メディアリテラシーとは、有象無象あるメディア報道の真偽を自分で見極めることのできる力のことである。

 

現代においてメディアには、TV・新聞・雑誌・ラジオ、そしてインターネット……インターネットにはSNSやブログといった個人でも情報発信できる物から、大企業や公的機関のウェブサイトまで様々な形態が存在する。

 

モノ選びに関しても、メーカーのプレスリリースに始まり、雑誌やネット上のレビュー記事、レビューサイト、通販サイトにぶら下がった個人の購入レビュー・感想欄まで幅広いメディアが存在する。

 

レビューサイトには、提灯記事も混在するし(スポンサーから広告収入を得るサイトは製品のレビューにおいてネガにはあえて触れない傾向があるし、記事体広告と編集記事の差は素人目にはわかりにくいだろう)、個人の情報発信は、発信者の審美眼や文章能力、あるいは掲載した写真の出来栄えに影響される傾向もあり、正しい判断にはメディアリテラシーが不可欠だ。

 

ところでブームやヒット商品は、広告投下費用やマーケティング予算によって作ることもできる…すなわちスポンサーからの仕込みによってコントロールされている現実をご存知だろうか。

 

例えばナントカさまに世の中高年女性が熱狂したといわれる「韓流ブーム」だって最初は仕込みであったかもしれない。韓流スターと称する人物が来日の折にあえて地方空港から入国させ、お金でキャスティングした「熱狂的な大勢のファン」にキャーキャー騒がせる演出をした場面をメディアに「報道させる」手法。

 

やがてその報道を見て感化された大衆が本当に騒ぎ出す。積まれているだけの薪が、着火剤によって燃え上がることもあるのだ。

 

またネット上のレビューサイトなど、アルバイトライターがプレスリリースを読んだだけで、現物も見ずに書いたと思われる浅い内容も多い…現物を見たとしても自腹で購入して真面目に活用して書いているとは、到底思えない内容のものも散見する。

 

老舗出版社が刊行する「モノ雑誌」の類だって、マニア目線で深読みすると「お前、記事書く前にもっと勉強しろよ」というものも多い。

 

ある雑誌にいたっては高級万年筆の特集において、「大人の男たるもの、いつかはこんな高級万年筆でさり気なくカード支払いのサインをしてみたいものだ」と結んでいた。はぁ?万年筆で複写のクレジット伝票にサインできるかよ……噴飯物である。

 

一昔前に聞くようになったスティルスマーケティングというのも、わかりやすく言えばネット上での情報操作である...と言って言い過ぎであれば、マーケティング目的での情報の編集行為と呼べるだろう。

 

もちろん情報入手の初期の段階では、製品にまつわるこれらの情報は大いに参考になろう。ネット特有の利点としては、初期不良や故障に関する情報が迅速に広まったりもする。ようは情報や評価を鵜呑みにせず、新たな商品を知る端緒であるくらいに捉えておくと良いのではないか。

 

情報が何のためにどのようにして世の中に存在しているのか。現代の消費生活においては、その構造も勉強し知っておいて良いことだと思う。

*

 

筆者はモノ選びにおいても、とことん「現物主義」にこだわる。モノ選びの第一歩は、まず余計な知識のないところで、そのモノに触れて自分の感性を見極めてみることだ。

 

実際に自動車も腕時計を選ぶことも、現物を見て...見るだけでは不十分、可能であれば触れてみると、当初の印象が大きく変わることも多いものだ。

 

欲しいモノか欲しくないモノか、必要なモノか必要ではないモノかを見極めるのに、他人やメディアの評価は一切不要。自信を持った判断をするために審美眼を磨く。失敗も成長には必要であるから、時として放蕩も必要となる。

 

モノ選びに限らず情報過多の現代社会で生きていくことにおいても、「メディアリテラシー」と「現物主義・現場主義」は最重要課題の一つだと思う。

 

モノ選びの審美眼は、一朝一夕には磨けないのである。