『ジャム』がいなくなってから初めて自宅の大掃除をした。封が開いていないドッグフードも棄てなければいけない。二日かけて炊事も出来るほどに片付いた。
深夜コンビニでサラダを選ぶ。ドレッシングは買わなかった。
キッチンでオリーブオイルと塩を振る。ビネガーはバルサミコ。かなり前に付き合っていた女が卒業旅行で買ってきてくれた年代物だ。小さな瓶に三分の一ほど残っていた。ほんの少しだけかける。甘く、そして深い。
とても美味しい。それを伝えたいと携帯電話に手を伸ばしかけた。もう午前三時を過ぎている。
昼前に目が覚めてコーヒーのお湯を沸かす。キッチンの残骸の中にバルサミコの小瓶。
電話はツーコールで繋がった。
「大丈夫かい?」
「うん、大丈夫。休日出勤で今会社なの。」
「あのさ、お前が買ってくれたあのバルサミコがすごく美味いんだ。あれ何年ものだっけ?」
「確か、18年物だったかしら」
「そっかぁ、じゃあ合わせて30年物ってことだね。すげー美味くなってるよ。」
「ふふ、そうだねぇ。」電話の向こうで彼女は静かに笑っていた。

PS
二年ぶりにブログを更新しました。
拙文を最後まで読んでいただきありがとうございました~!