友人にヘルプマークをいつもバッグに着けている女性がいる
彼女は一見するとガタイも良くて健康そうに見えるが、時々持病の影響で貧血を起こして倒れることがある
それなのに彼女は今、ヘルプマークを外そうかと考えているそうだ
「世の中って冷たいわよ。真っ青な顔して優先席前に行きヘルプマークを見えるようにしても、見て見ないふり誰も席なんて譲ってもくれないからね」
一見して分からない身体の不具合、実は私にもある
私は事故で5歳の時に片耳の聴力を失った
両親は名医と聞けば片っ端から私を連れて行き、最善の治療と手術を施してくれたが、努力の甲斐なくかすかな聴力は取り戻したが、以前の様には聴こえないままだ
小学校低学年で2回の鼓膜再生手術を受けた私は、耳の後ろに大きな手術痕がある
小学校5年生でクラス替えをした時に同じクラスになったA子ちゃんは、それはそれは高慢ちきでとっても意地の悪い子だった
芸能人の〇〇の従妹というのが自慢の種で、「サインをもらってあげるね」と言っては取り巻きを増やしていたが、芸能人にカラキシ興味の無い私は、特にA子ちゃんのことは気にも留めなかった
それがとても気に入らなかったのだろう、ある日を境に私に意地悪なことを言うようになった
「やだ~、karinちゃんの耳の後ろって気持ち悪い」とわざと聞こえるように言い、取り巻き達と笑うことは常だった。
A子ちゃんには、手術の事や左の耳は聴こえないということを話したが、それでも意地悪はやむことはなかった
ある日は、わざわざ私の聴こえない方の耳の横に立ち何か小さな声で話したと思ったら、「先生、karinさんにちゃんと伝えているのに協力してくれません」と言いつけ口をされたこともある。
そんな様子を見ていた仲良しの子達が、「昨日A子ちゃんのことをママに話したの。そうしたらkarinちゃんのママに言うって言ってた」「うちのママもA子ちゃんのことを先生に言うって言ってた」と言い出した。
これはマズイ・・・・そう思った私はその日の学活の時間に手を挙げてみんなの前でこう話した
私は小さい頃に片方の耳の鼓膜を事故で失くしました。
だから、片方の耳が全然聴こえません。
もし私に用事がある時には私の右側の耳に話しかけてください。
そして、A子さんに質問があります。
どうして私の耳の後ろの傷を気持ち悪いと言って笑うのですか?
もし、この傷のことでA子さんに迷惑をかけているのならば謝りますから理由を話して下さい
すると、A子の顔がみるみるうちに真っ赤になっていく
先生は黙ってA子の事を見つめていたが、「本当にkarinさんの傷を笑ったのですか?」と彼女に尋ねた
小さな声で「そんなことしていません」と彼女は言ったが、クラスの子達が「いつもそう言って仲間と笑っています」「私もいじめているのを見ました」と口々に言ってくれた
「私はA子さんに手術のこともちゃんと話したのに、それでも言われ続けたり笑われたりして、とても哀しかったです」と付け加えて席に座った
その後私は校長先生と担任の先生に呼ばれて今までにあった事をすべて話すように言われた
最後に校長先生は、「とても辛かったわねと言い、A子さんの両親とあなたの両親にこの事を話します」と言った
私は「この事はもういいです。お母さんが悲しむので言わないでください」と言った
校長先生と担任の先生は顔を見合わせていたが、「手術で入院する前の日に眠れなくてお水を飲みに行ったら、お母さんが私のせいであの子に辛い思いをさせているって言って泣いていたのです。だからもう悲しませたくないから言わないでください」とお願いした
その後、先生たちはどのような解決をしたのか覚えてはいないのだが、少なくてもA子は私に何も言ってこなくなったし、いつの間にかクラスの中で孤立していたようにも記憶している
月日は流れ、途中途中で聴こえない事で誤解を受けたり不便な想いをしたり、諦めなくてはならない夢があったりもしたが、あの時に声を上げてくれた友人達は今でも大切な親友だ
すべての人に感謝