吾が手は神の御儀御手也……。

 

 というわけで、エターナるズ第1回は『SCENARIO』原作:Magreat(マグレイト)です。

 この企画は、私が創作活動を始めてから今にいたるまでに生み出してきた厨ニ的産物や怪作になれなかったナニカなどを赤裸々に紹介し、没案鎮魂することを目的としております。

 

 まずは当作のあらすじから見ていきましょう(以下うろ覚えのためほぼテキトー)

 

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【あらすじ】

 どこにでもいる無個性な高校生・松坂恵のもとに、ある日奇妙なカセットラジオが降ってくる。ラジオにはテープも何も入っていないのだが、そのスピーカからは確かにガサついた何者かの声が「あなたの不幸を、誰かに分けてあげないか?」と語りかけてくる。恵とラジオとの奇妙な出会いは、不審火や奇妙な連続通り魔事件をつぎつぎに町へと呼び込んでいく。幸せと不幸は表裏一体、しかしもしもそれを恣意的に操作できる者がいるとすれば……?人の不幸を司るラジオたちと、彼らを最大多数の幸福実現のために利用しようとする秘密組織「LIFE LINE」、暗躍する影。いったい恵のたどりつく未来とは?人の純粋な悪意と疑心、超能力が織りなす静かでダイナミックな心理戦が、いま幕を開ける。

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 それっぽく書いてあるけれど、8割がたは今しがた考えたものです。

 原作者のMagreat氏は一体、何を思ってこんなものを作ろうとしたのでしょう?まあ私ですけれども。

 

 『SCENARIO』は私が中学3年生の頃、とある事情で調理師の夢をあきらめ「何者かになりたい」という100%の自己顕示欲から始めた創作活動の第一子……ようするに処女作でした。

 当時の私は人に誇れるものなど何もなく、ただ漫然と観ていたテレビアニメに影響されてサブカル業界に携わりたいと願ったのです。

 無知蒙昧なガキですね。

 しかしながら彼の生み出すものには、確かに自身の「好き」が詰まっており、とても正気の沙汰とは思えないプロットを平然と肯定してしまえるおおらかな心こそ彼の持ち味だったのだと今では考え、ポジティブにとらえています。

 

 前置きが過ぎました。

 本企画では、没となったアイディアたちを「①要素分解」「②エターナる原因となった決定打」「③昇華」の3つのプロセスで見ていきたいと思います。

 

 

①要素分解

 本項は主に「ネタ拾い」と「今後の展開」をテーマとし、作品の各要素がどういった意図により生み出されたのかを紐解いていくものです。

 興味がなければ次項にお進みください。

 

Ⅰ.なぜラジオ?

 当時、『Occultic;Nine』にハマっていたからです。EDは今でもしばしば聴きます。亜咲花氏の虚を裂くような歌声とA-1の精緻でスタイッリッシュなアニメーション、りょーたすの爆乳がいつでも脳裏によみがえるくらいに。

 

Ⅱ.本作における「不幸」の位置づけ

 本作での「不幸」は概念でありガジェットです。ここには質量保存的な考えが採用されており、仮に私へ降りかかる災難を-xとしたとき、私のよく知る誰かが+xだけの得をするという感じでしょうか。

 あらすじにある「幸せと不幸は表裏一体、しかしもしもそれを恣意的に操作できる者がいるとすれば……?」の真意としては、この事象Xについて生じる-xを自分以外の誰かに肩代わりさせ、それによって生じる+xの利益を享受する悪者がいる、ということになります。あるいは、本来自分がこうむるはずだった-xを他の誰かに押しつけ、+xの利益を得てプラスマイナス0にしよう(=何も起きなかったことにする)ということも可能でしょう。

 

なんて長々と説明しましたが、事象Xを幸せと感じるか不幸と感じるかなんて人それぞれだろ!とは思うので、これはまあまあ幼稚な設定でした。それに具体例も上げづらいですし、扱いにこまる設定だと思います。

 

Ⅲ.今後の展開

 すみません、何ぶんかなり前の作品なので憶えておらず……。

 オチとしては、Ⅱにて説明しました「本来自分がこうむるはずだった-xを他の誰かに押しつけ、+xの利益を得てプラスマイナス0にしよう(=何も起きなかったことにする)」というのを利用して、

 主人公である松坂(これは当時の私自身の投影です)が、冴えない人間になる原因となった過去の事象Xをなかったことにすることで、今よりも幾分かマシな人生を手に入れるというものだったと記憶しています。

 

 過去の事象Xについては伏せます。もっともその他責的な考えは褒められないものの、今の魅力のない自分をどうにかしたいと思い、それを創作の原動力としていたことについては、一定の理解を示したいと思ってしまうのは私の甘さなのでしょうか。

 

 

エターナる原因となった決定打

 本項では、なぜ私が当作をエターナると決断したのか。決定打となった要因を説明いたします。

 

要因Ⅰ.つまんねえから

 これを学習ノートに書き始めたのは中学3年の夏だか秋、そして書くのをやめたのは卒業間近の2月か3月でした(このアバウトな記憶すら本当か怪しい)。

 正確にはわかりませんが、当作がつまらないと気づくのに5か月くらいはかかったのではないでしょうか。

 妄想というより盲想とでも言うべき時間でした。

 

 本作はあらすじだけ読むとサスペンスか超能力推理ものの展開が連想されますけれど、

 実際は4人くらい設定していたヒロインズとお寒いやりとりをする、ハーレムとは名ばかりのままごとラブコメです。

 別にそれはいいのですが、ラブコメが書きたいのなら不幸がどうとかの設定いらんかったやろ!という話でしょう。

 

 このシリアスともラブコメとも取れる要素は、これも当時の流行『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』によるものだと推察されます。でもあれは入間人間氏にしか描けない世界観であって、それの猿真似ならともかく、好きだから真似るのは一芸に秀でていなければこっけいなだけです。

 

 

今回は初回なので、この一つだけにしましょう。

 

 

③昇華

 本項では、当作がどうすれば面白くなったのか、ほんの少しだけ考えてみます。

 ほんの少しだけです。作品はゴミと違ってリサイクルができません。世に出さなければ、アイディアは代謝されず体内に老廃物として残り続けます。

 私がこの企画で行っているのは、代謝ではなく、あくまでも没案が一種の毒として自分の体内を今でもめぐっていることを再認識するためのものであることを忘れてはいけません。

 

案Ⅰ.「不幸」の性質を定義し、超能力もののガジェットとしてできる限り視覚化する

 『SCENARIO』を超能力サスペンス作品として面白くする前提で、

 面白い超能力ものに共通するポイントは?と私が問われれば、それは「いかに小難しい概念を簡略化・視覚化しているか」だと答えます。

 

 『ID:INVADED』を例に挙げましょう。この作品では殺人事件における犯人の殺意をデータ化し、仮想空間イドの中に出力。イド内では事件当時のようすが再現されるのですが、そこに犯人の殺意という無二の要素が視覚化され影響することで、主人公である探偵や警察組織は手がかりを探していきます。

 殺意をデータ化し視覚化する、この一見よくわからないシステムがその実魅惑的なサスペンスのエッセンスとなり、イドは独特な傑作SFミステリーとして完成しているのです。

 

 近年、作中の登場人物が実はマンガやアニメのキャラといったメタ展開も増えていますが、これもメタフィクションという概念の視覚化ともとらえられます。これを活用すれば、もう少し厚みのある展開を期待することもできたのではないでしょうか。

 

案Ⅱ.キャラクターの人間臭さとフィクション味の塩梅を調整する

 私が思うに、ですが……ライトノベルにはリアリティがありながらも、こんなヤツおらんやろ!という性質をもつ2.5次元的なキャラクターが絶対的に愛される傾向があります。

 

 20年前ならともかく、昨今のラノベはメディアミックスを前提として取り扱われることが一般常識となっており、当然マンガ化やアニメ化もするものです。

 2.5次元の「2」の部分がココ。

 性格や生活臭さがデフォルメされ、手に取りやすくなっていなければ、キャラクターを文字の羅列から取り出して立体的に動かそうとしたとき途端にアラが出ます(芝居臭さみたいなものでしょうか)。

 

 『SCENARIO』のヒロインズは義妹(笑)や幼馴染(笑)、巨乳で垂れ目の後輩(笑)、あたりのキツいクーデレ先輩(笑)など属性で見ればいかにもサブカル臭がプンプンにおってくるのですが、属性とはカテゴリーでありキャラクター本来の魅力ではありません。それを履き違えていた厨ニの自分には、顔を洗って出直してほしいと思います。

 

 そして2.5次元の「3」の部分は、有り体にいえば親近感です。これは上記のサブカル臭さや萌えと相反するものですが、親近感の湧かないキャラクターにどう感情移入しろと?というだけの話でしょう。

 『SCENARIO』のキャラクターとは、当時の私の自己顕示欲のいくつかある表現パターンのどれかに過ぎなかったため、親近感など到底抱くことなどできません。

 しかしながら、これは私自身もまだ扱いきれていない要素なので、創作初心者の皆さまはいっしょに鍛錬してゆきましょう。

 

案Ⅲ.ラジオ越しに始まる恋

 『きみの声をとどけたい』みたいにすれば、よかったんじゃないかなって。

 おとはちん可愛いので。

 

 

以上です。

 

お付き合いいただき、ありがとうございました。

次回のエターナるズでお会いしましょう。

 

watatsu1402

 

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【次回予告】

恋した君の一秒後は、君じゃなかった。

 

次回、『日常は嘘ヅキで潤っている。』

お楽しみに!

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