その日は、朝から生理痛のような痛みがあった。

でも、陣痛ってこんな程度の痛みじゃない。
あの激痛に比べたら…
多分これは前駆陣痛ってやつだろう。


ただ私は、長女の出産の際、
予定日超過で、
子宮口を開き、促進剤を使って
陣痛を起こしたので、
自然に来る陣痛を知らなかった。


昼過ぎ。
少し痛みが強くなってきた。

でもまだまだ。
こんなの、痛みのうちに入らない。


長女と一緒に昼寝をする。
でも、あれ?
なんか痛みの時間に波が出てきた。
陣痛アプリを使って測ってみると、
10分?15分?20分以上空くこともあり…
うーん、よく分からない。


長女の時は24時間以上、陣痛に苦しんだから、
この子もまさかすんなり生まれることはないだろう。
でも、そのまさかが起こって、
病院ヘ辿り着く前に
生まれるなんてことになったら…

夕方になると、
病院への道のりが帰宅ラッシュに重なり
車で1時間以上かかってしまう。


この子の場合、
出産直後の処置が
生死を分けることになるため、
そんなこと絶対あってはならない。


病院ヘ、半信半疑のなか電話をかけてみると、
一応、受診するようにのこと。


それから、長女を母に頼み、
ラッシュになる前の時間に
夫と一緒に車で病院ヘ。

痛みは強くなっているものの
まだまだ我慢できる。

うーん、これは、病院ヘ着いても
「やっぱり前駆陣痛でした。また来てね。」
パターンかな。


病院ヘ着き、診察台へ。

「あれ。子宮口6㎝。明日には生まれるよ。」

えー!!
驚きのまま入院となった。

そして、2人目は早く出てくるだろうからと、
陣痛室ではなく、
そのまま分娩室へ行かされた。

まじで?!
これからやってくる激痛との戦いを、長時間、
この居心地の悪い分娩台(一応背もたれは倒れてベッド状にはなっている)で?!
大学病院って、こんな扱い?!


軽く目眩が…


それでもしょうがない。
もう逃げられない。
無事に出産するしかない、と腹をくくる。


長時間の戦の前に、腹ごしらえだ!
長女の時に、体力勝負だと痛感していたので、
夫に夕食のおにぎりを買ってもらい、
分娩台で食べる。


その途中…


そう、あの痛みが… 

来た来た。これだ。
この痛みだ。

お尻が裂けるような痛み。
横になって
夫にテニスボールを押し付けてもらう。


ああ、始まった。
この戦いがこれから何時間も続くんだ。
しかも何十倍の痛みとなって…

産まれてくる次女の心配をする余裕も持てず、
もう、恐怖しかない。

夫が途中、長女のスマホ画像を見せてくれた。
おどけたかわいい表情。

ちょっと和んだ。


そのうち、助産師さんが、
詰所で陣痛モニターを見て
バタバタとやってくる。


「痛いね〜もうすぐだね」

そのまま分娩台を起こされ、
ズボンを脱がされ、
処置が始まった。

あれ?
なんかもう生まれるような格好じゃん。

いやいや、私はここからが死ぬほど長いんだから!!
まだまだ生まれるわけない!!
間違ってるよ!

激痛に朦朧としながら
そんなことを思っていると
先生がやってきて、
9㎝という言葉が聞こえた。

え?
何?子宮口?
もう9㎝も開いてるの?
え?!


そのうちに、いきむよう言われる。


え?!もういきんでいいの?!


夫は、実は、出産に立ち会わない予定だった。
陣痛には付き添ってもらうけど
分娩室に入ったら、私ひとりで。

理由は、
血をみると、真っ青になって
本当に倒れるから…笑

そんな夫の手を
私は陣痛の間、握りつぶすほど抑え…

夫はもう逃げられなかったようだ。笑


そして、気の引くような痛みのなかで




「産まれたよ〜!!」




え?!
もう産まれたの?!

驚きすぎて、夫に思わずそう聞いた。



その後、次女の泣き声が。


よかった!泣いてる!!


その後、次女の処置が始まり、
そのままNICUへ連れて行かれるのだろうと思ったが、
新生児科の先生が、

抱っこしますか?

と聞いてくれた。

抱っこできるんですか?!
と驚き、次女を連れてきてもらう。


抱っこできるということは、
思ってたより
元気に産まれてきてくれたに違いない!!
よかった!!


横に来た小さな次女は、
少し青紫色をしていた。
すでにチアノーゼを起こしていたのだろう。


でも、産まれたばかりの赤ちゃんの色は
こんな感じのような気もする。
何より、そばでこんなに元気に泣いている!
ああ、よかった。
今までの心配は、取り越し苦労だっんだ。
手術は必要かもしれないが、
でも、この子はきっとすぐ良くなる!!
大丈夫、大丈夫。

妙な自信が湧いて来た。



ありがとう、はじめまして。



夫が写真を撮ってくれた。
今でも、この先も、ずっと大事な宝物。


その後、次女はNICUへ。
詳しい検査をして、
終わり次第、報告してくれることとなった。



病院に着いてから2時間。
強い陣痛が起こってから、
産まれるまで約30分。

産科の先生から、
あの時間に病院に来ておいて本当に良かったね。
と言われた。

超スピード安産。
しかも予定日ぴったりに。

今思えば、
次女は、
その後に待ち受ける試練に立ち向かえるよう
できるだけ余力を残しながら
外の世界に出てきたのではないかな。

上手に産まれて来たね。
偉いよ。
頑張ったね。


産まれて来てくれて、本当にありがとう。