するのでは無い限りは、出来るだけ良い状態を保っておいて頂ければトラブルを回避出来ると思いますので、ある程度使われたら無理をさせ過ぎないようにして頂ければと願っております。